ゴリオ爺さん の商品レビュー
この作品、主な登場人物に幸福な者は一人もいない。そして不幸の原因は全員が全員、カネのためである。 19世紀初頭のフランス、大革命、恐怖政治、ナポレオンの没落を経て王政が復古し、貴族とブルジョワが支配するパリで貧乏青年ラスティニャックが出世するためには社交界に入り込むしかなかった。...
この作品、主な登場人物に幸福な者は一人もいない。そして不幸の原因は全員が全員、カネのためである。 19世紀初頭のフランス、大革命、恐怖政治、ナポレオンの没落を経て王政が復古し、貴族とブルジョワが支配するパリで貧乏青年ラスティニャックが出世するためには社交界に入り込むしかなかった。 社交界とは、能力ではなくカネとコネがなければ参加できない世界。社交界に入るカネもコネもないラスティニャックの貧しい隣人たちは、その時点ですでに不幸だが、父の献身によって社交界にデビューしたゴリオ爺さんの娘夫婦たちもまた、虚飾と裏切りと噂話に翻弄され、見栄のために多額の借金をしてでもカネを使い続けなければならぬ点において、また不幸である。 このような社会で人々の良心は磨耗してゆく。唯一、ラスティニャックだけがゴリオとの親交の中で良心を保っていられるが、それも度々誘惑にさらされてゆく。そして最後は…ネタバレは控えよう。 現代の価値観との違和感を覚える箇所もないとは言えないが、読みやすい訳でペース良く読み進むことができる。傑作である。
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「今度はおれが相手だ!」 物語の最後、主人公のラスティニャックがパリの街へ向かって放ったセリフです ラスティニャックとパリの間に何があったのか?めっちゃ気になるよね ならない?いやなってよ!(懇願) はい、というわけでユッキーのリクエストに応えて19世紀のフランスを代表する作...
「今度はおれが相手だ!」 物語の最後、主人公のラスティニャックがパリの街へ向かって放ったセリフです ラスティニャックとパリの間に何があったのか?めっちゃ気になるよね ならない?いやなってよ!(懇願) はい、というわけでユッキーのリクエストに応えて19世紀のフランスを代表する作家のひとりバルザックの『ゴリオ爺さん』を読みました いやーすげーわバルザック こんな悲劇いや喜劇を読まされるかね 『ゴリオ爺さん』はバルザックが書いた〈人間喜劇〉という小説群の1作なんよね 〈人間喜劇〉というのはひとつの世界観の中でたくさんの小説が書かれていて、それぞれが当時のフランスを分析して描いているんだけど、大きな特徴として「人物再登場法」と呼ばれる手法を使って書かれているんです これはあっちで主人公だった◯◯がこっちで脇役として登場するってな具合に登場人物が作品を横断して登場することで作品同士を繋ぎ合わせるって手法です 分かりやすく言うと森山明夫さんですね(珍しくほんとに分かりやすい) 森山明夫さんの超先駆けつか元祖ですな 最多で三十一作品登場するキャラクターがいるのでスケールがでかい はい『ゴリオ爺さん』の話に戻りますよね う〜ん、難しいな〜 あらすじとか書く? いやめんどくさいなw まぁ、とにかく19世紀パリの社交界を舞台に悲喜こもごもの物語が展開するわけです 社交界でのし上がりたいけど、田舎で家族に愛されながら育った学生ラスティニャックは純真な心も捨てきれない ひと癖もふた癖もあるつわ者たちに翻弄されまくる中でゴリオ爺さんと二人の娘たちの間の歪んだ愛憎劇にも巻き込まれちゃう いやこれがほんとひどいのよ、どいひーなのよ もう腹立ってしゃーない なぜならさ、わいの心のなかにもきっとそんなひどい感情があることをバルザックに見透かされてるような気がするからなんよね 人のもつ利己的な内面を「隠しても無駄、お前も持ってるだろ?」ってバルザックに暴かれてるような気がするんよね これからいつもいつも影の中でバルザックに見られていて自分勝手な振る舞いをする度にバルザックにニヤリと笑われているような そんな気にさせられる物語でした 今度はスタンダールが相手だ!
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なんという悲劇、いや喜劇か。こんな日常にはとても我慢できないだろうな。金、金、金の生む人間喜劇というか、パリという国が生み出したものなのか…いや、こんなことは世界のどこにだってあるよな。日本で言えば、始まったばかりの大河の時代なんかその最たるものなんだろうな。 まぁでも、ゴリオ爺...
