憲法という希望 の商品レビュー
著者が書いたというのではなく、大阪弁護士会が主催した講演会での講演をもとにした本。後半は国谷裕子さんとの対談になっている。国谷さんの夫が大阪の弁護士さんだからこういう企画ができたんだろう、きっと。 ふだん新聞やメディアで見かける著者のコメントからすると私と同じ左寄りの人という印象...
著者が書いたというのではなく、大阪弁護士会が主催した講演会での講演をもとにした本。後半は国谷裕子さんとの対談になっている。国谷さんの夫が大阪の弁護士さんだからこういう企画ができたんだろう、きっと。 ふだん新聞やメディアで見かける著者のコメントからすると私と同じ左寄りの人という印象だったんだけど、初めて著書(この本)を読んでみるとそうでもない。ま、それも当然で、著者は憲法学者として原則的に憲法という枠組みに沿って物事をとらえ発言しているに過ぎない。そして、それがやや左寄りに聞こえるということ。そうなるってことはつまり、現在の日本国憲法では「自由」や「平等」といった左派的思想が味つけのベースになってるってことなんだろうな。 憲法や法律、条例といった類のものは、ガチガチに固めるのでなく運用でどうにかなる余地・あそびを残しておくものだと思う。そういうことがこの本からも読み取れる。書中で解説されている夫婦別姓を男女差別という観点から違憲と訴えたのが認められなかったことや、辺野古への米軍基地移設にあたって住民投票がなされるべきといった主張は、なるほどと納得がいくとともに、憲法に含まれる余地やあそびをいかに使いこなせるかが知恵の見せどころだということが示唆される。 法とか決まりごとというと、何となく縛るもののような印象で忌避したくなりもするが、憲法や法律を良識に沿って身近な道具として使いこなせるようでないと。忌避すべきものでなく、自分たちの味方にできるものというメッセージが書題の「憲法という希望」には込められている気がする(これは著者の講演の演題でもあって、演題自体は主催者がつけたようだけどね)。
Posted by
さらっと読める憲法の本。面白かった。 最後に推薦書をいくつか挙げてくださっているのでこれから少しずつ読んでみようと思う。 ・選択的夫婦別姓訴訟のアプローチについて ・辺野古基地問題からみえる現政権の憲法観
Posted by
「憲法の本」というと,硬いんじゃないかというイメージが先行するのだが,本書は,その先入観を気持ちよく砕いてくれて,とてもスイスイと読むことのができた。 社会に息苦しさが蔓延しているとすれば,それは国家が何らかの失敗をしているということであり,その解決の道筋は憲法に示されている...
「憲法の本」というと,硬いんじゃないかというイメージが先行するのだが,本書は,その先入観を気持ちよく砕いてくれて,とてもスイスイと読むことのができた。 社会に息苦しさが蔓延しているとすれば,それは国家が何らかの失敗をしているということであり,その解決の道筋は憲法に示されている可能性が高い。今こそ,憲法に託された先人たちの知恵に学ぶべきだろう。(はじめに) 法律が、過去のさまざまなトラブルの経験から成り立っているように,憲法も悲惨な人間の失敗からできている。だからこそ,もし,いま変な息苦しさが社会に蔓延していると感じるのなら,それは,どっかでまた以前と同じ失敗をしようとしているのかも知れないのだと,木村はいう。 本当にそうだと思う。 本文では,立憲主義の基本的な考え方を説明すると共に,夫婦別姓や辺野古基地問題などの具体例を挙げながら,法律とはどのように扱うべきなのか…ということを分かりやすく説明してくれている。読めば読むほど,法律や憲法が身近に感じてくるから不思議な体験ができる本だ。 巻末には,クローズアップ現代の国谷裕子氏との対談も収録されていて,さすがに国谷さん,木村さんの専門知識をわかりやすい形で引き出してくれている。これは,本人(木村氏)もそういっている。 著者は,あとがきで本書の題名を『憲法という希望』としたことについて,次のように述べている。 だれかを責め立てるようなものではなく,憲法の魅力を伝えられるようなもの,社会をより良くしていくための積極的な提案を示せるものにしようということになった。(P174) 安倍政権が憲法をないがしろにしてきたことへの警鐘・批判はあったが,「憲法ってなかなかいいじゃん」と思える内容だったし,もっと憲法について書かれた本を読んでみたいと思った。巻末には,読書指南もついていて至れり尽くせりだ。 そういう意味でも,本書は,これから憲法について考えてみたいと言う人にとっては,いい入門書になっていると思う。 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない。 憲法を守ると言うことは,そういうことなんだなあ。 そうそう,最高裁の「白黒の判断を留保するという姿勢」についての見方も,斬新だった。「最高裁が重要な憲法判断については、法的判断を下さないという態度をとるのは,もっと国民間で議論を深めていってねということではないか」ということらしい。確かに,もしも「白」と言われてしまったら,急に考えることをやめてしまいそうだ。「自衛隊は合憲!」と言われてしまったことを考えると,その後の展開はとても怖い。
Posted by
安全保障に関しては、ここに基地を造ると閣議決定してアメリカと合意すれば、地方自治体に関係なくそこに基地を造れる。 現政権はまじにそう考えてる。恐ろしい。
Posted by
ちょうど別方面からも「木村草太さん」を薦められ、初めて彼の本を読んだ。 読みやすく、わかりやすく、おもしろい。 最後に「本当のプロ(教授と言われる人達を指す)は、一般の人が理解できる言葉に直してこそプロだ」というようなことを書いてあって、その通りだと思った。 片方から批判するので...
