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銀の匙 の商品レビュー

3.8

10件のお客様レビュー

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2024/02/13

なんて味わい深い作品なんだろう。 記憶の片隅にあるような淡い記憶。甘塩っぱいような、やわからくて懐かしい匂いのするそれらは、小箱の中にしまってあった銀の匙のように、かけがえのない思い出として心のなかに残っているもの。 時代は明治。当時を知らないのに不思議と懐かしさを覚える。 とて...

なんて味わい深い作品なんだろう。 記憶の片隅にあるような淡い記憶。甘塩っぱいような、やわからくて懐かしい匂いのするそれらは、小箱の中にしまってあった銀の匙のように、かけがえのない思い出として心のなかに残っているもの。 時代は明治。当時を知らないのに不思議と懐かしさを覚える。 とても内気な少年の心の内が、美しい情景とともに繊細に描かれており、まるで詩のような美しさがある。 五感を研ぎ澄ませたら、こんな風に世界の美しさに気づけるのかな。 少年は、伯母の愛情に包み込まれた幼少期を過ごし、賢い青年へと成長した。軟弱だけど愛おしい少年。その面影がなくなってしまったようで寂しく思ったが、それは違ったようだ。だって、青年は小さな銀の匙を見ただけで、こんなにも色鮮やかに記憶が蘇るのだもの。それは少年時代の心が残っているということ。 あとがきにある、高校の国語の授業で3年間を通してこの本を学んでいくというのが、どんな授業なのかとても気になった。

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2023/04/20

1913 年 大正2年 茶箪笥の壊れかけの引き出しに見つけた銀の匙。母親に匙を貰う許し乞い、その銀の匙の思い出が溢れてくる。 幼児期、身体の弱かった少年は、縁あって独り身の叔母に包まれるように育った。その匙は、叔母が少年に薬を飲ませる物だった。叔母との暖かい思い出が幼児期から最期...

1913 年 大正2年 茶箪笥の壊れかけの引き出しに見つけた銀の匙。母親に匙を貰う許し乞い、その銀の匙の思い出が溢れてくる。 幼児期、身体の弱かった少年は、縁あって独り身の叔母に包まれるように育った。その匙は、叔母が少年に薬を飲ませる物だった。叔母との暖かい思い出が幼児期から最期を迎える青年期まで、穏やかに語られている。 叔母は、生活の世話ばかりでなく、遊びにも友達作りにも、彼女の存在全てで、無償で支えてくれる。自伝的小説とのことです。作者の子供の時の目線で時間が流れる様に書かれていきます。何か事件が起こるわけでもないのですが、情景を描く豊かな色や音の表現に引き込まれます。 灘中学の「銀の匙授業」は、三年間国語の授業でこの一作を読み上げるというものだったそうです。 その授業を受けた生徒の中には、先日神奈川県知事に再当選した不倫騒動の黒岩さんもいらしたそうです。だめじゃん。

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2023/01/30

表現力の豊かさが際立っていると感じた。 正直、子供がこんなに感受性豊かにつぶさに周囲の状況を的確に捉えていたら恐ろしいな、と思えるほどだった。 ストーリー展開は大きな波乱も何もないが、当時を形取る人間、文化が色濃く描かれていた。

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2022/09/27

大正時代初版の当時の少年の日々の出来事と共に歩んだ成長期。 読んでいると、時々迷子になりそうになるほど、いい回しが難しくなったがなんとか読了。 実在するものが今とはかなり違うとは思うが、子どもの"こころ"というのは、そう変わらないとよく思う。 感じるものが、素...

大正時代初版の当時の少年の日々の出来事と共に歩んだ成長期。 読んでいると、時々迷子になりそうになるほど、いい回しが難しくなったがなんとか読了。 実在するものが今とはかなり違うとは思うが、子どもの"こころ"というのは、そう変わらないとよく思う。 感じるものが、素直で素朴なのである。 そんなことを再認識させてもらった一冊。 現代小説もいいけど、読みにくさも面白くなるこう言った昔から残っている本にも時々魅かれる。

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2022/01/31

少年時代は自分にとっても特別な時代です。この時代を描いた小説は、いろいろなことを思い出せてくれて、良くも悪くも感傷に浸れるので大好きです。懐かしくなった。

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2021/09/18

ウン十年も前、岩波文庫を最初のほうだけパラパラやってそのまま放っておいた。このたび新潮文庫で読了。こんな素晴らしい作品を今まで読んでなかったのかと。遅くなったけど、今出会えてよかったのかな。

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2020/04/04

銀の匙は薬を飲むための物で、忘れ難いか弱き幼少期の思い出の象徴か。青年期まで、些細な事に涙する著者はいかにセンシティブな少年だったかと想像するのと逆に明るい子だったらしい。主人公に暗さより同化する感覚を受けるのは表現力の豊かさか。2020.4.4

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2019/06/14

やっと読みおわる。流れるような文体、まるで講釈や漢文を読み下しているよう。一文が長く読みごたえがあるが、途中止まるところがないので息がつまりそうになる。 描写がすごい、小説というのは、展開もあるがまずはその 書きっぷり で読ませるものだというのを感じた。感じたものをそのまま書く...

