1,800円以上の注文で送料無料

拾った女 の商品レビュー

3.8

12件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/10/05

書評七福神から。出版された都市のミステリランキングとかにも入っていたみたいだけど、実はこれ、だいぶ前に書かれた作品だったんですね。原題の下に書かれた出版年を見てビックリ。確かに時代を感じさせられる情景描写とかはあるけど、古臭さは全然感じられず、やっぱり翻訳の同時代性って大事!と改...

書評七福神から。出版された都市のミステリランキングとかにも入っていたみたいだけど、実はこれ、だいぶ前に書かれた作品だったんですね。原題の下に書かれた出版年を見てビックリ。確かに時代を感じさせられる情景描写とかはあるけど、古臭さは全然感じられず、やっぱり翻訳の同時代性って大事!と改めて実感させられた次第。現役の翻訳家が、今の言葉で書いてくれたからこそ、十分に楽しめたってのは間違いない。ミステリ界隈で取り上げられていたから、きっとそういう内容なんだろうとは思いつつ、中盤までは『でも、どういうこと?』って戸惑う部分が大。ひょっとして、『イニシエーションラブ』よりずっと前に…?みたいな気もしてたけど、途中からしっかりミステリになります。ただ、にしても普通かも、って思っていたら、最後でしっかりどんでん返ります。なるほど、こうきますか、と。

Posted byブクログ

2020/11/20

思い掛けなく翻訳された1954年発表作。各誌の年間ベストにも選出され、概ね好評を得ていた。ウィルフォードは、80年代に始まったマイアミ・ポリス/部長刑事ホウク・モウズリーシリーズで著名なのだか、どちらかといえば玄人好みのマイナーな存在という印象を持っていた。いかにもアメリカ的な気...

思い掛けなく翻訳された1954年発表作。各誌の年間ベストにも選出され、概ね好評を得ていた。ウィルフォードは、80年代に始まったマイアミ・ポリス/部長刑事ホウク・モウズリーシリーズで著名なのだか、どちらかといえば玄人好みのマイナーな存在という印象を持っていた。いかにもアメリカ的な気風に満ちた〝粋の良さ〟は、エルモア・レナードのスタイルにも通じている。ただ、本作を読む限りでは、創作初期には意外と文学志向が強い作家だったようだ。 舞台はサンフランシスコ。30歳過ぎの男ハリー・ジョーダンが働くカフェに、客としてふらりとやってきたブロンドの美しい女、ヘレン・メレディス。一目惚れした〝俺〟は女を口説き、同居生活を始める。女は既婚者だったが、反りが合わない夫の元を離れ、実家も飛び出し、この街へ来たという。俺はヘレンを愛し、ヘレンも俺を愛した。仕事を辞めた俺にカネは無く、女が持参していたカネも底をついた。職を転々とし、酒に溺れた。ヘレンは重度のアル中だった。怠惰な日々にも、いよいよ限界がきた。俺とヘレンは、或る決意を固め実行する。 物語の起伏は緩やかで、鬱屈した虚無感が漂う。ファム・ファタル的な犯罪小説ではあるが、全体のトーンやストーリーの流れ方は独特で、正直なところ何を描こうとしているのか掴みきれない部分もあった。〝話題〟となったラスト数行で、ようやく物語は〝修正〟された上で、作者の本意が明確となるものの、改めて読み返すほどのインパクトは無かった(終盤での主人公と精神科医の会話の中に強めの伏線が張られている)。主人公の内面描写は繊細だが捉えどころがなく、画家志望であったという過去も、真に重みを増すのは、読み終えてのちのこととなる。いわば本作は、米国が今現在も抱えている根深い問題へのウィルフォードなりのアプローチだった、と深読みすることも出来るのだが、結末はいかにもミステリ的とはいえ、何ひとつ答えを見出せていないもどかしさが残る。このテーマを生かすのであれば、やはり冒頭からストレートに物語を動かして欲しかったと感じた。ハリーとヘレンが表象するのは、現状に対する憤りを抱えながらも、あるがままに受け容れざるを得ない〝敗残者〟の弱さだ。硬い表現だが、1950年代のアメリカ社会に生きる実存的不安を抱えた人間の内省を描いたものだ、と勝手に解釈している。 また、本作の惹句には「傑作ノワール」とあるが、ごく〝普通〟の男である主人公も含めて悪漢は登場せず、違和感を覚えた。或る種の「破滅」を描いてはいるものの、肌触りが違うのである。綺麗にまとまり過ぎている、とでもいえばいいだろうか。何にせよ、最近は〝ノワール〟の呼称を乱雑に使う(私自身も含めて)傾向にあるのだが、定義付けが曖昧なままブームが先行した余波なのかもしれない。 余談だが、本作のような渋い作品を発掘し、きちんと出版してくれる扶桑社の〝ハードボイルド〟な姿勢には頭が下がる。扶桑社ミステリー文庫(旧サンケイ文庫時代も含める)のラインナップは結構〝宝の山〟で、日本では無名の作家を数多く紹介してきたという功績も大きい。同時期に冒険/スパイ小説ファンをザワつかせた気合いの入りまくった二見書房も同様。翻訳ミステリ隆盛期に新規参入した出版社のリストは、その殆どが絶版とはなってはいるものの、今でも飽きもせずに眺め、チェックした本を入手する日を夢見ている。

Posted byブクログ

2020/06/29

最後まで読んで驚き、思い返すとなるほど!と思える箇所がいくつか出てくるのですが…初めから読み返す…ことはしていません

Posted byブクログ

2019/10/05

アル中の女性と出会い、自堕落な生活を描写する前半、人生に絶望しつながらの獄中生活を描く後半とも普通に読ませるよい小説だが、物語のフレームワークを根本から揺さぶる本当の衝撃は最後の最後に待っている。2019年の今読んでも凄いし、実際に訳出は 2016年だが、執筆は戦後間もない 19...

