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すべての見えない光 の商品レビュー

4.5

84件のお客様レビュー

  1. 5つ

    42

  2. 4つ

    28

  3. 3つ

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2024/04/05

すばらしい小説だと、多くの書評から知ってはいたが、積読していた本書を読むきっかけになったのは、Netflixでのドラマ化であった。 一刻も早くドラマを見たい! 小説を読んでから映像を見るか、 映像を見てから小説を読むか? 私は前者が好きなのです! なので、とうとう読みました。...

すばらしい小説だと、多くの書評から知ってはいたが、積読していた本書を読むきっかけになったのは、Netflixでのドラマ化であった。 一刻も早くドラマを見たい! 小説を読んでから映像を見るか、 映像を見てから小説を読むか? 私は前者が好きなのです! なので、とうとう読みました。 で、予想を裏切らない傑作でした。アンソニー・ドーアはこんな懐の深い小説を書く人なのですね。「シェル・コレクター」も読まなければ! 1994年のある日と、そこに至るまでの数年前が交互に描かれる構成と、マリー・ロールとヴァルナーの視点が交互に描かれる構成が巧みで、まるでパズルが解かれていくような面白さ。 そして、2人の視点に、もう1人の視点が加わり、錯綜していく。その構成が延々と続くかにみえるのだが、ヴェルナーが不毛な営みだと絶望していたささやかな生の営みの美しさに気づいた時、ヴェルナーが関わった全ての人間の視点が一つになる瞬間が来る。 この瞬間に痺れた。 さて、Netflixを今から見ます!

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2024/03/18

WW2時の独・仏を舞台に、純粋な少年少女の儚い恋の話と、呪われた宝石が呼び寄せる因縁の話が絡み合う。情景は細やかで美しく、出てくる人々は善良で、戦争は平等に皆に傷跡を残し、物語は巧みに進み、読みやすかった。 すべての見えない光というタイトルも、素晴らしい。読後にタイトルを見直すと...

WW2時の独・仏を舞台に、純粋な少年少女の儚い恋の話と、呪われた宝石が呼び寄せる因縁の話が絡み合う。情景は細やかで美しく、出てくる人々は善良で、戦争は平等に皆に傷跡を残し、物語は巧みに進み、読みやすかった。 すべての見えない光というタイトルも、素晴らしい。読後にタイトルを見直すと、さまざまなシーンが思い出される。 反面、人間の愚かしさや世の理不尽さはどこかヴェールの向こうのままで、戦争小説というよりはお伽噺のように感じた。 作者が男性であることもあり、戦争は女の顔をしていない、とも思った。

Posted byブクログ

2024/02/15

「エティエンヌ、知っていますかね」マネック夫人は台所の反対側から言う。 「沸いているお湯にカエルを入れたらどうなるか」 「答えを教えてもらえるわけだな」 「カエルは飛びでてくるんですよ。だけど、冷たい水の鍋にカエルを入れて、ゆっくりと沸かしていったらどうなるか知っていますか?その...

「エティエンヌ、知っていますかね」マネック夫人は台所の反対側から言う。 「沸いているお湯にカエルを入れたらどうなるか」 「答えを教えてもらえるわけだな」 「カエルは飛びでてくるんですよ。だけど、冷たい水の鍋にカエルを入れて、ゆっくりと沸かしていったらどうなるか知っていますか?そのときどうなるか?」 マリー=ロールは待つ。ジャガイモから湯気が出る。 マネック夫人は言う。「カエルは煮えるんですよ」

Posted byブクログ

2024/01/30

戦争はなんて愚かで残酷なものなのでしょう。 素晴らしい才能や個性や優しさが踏み付けられる。遠く離れ過ぎて、イメージができない部分はあったけれど、この本を読むことができてよかったと思います。

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2024/01/24

ドイツ人の少年兵ヴェルナーと、目の見えないフランス人少女・マリー=ロール。第二次世界大戦の只中、日常が激流に流されていく荒れ狂った日々の果てに、ふたりはたった一瞬だけ、かけがえのない邂逅を果たす。 そのほんのわずかな出逢いと別れまでは、戦争がもたらした無慈悲な日々が淡々と連綿と...

