帰郷 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
故郷に強く焦がれながらも、戦争によって引き裂かれ、戻ることさえ出来ない男たちが、死を目前にして持ち続ける思い… 6つの短編に共通するのは、極限状態においてさえ保たれる、いや、極限状態だからこそそれにより己を保とうとする痛いほどの矜持。 短編とは思えないほどの重さ。一つ一つの話に強く揺さぶられ、思わず嗚咽していた。 読み返す度に涙が溢れる。 自分は、この人たちほどの矜持を持って生きているのか。この人たちに恥じない世の中を子供たちに残そうと努力しているのか。 深く深く内面に分け入る読書になった。
Posted by
戦争によって何もかもなくした、名もなき学生、商人、兵士などのその後の人生を描く短編小説。特に表題作の”帰郷”。玉砕の地より、復員し、妻子のいる故郷の駅で待っていたのは叔父だった。そして聞かされた衝撃の事実。すでに戦死として扱われ、妻はすでに再婚し新たなる家庭を築いていた。故郷には...
戦争によって何もかもなくした、名もなき学生、商人、兵士などのその後の人生を描く短編小説。特に表題作の”帰郷”。玉砕の地より、復員し、妻子のいる故郷の駅で待っていたのは叔父だった。そして聞かされた衝撃の事実。すでに戦死として扱われ、妻はすでに再婚し新たなる家庭を築いていた。故郷にはすでに自分の居場所がない事を悟り、向かった先は、焼け野原の新宿の闇市。そして知り合った一人の娼婦。絶望と矜恃が織りなす帰還兵と娼婦の向かう先に見えた生の正体とは。。戦争と人生を改めて考えさせられる至極の作品集。短編でありながら一つ一つの作品がどれも深ーい余韻が残る筆致はさすがです。
Posted by
戦時中の祖国日本に想いを寄せ亡くなって行った、生きて祖国の地を踏んだ人達を綴った短編集で其々の辛い生き様に涙する。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
赤紙で招集されて地獄のような戦場をなんとか生き抜いて日本に帰って来た兵士たちの短編集。帰郷しようとして自分が戦死したことにされていて既に弟と妻が再婚したことを知り故郷を見ずに去らざる負えなかった男と街娼をしてなんとか生きのびている女が出会うお話しや、傷痍軍人として生きることで戦友たちをいつまでも背負って生き続けようとする男とか、戦争であるべきはずの人生を喪った者たちを描いている。本により戦争で失われる人生を追体験することで、平和な日常の尊さを有り難く思い、平和を強く願うことは戦後遠く離れた今必要な事だと思う。
Posted by
この時代に小説の単行本として出版されるには、思い切った表紙だ。 作者も戦後生まれではあるが、まだ戦争の色をそこかしこに残す環境、生々しい記憶を抱えた人々が身近にも存在する、という中で生い立ったのではないだろうか。 もう少し時が経てば、太平洋戦争も、資料を丹念にひもといて綴る『歴史...
この時代に小説の単行本として出版されるには、思い切った表紙だ。 作者も戦後生まれではあるが、まだ戦争の色をそこかしこに残す環境、生々しい記憶を抱えた人々が身近にも存在する、という中で生い立ったのではないだろうか。 もう少し時が経てば、太平洋戦争も、資料を丹念にひもといて綴る『歴史小説』になってしまうだろう。 英雄でもなんでもない人々が戦場に駆り出された挙句の物語。 無事に帰還した人たちも多くを失い、また、とうてい口には出来ない秘密や思いを一生涯抱えて、最終的に墓場に入ったという人も多いだろう。 戦争に行かなくなった世代は、それを負い目にも感じ、行った世代との隔たりにも悩む。 当時の空気を連れてくる本だ。 『歸鄕』 望まれない帰還… この話が一番わかりやすい哀しみだ。 別の人生を生き直す。 『鉄の沈黙』 南方の激戦地。 砲撃手たちにかしずかれた機関砲は、彼等が散り、朽ち果てた後も空に砲身を掲げ、物言わぬ墓標となるのか。 『夜の遊園地』 戦死した父と自分の血脈を、帰還して日常を送っていたはずの他人のふとした真の姿を見たことから理解する。 『不寝番』 時空が交錯する。 『金鵄のもとに』 罪なのか、慈悲なのか。 単純に答は出せない。 そして、彼も、元の人生に戻れない。 『無言歌』 悟っているような穏やかさ。
Posted by
帯文:”二度と戻れぬ、遠きふるさと。” ”戦争によって引き裂かれた、男たちの運命とは。” ”名もなき人々の矜恃ある生を描く小説集。” 目次:歸鄕、鉄の沈黙、夜の遊園地、不寝番、金鵄のもとに、無言歌
Posted by
第一話を読み終えた時点で、 残りの5話がたとえ駄作であっても この書籍の評価は星五つだと 感無量の気持ちでした。 結局六話全て星五つの評価。 浅田さんの短編、ここに来ても 衰えを知らずの名作揃い。 浅田作品好きとしてはこんなに 頼もしく嬉しいことは無し。 作者、編集者、出...
第一話を読み終えた時点で、 残りの5話がたとえ駄作であっても この書籍の評価は星五つだと 感無量の気持ちでした。 結局六話全て星五つの評価。 浅田さんの短編、ここに来ても 衰えを知らずの名作揃い。 浅田作品好きとしてはこんなに 頼もしく嬉しいことは無し。 作者、編集者、出版社様方 心より感謝しております。
Posted by
もう二度と帰れない、遠きふるさと。 学生、商人、エンジニア、それぞれの人生を抱えた男たちの運命は「戦争」によって引き裂かれた――。 戦後の闇市で、家を失くした帰還兵と娼婦が出会う「帰郷」、 ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工を主人公にした「鉄の沈黙」、 開業直後の後楽園ゆう...
もう二度と帰れない、遠きふるさと。 学生、商人、エンジニア、それぞれの人生を抱えた男たちの運命は「戦争」によって引き裂かれた――。 戦後の闇市で、家を失くした帰還兵と娼婦が出会う「帰郷」、 ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工を主人公にした「鉄の沈黙」、 開業直後の後楽園ゆうえんちを舞台に、戦争の後ろ姿を描く「夜の遊園地」、 南方戦線の生き残り兵の戦後の生き方を見つめる「金鵄のもとに」など、全6編。
Posted by
物語として悪くはないと思う。 決してありえたはずのない、物語たち。 だが、それを願ってはいけないのかという嘆きなのだが。 浅田ならもっとできるはず、というか 半分慣れで書いてると思うので高い評価はやれない。
Posted by
太平洋戦争からの帰還兵とか、戦後十数年ぐらいの話しからなる短編集。戦後の話しも戦争との繋がりがテーマの話しです。「メトロに乗って」っぽい時代を超えたファンタジーのような話しもいくつかあります。短編集なので暇つぶしには良いと思うが、文学的な要素はあまり感じられなかった。
Posted by