戦場の軍法会議 の商品レビュー
法の正義、司法権の独立を守ろうとした法務官が、結局は統帥権に飲み込まれてゆき、それは現代まで、終わらざる軍法会議により処刑された兵士の遺族の苦しみとして、影を落としている。 旧軍の法務官制度の変遷や軍事司法の概要もわかる。 運用上というか、統帥の要求とのバランスに苦悩する法務とい...
法の正義、司法権の独立を守ろうとした法務官が、結局は統帥権に飲み込まれてゆき、それは現代まで、終わらざる軍法会議により処刑された兵士の遺族の苦しみとして、影を落としている。 旧軍の法務官制度の変遷や軍事司法の概要もわかる。 運用上というか、統帥の要求とのバランスに苦悩する法務というのは今も昔もある種変わらない面があるのだなぁ。
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戦場という非日常の中で行われた軍法会議のリアルな描写が心苦しい。法秩序と統帥の間で苦悩する法務官。苦闘の中、軍の論理が優先されのちに軍隊秩序がなくなる中で不法に処刑された兵士たちの悲劇もさることながら、その軍律違反記録により、後ろ指を指され続けた遺族たちの戦後。冤罪の可能性が高く...
戦場という非日常の中で行われた軍法会議のリアルな描写が心苦しい。法秩序と統帥の間で苦悩する法務官。苦闘の中、軍の論理が優先されのちに軍隊秩序がなくなる中で不法に処刑された兵士たちの悲劇もさることながら、その軍律違反記録により、後ろ指を指され続けた遺族たちの戦後。冤罪の可能性が高くとも、証明する書類の消失や証言者たちがほとんど残っていないことによる無常感。
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軍隊の秩序を守るべき、法律の専門家で運営していた軍法会議制度が崩壊していったノンフィクション。 読者を取材者の一員になったと錯覚させるぐらい取材過程の著述が、傑作。 無罪の罪で裁かれた人に、非がないのは当然である。無罪を有罪として裁いた側の言い分には、組織の板挟みになった状況を見て、過去の不幸な誤審だったと素直に思えない。 高齢化、触れられたくない遺族など、真実が明らかになりづらい取材過程に負の遺産が、ここまで引きずるなかと思わせ、複雑な感情を抱く。 唯一、戦後間もない逆境の中、無罪の戦争遺族を保護しようとした厚生労働省の立派な役人がいた事には、少しだけ心が洗われる。 自分だったらできたのか?と自省してしまう。皆さんは、困窮した戦地(職場)で、正義を保持できますか?と世に問いたくなる。 結果だけでなく、取材過程までを描いており、長ったらしい文章と思う人もいると思いますが、私には、モレなく伝えようとするNHKらしくて、好感が持てた。
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