ドイツ人の少年兵ヴェルナーと、目の見えないフランス人少女・マリー=ロール。第二次世界大戦の只中、日常が激流に流されていく荒れ狂った日々の果てに、ふたりはたった一瞬だけ、かけがえのない邂逅を果たす。 そのほんのわずかな出逢いと別れまでは、戦争がもたらした無慈悲な日々が淡々と連綿とつづられていく。少年兵の訓練学校では苛烈な苛めが、ドイツの占領下のパリの街では迫りくる戦火と隣人の密告におびえる日々が。戦況の変化によりそれぞれの環境もみるみる変化していき、戦争がもたらす悲惨を兵隊や市政の人々の細やかな様子により抉り出していく。 その辛さとともに、温かな人々のやり取りも描かれる。戦争を起こして悲痛を呼び起こすのが人ならば、その状況に苦しむ人を救うのもまた人でしかない。少女の眼の代わりとなり尽くしつづけた父親、彼女を匿う気丈な夫人、ひきこもってしまったやさしい叔父。少年兵には、心のよすがとなりつづけた妹、共に戦の道程を歩むことになる巨体の戦友、訓練校で体と心を壊された鳥を愛する少年。彼らのたどる運命には悲痛も伴うけれども、存在は確かに温かく、言葉は台詞となって読み手の心に残り、物語の重さを和らげてくれた。 物語の構成そのものは、まるで父親の作る家の模型のように緻密で計算されつくしていて、ミステリ的な要素を備えている。謎めいた伝説を持つ宝石の存在、時代を前後させて綴られることでなかなかわからない「現在の彼ら」の置かれている状況に、物語の先を、真実を早く知りたいという思いを嫌にでも加速させてくれる。 詩的な比喩がちりばめられた文章は、センテンスそのものが短いので意外と読みやすいし、書き留めたいほどの美しい表現も多い。とはいってもこの長大なボリュームは気軽に読み切れるとはいえず、なにより戦争の話だから親しみやすいとも言えない。 それでもなお、戦争がやまない現代において、戦争の愚かしさと悲惨さを静かに確実に語ったこの物語は、広く読まれて欲しいと思う。誰しもこの話を読めば、「この少年と少女は時代を違えて生きていれば、戦争が無い世の中に出会えていたら」と願わずにいられないからだ。その願いこそが、戦争を押しとどめる、ほんの小さな、けれど大切なひとかけらになると、思いたいからだ。

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2024/01/07

濃厚な読書体験。テーマは?と読み進めていくと最後に。確かに第二次世界大戦ものはそんなふうになっていくしかないんだろうな。

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2023/11/05

2023/11/11読了。ドイツエッセン地方の外れにある炭鉱の町ツォルフェアアインで両親を無くして 孤児院で幼い日を過ごしたヴェルナーと妹のユッタ。少年はナチスドイツの技術者となりロシア、ウクライナ、ウィーン、そして仏サン・マロに転戦する。 一方パリの博物館の鍵職人として勤める父...

2023/11/11読了。ドイツエッセン地方の外れにある炭鉱の町ツォルフェアアインで両親を無くして 孤児院で幼い日を過ごしたヴェルナーと妹のユッタ。少年はナチスドイツの技術者となりロシア、ウクライナ、ウィーン、そして仏サン・マロに転戦する。 一方パリの博物館の鍵職人として勤める父のもとで育った視力を失い目の見えない少女マリー・ロール・ルブラン。戦時下のフランス サン・マロでの二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド『炎の海』。時代に翻弄される人々の苦闘を彼らを包む自然の荘厳さや身近な人々の優しさとともに温かな筆致で繊細に描き出す。1944年8月のナチからの解放前夜はまさにサスペンス。ピュリアツァー賞受賞の感動巨篇。久々の⭐️五つ。

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2023/10/30

時系列が行ったり来たりするため、初読で分からない部分も多く、2回読みました。 ラジオが、ヴェルナーとマリー=ロールを繋ぐ物語。目の見えないマリー=ロール、ラジオの電波、戦争という見えない時代など、ラジオがこの物語の中においていくつもの意味を込められたものであることがうかがえる。戦...

時系列が行ったり来たりするため、初読で分からない部分も多く、2回読みました。 ラジオが、ヴェルナーとマリー=ロールを繋ぐ物語。目の見えないマリー=ロール、ラジオの電波、戦争という見えない時代など、ラジオがこの物語の中においていくつもの意味を込められたものであることがうかがえる。戦時の小説は、私たちを暗い気持ちにさせるものではなく、人の心や何を本当に大切にしたいかという自分の価値観を考えさせられるものだと思う。 読後感は穏やかで温かみがあり、また読みたいと思わせてくれる。かなりの長編です。

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2023/12/28

静かな余韻を残す。 見えない「光」を巡る2人の物語。 通信技術を評価されてドイツ兵になる少年ヴェルナー、視力を失っても好奇心旺盛で勇敢なマドモアゼル マリー=ロール。ドイツの攻撃で落ちる間際のフランスの地で、その2人がほんの数時間出会う奇跡。 ヴェルナーやマリー=ロールを支える人...

静かな余韻を残す。 見えない「光」を巡る2人の物語。 通信技術を評価されてドイツ兵になる少年ヴェルナー、視力を失っても好奇心旺盛で勇敢なマドモアゼル マリー=ロール。ドイツの攻撃で落ちる間際のフランスの地で、その2人がほんの数時間出会う奇跡。 ヴェルナーやマリー=ロールを支える人々もいい。マネックス夫人、マリー=ロールのお父さん、ティエンヌ、エレナ先生。。。 再読したい良書。

Posted byブクログ

2023/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「ラジオから聞こえる懐かしい声が、若いドイツ兵と盲目の少女の心をつなぐ。ピュリツァー賞受賞作。孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。」

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