やっと読みおわる。流れるような文体、まるで講釈や漢文を読み下しているよう。一文が長く読みごたえがあるが、途中止まるところがないので息がつまりそうになる。 描写がすごい、小説というのは、展開もあるがまずはその 書きっぷり で読ませるものだというのを感じた。感じたものをそのまま書くだけで、優れた書き手であれば読ませてしまう。 展開やプロットや起伏も、読ませるためにある。純文学は読ませるために作家の目で感じたことをそのまま書く。まずは感じなければいけない。 詩や短歌のように、さりげないことをさもおいしくみえるように飾りたてて書く。古来からの歌のリズムや、草木や四季(としか書けない、自分の風流のなさ)が味方する。 一行で終わる話である。 読みおわって花鳥風月がそこにある。いいたいことはいっぱいある。伯母さんのシーンは号泣したのだが、あまりにも残酷なような気がした。思わず叫んだ、なんとかもっとしてやれなかったんだろうか。今の感覚とは違うのだろうか。それともあえて、ああやってさらっと書いてるのだろうか。にしても、蚕にあれだけ執着し、月を見ては泣き、山にのぼって半日ぼんやりできる主人公が、あれだけの情しか見せないのはわからない。問いつめたい。国中にアンケートをとりたい。まずはうちのおばあちゃんに聞いてみる。 なんかあんまりにも、主人公が蝶よ花よというかなよなよしすぎていてその心情に行動がともなっていない。でも書き手がたいへんうまく、主人公のなかに入り込ませるのがうまい、自分のことと思えぬ客観的な、映画のような描写と考察で、それもまた面白い。これだけ頭を使える人が書いたなら、たんなる自伝ではなく、やっぱりこういう男がいたという小説なんだろうと思う。気持ちが前のめりになって自分自身に酔って入り込んだ作品ではなく、とても冷静な作家の目を持って計算されている、すぐれた小説なんだろうと思う。

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2019/02/15

ようやく読めた。 ずっと読みたいと思っていたけれど、今まで縁がなかったけれど。 言い尽くされた評ではあるけれど、やはりその繊細な表現に唸らされる。 感情や気分が丁寧にすくい取られ、決して私の回想ではないのに自分の感覚のように甦ってくるものがある。 私も子どものころ体が弱かった...

ようやく読めた。 ずっと読みたいと思っていたけれど、今まで縁がなかったけれど。 言い尽くされた評ではあるけれど、やはりその繊細な表現に唸らされる。 感情や気分が丁寧にすくい取られ、決して私の回想ではないのに自分の感覚のように甦ってくるものがある。 私も子どものころ体が弱かったので、横になった布団から見た壁の模様や天井の影を今でも覚えている。 そしておばあちゃん子だった私は、確かに祖母にくっついてあちこちでかけた記憶もある。 絶対的に違う時代を生きているはずなのに、この既視感。 だからこそ、思い出すままに徒然書いたように見えるこの文章の巧みに唸るのだ。 ただ書き散らした文章だったらこんなに琴線は震えない。 体が弱くて癇の強い少年を無償の愛で包み育てくれた伯母さんは、「次郎物語」のお浜さんを思い出させるなあとか、主人公が心に浮かぶもの目に着いたものを次々に書き連ねて行く様は大好きなニコルソン・ベイカーみたいだなあとか、この繊細な作品を内田善美の絵で見たいなあとか、自分の好きな世界が数珠つなぎになって脳内をよぎる。 つまり、好きなんですな、こういう作品を。 読めてよかった。

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2017/08/23

何とは無しにのほほんと読んでしまった。ただ、子供時代のひ弱なたこぼうずっぷりをこんな風に客観的にさらりと書けてしまうのがすごいし、前編の後半の方では「周りがばかに見える」中二病的なものの片鱗まで見せていて、いつの時代も変わらないものがあるんだな…と生暖かい気持ちになった。小さい頃...

何とは無しにのほほんと読んでしまった。ただ、子供時代のひ弱なたこぼうずっぷりをこんな風に客観的にさらりと書けてしまうのがすごいし、前編の後半の方では「周りがばかに見える」中二病的なものの片鱗まで見せていて、いつの時代も変わらないものがあるんだな…と生暖かい気持ちになった。小さい頃思うように実の母に甘えられなかったのが文の表面には出てこないが、女性への執着といった形で浮き彫りにされている。銀の匙は1950年から灘で教材に使われてたのを初めて知ってビックリした。

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