1,800円以上の注文で送料無料

安保論争 の商品レビュー

4.2

12件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    2

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2016/08/06

「安保論争」について。日本の平和主義はどうあるべきかという議論は、当然、我々が今どのような世界を生きているのかといったリアルな認識が基礎となるべきであり、また歴史をきちんと踏まえなくてはならないという当たり前の主張がなされている。 しかし、この当たり前の主張がときに感情的な言論...

「安保論争」について。日本の平和主義はどうあるべきかという議論は、当然、我々が今どのような世界を生きているのかといったリアルな認識が基礎となるべきであり、また歴史をきちんと踏まえなくてはならないという当たり前の主張がなされている。 しかし、この当たり前の主張がときに感情的な言論に押し流されてしまう場合がある。そこに著者の苛立ちがあり、かつて高坂正堯氏が指摘した「精神の腐敗」が認められる。 巻末に詳細なブックガイドもあり、きちんと安全保障論を学びたい人にとって有益。

Posted byブクログ

2016/07/31

慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一(1971-)による、20世紀および現在の東アジア安全保障環境に関する概観と「反安保法制」勢力への反論。 Ⅰ 平和はいかにして可能か  1.平和への無関心  2.新しい世界のなかで Ⅱ 歴史から安全保障を学ぶ  1.より不安定でより危険な社会  ...

慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一(1971-)による、20世紀および現在の東アジア安全保障環境に関する概観と「反安保法制」勢力への反論。 Ⅰ 平和はいかにして可能か  1.平和への無関心  2.新しい世界のなかで Ⅱ 歴史から安全保障を学ぶ  1.より不安定でより危険な社会  2.平和を守るために必要な軍事力 Ⅲ われわれはどのような世界を生きているのか  1.「太平洋の世紀」の日本の役割  2.「マハンの海」と「グロティウスの海」  3.日露関係のレアルポリティーク  4.東アジア安全保障環境と日本の衰退  5.「陸の孤島」と「海の孤島」  6.対話と交渉のみで北朝鮮のミサイル発射を止めることは可能か  7.カオスを超えて Ⅳ 日本の平和主義はどうあるべきか  1.集団的自衛権をめぐる戦後政治  2.「平和国家」日本の安全保障論  3.安保関連法と新しい防衛政策  4.安保法制を理性的に議論するために  5.安保関連法により何が変わるのか 第二次安倍内閣の下、再開した安保法制懇のメンバーに細谷は入っている。安保法制懇は2014年5月に報告書に提出し、その中で集団的自衛権が憲法解釈は一貫して否定されてきたのではないという戦後の文脈を提示し、集団的自衛権容認の憲法解釈変更を示唆した。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/ その後、2015年の安保法制審議において、同法案を戦争法案であると批判する野党勢力を中心に国会内外を騒がせ、憲法学者も同法案が意見であるという厳しく批判を行った。 本書は、「憲法九条」という体制のみで、これまで、そして現在の安全が保障されているわけではないという主張を展開する。そして、安保法制審議を「戦争法」と批判する行動が具体的な問題解決に寄与しないと指摘する。現憲法制定以後の東アジアの安全保障は冷戦期そして、ポスト冷戦期の現在においても軍事的バランスの中で成り立っており、国際法を遵守しない国家・地域への対応を、法的準備不十分で行うわけないはいかないという問題意識である。加えて、国連の平和維持活動への積極参加を日本の国策として勧めている。 本書冒頭、「国民的議論を抜きにした法案を押し通すのは許せない」「第9条の理念を際限のない拡大解釈によってねじ曲げれば、国家の最高法規である憲法は全く中身のないもになってしまう。これを法治主義に対する挑戦だと考えるのは、大げさだろうか」という朝日新聞の記事の紹介がある。これがいつ、何に対する記事だったのかは、本書を手にとってご覧いただきたい。と、言いたいところだが、ちくま新書のホームページに行けば読めるので、興味があれば一読をおすすめする。 http://www.webchikuma.jp/articles/-/201 本書では問題の整理は行われているが、著者は日本外交や安全保障問題の専門家でもなく、新たな知見が提示されているというわけではない。その点で、戦後日本政治外交史や安全保障論の先行研究を何冊か読んだことがある人は、(本書を読むのにさして時間はかからないが)優先順位は下がるだろう。一方で、安保や軍事はとにかく危険だと思っている人には、一読して十分価値があるだろう。 個人的には細谷氏には、このような書物ではなく、専門のイギリス外交史で実績を重ねてもらいたいし、そちらの最先端の成果を新書にまとめてもらった方が一般読者にはありがたい。

Posted byブクログ