なんという悲劇、いや喜劇か。こんな日常にはとても我慢できないだろうな。金、金、金の生む人間喜劇というか、パリという国が生み出したものなのか…いや、こんなことは世界のどこにだってあるよな。日本で言えば、始まったばかりの大河の時代なんかその最たるものなんだろうな。 まぁでも、ゴリオ爺さんの奥さんはいつどこでいなくなったんだろう…
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「ああ!なんという!レストーめ…わたしがいるんだ、そうはさせるか!やつの行く手に立ちはだかってやるからな。…そうだ、やつには後継者が必要だ!よかろう、よかろう。わたしがやつの息子をさらってやろう。しまった、それはわたしの孫ではないか。」ココ、読み返すたびにいつも吹いてしまいます。
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バルザックを一度読んでみたくて選んだ。 長い…!社交界デビューや逮捕劇のくだりは面白く読んだ。あと当時(ナポレオン失脚後の王政復古時代)の安い下宿の様子も興味深かった。後半、金の亡者と成り果てた娘たちがゴリオ爺さんにたかる様子が辛くて、最後は流し読み…。 もう少し短い話でまたバルザックに挑戦してみたい。
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面白かったが、キャラクターの描かれ方が単純で、現実的でないような気がしたため、感情を没入させることはできなかった。でも「野心」とか「虚栄心」とか小説によく出てくるテーマについて色々と考察の深まるお話で、読み切ってよかったと思う。
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19世紀パリの貴族社会と経済的下層社会の様子がつぶさに窺えた。主人公の学生ラスティニャックは、社交界デビューを果たしつつも同じアパートに住むゴリオ爺さんの二人の娘への献身的な愛に心を動かされていく。ゴリオ爺さんの行動は自身も行き過ぎが娘たちを駄目にしたと反省もしているが、他の生...
19世紀パリの貴族社会と経済的下層社会の様子がつぶさに窺えた。主人公の学生ラスティニャックは、社交界デビューを果たしつつも同じアパートに住むゴリオ爺さんの二人の娘への献身的な愛に心を動かされていく。ゴリオ爺さんの行動は自身も行き過ぎが娘たちを駄目にしたと反省もしているが、他の生き方もできなかったように思える。親子、家族の問題はどこの国でも変わらないであろう。肉親がいなくなる前に後悔のない接し方が大切だ。2022.11.29
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19世紀パリ社交界を舞台に描かれるフランス文学の傑作。モームの世界十大小説の一つ。光文社古典新訳文庫版。 人間描写力すごすぎワラタ。いや人間観察力ともいうべきか、細密な心理や行動の描写が逐一的を得ていて圧倒される。段落などの区切りがなく長い文章が延々と続くため、序盤の間、舞台設...
19世紀パリ社交界を舞台に描かれるフランス文学の傑作。モームの世界十大小説の一つ。光文社古典新訳文庫版。 人間描写力すごすぎワラタ。いや人間観察力ともいうべきか、細密な心理や行動の描写が逐一的を得ていて圧倒される。段落などの区切りがなく長い文章が延々と続くため、序盤の間、舞台設定をつかむまではやや読みにくい。しかし謎解きのようになっているゴリオ爺さんの実像が見えてくる第一章の後半ごろには、込み入った人間関係の興味深さに引き込まれていた。その後物語は加速に加速を重ね、第四章あたりには、もう読みきらなければ本を閉じられないというほど夢中にさせてくれた。 しかし壮絶で切ない話だ。社交界という華やかかつ恐ろしい世界で、人間の醜さと愚かさを骨の髄まで見せつけられる。純真で好感の持てる青年・ラスティニャックの人格形成の顛末が巧みでその後が気になるし、もう一人の主人公級人物ヴォートランは前日譚も後日譚も読みたくなる。そのあたりがうまいつくりで、本作はバルザックの書いた《人間喜劇》という膨大な物語群の入口だという。彼らは主人公だったり脇役だったりでいくつもの他作品に登場するらしい。 社交界の泥沼で人間性を貶めてしまったせいなのか、行き過ぎた父性愛が罪作りだったのか、二人の女性の姿が読者の怒りを誘う。だがどちらが悪いと言い切れるほど真相は単純ではなかった。最後の彼の独白の叫びが愛憎の複雑さを呈していてすさまじい。これが古典として残る作品のすごさかと恐れ入った。 個人的には、おとなしいあの女性のその後が一番気になるのだが……。
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父性愛の極地 レアリスム小説のはしり。ここから20世紀小説は「本当らしさ」からの脱却を求め始める。 映画もあるらしいから観てみたい。
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