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孫文 の商品レビュー

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2020/02/22

辛亥革命で大きな役割を果たし、現在も、中華民国(台湾)では「国父」として、中華人民共和国では「革命の先行者」として尊敬されている孫文の評伝。「民主」と「独裁」という相矛盾するかにみえる2つの道を追究した「ヤヌスのごとき革命家」としての孫文の生涯を描いている。 孫文については、「辛...

辛亥革命で大きな役割を果たし、現在も、中華民国(台湾)では「国父」として、中華人民共和国では「革命の先行者」として尊敬されている孫文の評伝。「民主」と「独裁」という相矛盾するかにみえる2つの道を追究した「ヤヌスのごとき革命家」としての孫文の生涯を描いている。 孫文については、「辛亥革命」の立役者だが、いつの間にかどこかに行ってしまったというくらいのイメージしか持っていなかったが、壮大な理想主義者でありながら、目的のためなら手段を選ばないマキャベリストの面があったり、何度も蜂起に失敗して長い漂白の時代を過ごしていたりと、本書によりその人物像がくっきりと見えてきた。正直、だいぶイメージが変わったと言ってよい。これまで「人々に慕われる仁徳者」のようなイメージを勝手に抱いていたが、かなり人間臭い人物だったんだな、という印象を持った。日本との関係が思っていたよりも深いことも、知ることができた。 また、下(地方・社会・部分)へ向かう「放」(分散・自由)と、上(中央・国家・全体)へ向かう「収」(集中・統制)という2つの力のせめぎ合いとして孫文を巡る中国近代史を描いているのが、興味深く、また、納得感があった。

Posted byブクログ

2017/05/04

孫文は辛亥革命を成就させた英雄だというようなイメージを漠然と持っていたけれど、この本では、コウモリのような外交姿勢や臨機応変な妥協、二転三転する理念にもかかわらず、権力掌握がなかなか上手くいかないトリックスターとして描かれていた。確かに彼は中華の理念を掲げてはいたが、その内実には...

孫文は辛亥革命を成就させた英雄だというようなイメージを漠然と持っていたけれど、この本では、コウモリのような外交姿勢や臨機応変な妥協、二転三転する理念にもかかわらず、権力掌握がなかなか上手くいかないトリックスターとして描かれていた。確かに彼は中華の理念を掲げてはいたが、その内実には一貫しているところだけでなく移り変わるものもあった。辛亥革命においては華々しく臨時大総統に就任したが、袁世凱に譲らざるをえなかったし、なかなか頂点には立てなかった。頂点に立てないだけでなく、広州という地盤すらしばしば危うかった。 また、「ヤヌス」という面も強調されていた。一方で民主主義を掲げつつ、その実現の手段として党による独裁を主張する。その二面性ゆえにこそ、共産党・国民党の両方から「国父」という評価を受けるのだろう。 彼のなかでの中国解放の理念が、ハワイ王国の政治のイメージから影響を受けているというのは面白かった。 あと、中央政府の力が弱まって地方自治の機運が高まったり、サロン的な中間団体がどんどんできたり、出世のルートが多元化したり、世界中の華僑のネットワークが力を持ったり、いろいろな過程が同時進行している清末のワクワク感。

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