江戸のパスポート の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
江戸時代の日本の往来手形を携行する意味、不携行のデメリットについて書かれた本。 18世紀行以降 旅行者数が増えたが、旅の不安を解消するために往来手形は重要なものであった。 往来手形があれば、途中で病気になっても死亡しても適切に対処することができた。 一方、飢饉など食事にも困窮すると 義絶となり、帳外れとされてしまった。 生類哀れみの令 などに関する知識も深まった。 儒教や仏教がやはり日本人の道徳観の基礎にあることがよくわかった。
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江戸時代の往来手形は現代のパスポートである。 身分を証明し、不慮の出来事には保護を要請する。 江戸時代にこのようなシステムが完成していたのだ。江戸の日本は一つの国であって一つでなく、「お国」がたくさん集まってできていた。だからお国同士の移動にパスポートが必要だったわけだ。 ...
江戸時代の往来手形は現代のパスポートである。 身分を証明し、不慮の出来事には保護を要請する。 江戸時代にこのようなシステムが完成していたのだ。江戸の日本は一つの国であって一つでなく、「お国」がたくさん集まってできていた。だからお国同士の移動にパスポートが必要だったわけだ。 しかし、体調不良などの旅人を郷里に送り届けるシステムは財政的に破綻してしまう。 それから、パスポートがもらえない人がどうなるか。行倒死が頻発するのである。 江戸っていうとついつい良いイメージでとらえてしまうが、闇もやっぱりある。 そうして日本は、「お国」の領民ではなく、一つの国の「臣民」になってしまう。だからパスポートも廃止される。 移動の自由や弱者救済といった理念。今話題のアメリカ合衆国が認めようとしない理念、でもある。江戸だからといってきれいな話ばかりではないが、この思想がずっと以前に我が国にあったということは、今だからこそきちんと知っておけてよかった。
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