ちょうど別方面からも「木村草太さん」を薦められ、初めて彼の本を読んだ。 読みやすく、わかりやすく、おもしろい。 最後に「本当のプロ(教授と言われる人達を指す)は、一般の人が理解できる言葉に直してこそプロだ」というようなことを書いてあって、その通りだと思った。 片方から批判するのではなく、憲法を使っていかに理論を組み立てられるか。 辺野古も、ぜひ木村理論で押してほしい。
Posted by
学生時代、憲法を勉強していて、憲法の体温を感じたことはなかった。 ところが、この本は全く違う。 政府任せにして批判ばかり繰り返す日本人になってはいけない。
Posted by
普段読まないジャンル。 監査でもよく言っている、フレームワークを使って考える、の憲法版(憲法がフレームワーク)。 ・国家権力の三大失敗「無謀な戦争」「人権侵害」「権力の独裁」 ・憲法はこれを防ぐためのもの (リスクに対するコントロールですね) ・訴訟戦略の巧拙 ・道徳よりも法...
普段読まないジャンル。 監査でもよく言っている、フレームワークを使って考える、の憲法版(憲法がフレームワーク)。 ・国家権力の三大失敗「無謀な戦争」「人権侵害」「権力の独裁」 ・憲法はこれを防ぐためのもの (リスクに対するコントロールですね) ・訴訟戦略の巧拙 ・道徳よりも法務教育! ・人権侵害は、少数の人にのみダメージがあり、その他の大多数にとっては、あまり影響がない。だからこそ、憲法で保障される。 →民主主義と多数決は同じでないという理解が大切。 一番意外だったのは、松田さん(松田公太)の参議院での質疑。議院内閣制にあって、弊害も目立つようなこの頃を鑑みると、こうした質疑を憲法を使い倒してやっていくっていう議員がいたことに、驚きました。 さて、憲法なんて、大学時代の、芦部憲法とやらの分厚い教科書を思い出すけど、その本にも触れていた。 「あまりにも緩くて、理論的に突き詰められているとは言えない」 「こんなに粗い議論では人権は守れない」 一生懸命読まなくて正解??
Posted by
p.23-p.26 憲法とは「過去に国家がしでかしてきた失敗のリスト」 「国家権力の三大失敗は、『無謀な戦争』『人権侵害』『権力の独裁』」 「こうした三大失敗を踏まえて、無謀な戦争をしないように軍事力をコントロールしよう、人権侵害を防ぐために大事な権利をあらかじめ示しておこう、独...
p.23-p.26 憲法とは「過去に国家がしでかしてきた失敗のリスト」 「国家権力の三大失敗は、『無謀な戦争』『人権侵害』『権力の独裁』」 「こうした三大失敗を踏まえて、無謀な戦争をしないように軍事力をコントロールしよう、人権侵害を防ぐために大事な権利をあらかじめ示しておこう、独裁にならないように権力を分立したら民主的にコントロールしよう、というルールを憲法に書き込んだのが、立憲主義の憲法」 「ですから、立憲的な意味の憲法では、軍事統制、人権保障、権力分立が三つの柱」 国家批判は抽象論ではなく、具体的に。 夫婦別姓の問題は「男女差別」ではなく「法律婚と事実婚の差別」として戦う。 辺野古基地移設問題は憲法41条と92条・95条のコンボで攻める。
Posted by
・憲法=国家の失敗リストという定義が斬新。 ・最高裁は「重要な憲法判断については、明白に違憲と言えない限り、法的判断を下せない」という態度をとるらしい。中立・公正な立場を貫く難しさが見て取れると同時に白黒つけないメリット(議論が深まる)にも言及されている。 ・憲法は権力者の監視ツ...
・憲法=国家の失敗リストという定義が斬新。 ・最高裁は「重要な憲法判断については、明白に違憲と言えない限り、法的判断を下せない」という態度をとるらしい。中立・公正な立場を貫く難しさが見て取れると同時に白黒つけないメリット(議論が深まる)にも言及されている。 ・憲法は権力者の監視ツールとして認識していたが、考え方の異なる人同士が尊重し合う、合意を得るためのツールと捉えることもできる。
Posted by
111頁『憲法について考えると、権利者への恐ろしさがわいてきます。例えば、辺野古基地問題を突き詰めていくと、「安全保障に関することは、すべて内閣が勝手に決めていいのだ」との思想に向き合わなければならなくなります。』といったように、日頃のニュースでもやもやっと感じることがあったとき...
111頁『憲法について考えると、権利者への恐ろしさがわいてきます。例えば、辺野古基地問題を突き詰めていくと、「安全保障に関することは、すべて内閣が勝手に決めていいのだ」との思想に向き合わなければならなくなります。』といったように、日頃のニュースでもやもやっと感じることがあったとき、憲法について理解があれば、自分の考え方を整理できると思いました。
Posted by
- 1
- 2