アル中の女性と出会い、自堕落な生活を描写する前半、人生に絶望しつながらの獄中生活を描く後半とも普通に読ませるよい小説だが、物語のフレームワークを根本から揺さぶる本当の衝撃は最後の最後に待っている。2019年の今読んでも凄いし、実際に訳出は 2016年だが、執筆は戦後間もない 1955年だというのだから、当時の読者の衝撃はまったく想像できない。

Posted byブクログ

2019/10/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

うーん、あまり楽しめなかったかな。 アル中の男と女の堕落した恋愛おままごとの悲劇。 どんでん返しといえばどんでん返しだが、根底をくつがえすほどのものでもなく、そこまでに至るだらだらと進む物語にリーダビリティがない分、インパクトが弱い。 海外版イニシエーション・ラブ。

Posted byブクログ

2017/12/18

こういうノワールもあるんだなという感じ。ノワールが好きならきっと楽しめる。ロマンスとしても読めると思う。いい作品だと思う。訳も素晴らしかった。

Posted byブクログ

2017/08/27

想像していた軽いノリでない雰囲気だと感じ始めたのは三分の一くらい読んだあたりか。破綻しそうでしないプロットを読み進めていくのがフラついているような感覚で、必ずしも心地よいとは言えないが、最後の2行で絶句。この作品は単純なノワールではない。

Posted byブクログ

2017/01/22

このミスで4位に評価されている本書を読んでみると、これがミステリー?と疑問符一つ。帯に書かれた惹句にはノワールと書かれている。これがノワール?疑問符二つ目。 カフェにブロンドの美しい女がふらりと入ってくる。酔っぱらった女はハンドバッグをどこかに置き忘れており、バスターミナルのロ...

このミスで4位に評価されている本書を読んでみると、これがミステリー?と疑問符一つ。帯に書かれた惹句にはノワールと書かれている。これがノワール?疑問符二つ目。 カフェにブロンドの美しい女がふらりと入ってくる。酔っぱらった女はハンドバッグをどこかに置き忘れており、バスターミナルのロッカーの鍵以外何も持っていない。カフェで働くハリーはその美しい女をホテルに泊まらせ、別れる。 翌日から、2人の生活が始まる。お互いの純粋な愛に支えられた2人の生活は、酒と無収入の上に立っているため、どこかままごとのような危うさが伴う。その危うさは物語の転換に現れる。意外な結末に物語は盛り上がるのではなく、フェイドアウトする。 ただし、本作の初出は1955年だ。女はブロンドで美しい。時代背景を考えると、ハリーの出自が明かされる最後2行で全体の印象が、がらりと変わる。

Posted byブクログ

2017/03/21

夜の匂い、愛の形、血生臭いに、破滅。美女との出会いから、生き方と向き合い堕ちていく。ノワール小説の傑作。私の思い描く、アメリカの古き時代の描写が線密。日常、特に料理やお酒のページだけで、舌がヒリヒリする。読み物としての素晴らしさだけでも満足だと思ったラストページ。たった2行でミス...

夜の匂い、愛の形、血生臭いに、破滅。美女との出会いから、生き方と向き合い堕ちていく。ノワール小説の傑作。私の思い描く、アメリカの古き時代の描写が線密。日常、特に料理やお酒のページだけで、舌がヒリヒリする。読み物としての素晴らしさだけでも満足だと思ったラストページ。たった2行でミステリーとしての姿が浮かび上がり、頭がクラクラする。今では絶対に表現できない時代ならではのミスリードを堪能しました。 イニシエーションラブぐらいの破壊力ありです。

Posted byブクログ

2016/12/02

 この物語は、著者がある仕掛けを施している。最後の2行で頭がグランとする。でも、それはいわゆるどんでん返しというほどのあからさまな仕掛けではなく、読み手にもう一つ傷跡を残すというか、物語をさらに切なく、そして深いものに変える役割を担っている。まあ、再読したくなるのは間違いないと思...

 この物語は、著者がある仕掛けを施している。最後の2行で頭がグランとする。でも、それはいわゆるどんでん返しというほどのあからさまな仕掛けではなく、読み手にもう一つ傷跡を残すというか、物語をさらに切なく、そして深いものに変える役割を担っている。まあ、再読したくなるのは間違いないと思う。  あるカフェで働くハリーの物語。日銭を稼いではアルコールで消えてしまう、その日暮らしのような生活を送っているハリーの元に、目を見張るような美女ヘレンが訪れる。そこから物語が始まります。  ヘレンと暮らすことになったハリー。ハリーもそうだが、ヘレンはさらに輪をかけてのアル中で、ヘレンが持っていた200ドルもあっという間に底をついてしまう。そんな2人はいつしか死への渇望をするようになっていき・・・。というような話なのだが、不器用にもヘレンへの愛を全うするハリーがいたたまれなくない。  それにしても、著者はズルいなあと思った。最後の2行は効果的だったが、それに対してのヒントというか、表現は本来ならもっとあるべき筈なのに、完全に意図して消されていたなあと思えた。

Posted byブクログ