台湾とは何か の商品レビュー
台湾の小説を読んでいて、台湾について勉強しようと思い立ち、読んだ本の(たしか)3冊目。先に読んだ『台湾の本音』と同じ著者であることに、読んでから気がついた。7年後に書かれた『台湾の本音』の方が、台湾に関するトピックが問いで分かれていて、数倍読みやすくなっていると思う。話題が色々と...
台湾の小説を読んでいて、台湾について勉強しようと思い立ち、読んだ本の(たしか)3冊目。先に読んだ『台湾の本音』と同じ著者であることに、読んでから気がついた。7年後に書かれた『台湾の本音』の方が、台湾に関するトピックが問いで分かれていて、数倍読みやすくなっていると思う。話題が色々と拡散しているような印象で、本全体としてこういうことを説明してくれている本だというのが説明しにくい。 今まで勉強してきたことから、話題として新しかったのが、沖縄や金門島の話。どうしても国境を境界線にして、土地と土地の関係を考えてしまうので、シンプルに物理的に近いがために生まれる関係や近さを忘れがちだなと思った。 筆者は、中国の歴史の中で出てくる「流求」は、その記述からは沖縄なのか台湾なのかの区別がつかないという話から、沖縄と台湾の歴史を重ね合わせていく。言われて見ると、日本の南進政策の中で、独自の文化や経済を営んでいたところで日本の支配下におかれたという意味では似た運命を辿っている沖縄と台湾である。その発想に至らなかったのも、地図上の地理的なイメージが、頭の中で想像できていないからなのだなと思う。 辺野古基地問題で、沖縄としてのアイデンティティが高まるプロセスが、台湾アイデンティティが高まるプロセスと重ね合わせて考えるところも、なるほどなと感じてしまった。 加えて、新しい話題だったのが金門島の話。現在どうなっているのか知らないが、中国から水道を引いてくる計画があったほどに近い場所であった。台湾というと台湾のあの島を思い浮かべるが、媽祖島と金門島も台湾の島で、どういった歴史をもって、どんな生活をしているのかは、これまであまり考えたことがなかった。金門が国共内戦の最前線であったということも初めて知った次第である 全般的に、新しく知った情報にへえという感じで、感想を述べられるほどに噛み砕けていないというのが正直なところである。第1章が馬英九がどうして台湾で不人気なのかという問いから始まるところからしても、極めて同時代的な文脈に乗っかった本という印象が大きい。そういうところも、ピンと来づらい理由の一つのような気がする。 けれども逆に言えば、それだけ政治的な変化というのは、刻一刻と変化していくもので、追っていかないと分からなくなるものなのでもあるのだと思う。コロナ前なので当然なのにも関わらず、コロナ対応の話がない台湾の話は、すでに少し違和感を感じるし、まだ、東日本大震災への義援金の話がものすごく取り上げられているのも、すでに隔世の感がある。 こういった断片的な部分を、つないでいかないとダメだよなと思う。
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2024年の台湾総統選が間近に迫っているけれど、台湾政治をふわっとしか知らないので読んでみた。読んでよかった。特に、馬英九政権の台湾についての理解が進んだ。台湾関連のニュースの解像度もかなり上がった。 改めて、難しい場所だと感じる。特に、「第五章 台湾アイデンティティ」「第六章...
2024年の台湾総統選が間近に迫っているけれど、台湾政治をふわっとしか知らないので読んでみた。読んでよかった。特に、馬英九政権の台湾についての理解が進んだ。台湾関連のニュースの解像度もかなり上がった。 改めて、難しい場所だと感じる。特に、「第五章 台湾アイデンティティ」「第六章 例外と虚構の地「台湾」」を読むと、台湾への言及の仕方に迷い、幾分慎重にもなる。 それでもやっぱり、この場所が大好きで、これからも通い続けて台湾の文化を一層理解したいと思う。 本書は、蔡英文が総統に就任した直後の2016年に出版された。あれから、世界の状況も大きく動いた。1月に総統選を迎える台湾から目が離せない。 野嶋剛さんの新刊『台湾の本音』がまもなく発売ということで、楽しみ。
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ジャーナリストなのでやはり読みやすく面白い。冒頭から巻末まで淀みなくどんどん読んでしまう。内容的には、政治的な事柄とアイデンティティについてが殆どだ。著者は、もっと台湾のことを直視しろ、議論しろ、と言う。私も二週間後、本書の内容を思い返しながら、台湾に行ってこよう。
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平易な文章でわかりやすい。紹介されていた司馬『台湾紀行』と小林『台湾論』は読んでおきたい。興味深い記述は以下のとおり。 ・1953年に中国は十一段線のうちトンキン湾線と北部湾線を削除 ・2013年に台湾外交部は「釣魚台の争いにおいて中国大陸と合作しない我が国の立場」を発表 ・村山...
平易な文章でわかりやすい。紹介されていた司馬『台湾紀行』と小林『台湾論』は読んでおきたい。興味深い記述は以下のとおり。 ・1953年に中国は十一段線のうちトンキン湾線と北部湾線を削除 ・2013年に台湾外交部は「釣魚台の争いにおいて中国大陸と合作しない我が国の立場」を発表 ・村山談話において、台湾をどう位置づけるかはまともに議論した形跡なし。「返還」されたことで日本社会の認知の中で台湾という存在が消失したのでは。
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台湾について少し何かを知りたいと思って借りた本。 しかし、読み始めて最初の序章、次の第1章がとてもお堅い内容。台湾の政治に多少なりとも興味を持っていなければなかなか読み進められない。もうほとんどやめようかと思ってぱらぱらと読み飛ばして第2章に入った途端面白くなった。 著者は朝日新...
台湾について少し何かを知りたいと思って借りた本。 しかし、読み始めて最初の序章、次の第1章がとてもお堅い内容。台湾の政治に多少なりとも興味を持っていなければなかなか読み進められない。もうほとんどやめようかと思ってぱらぱらと読み飛ばして第2章に入った途端面白くなった。 著者は朝日新聞で中国語圏に留学する機会を得て台湾の大学を選択するも、会社の方針で中国に変更させられた という。この体験談から、2016年当時の日本と中国、台湾との関係がとてもよくわかった。 日本は台湾と正式な国交を結んでいないため、台湾との関係をまじめに考えようとすると矛盾が多く、「思考停止」せざるを得なくなる。台湾人も、独立国台湾を望む人が増えているというが、かといって積極的な独立運動は行わず「現状維持」波が多数を占めているという。 経済的にも文化的にも魅力の多い台湾は、政治的には複雑な立場に置かれているようだ。 他の本も読んで台湾のことをもっと知らなければいけないと思った。
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台湾とは何か。日本から見た・中国から見た・歴史的に・そして今、台湾とは何者かを日本人目線で理解することができる本。 時事モノとしては少し古いけど、図書館で見かけて大学時代の講義を思い出して借りた。当時は初めて民進党が政権取った時代で、中国とは異なる歴史を歩む台湾は盛り上がっていた...
台湾とは何か。日本から見た・中国から見た・歴史的に・そして今、台湾とは何者かを日本人目線で理解することができる本。 時事モノとしては少し古いけど、図書館で見かけて大学時代の講義を思い出して借りた。当時は初めて民進党が政権取った時代で、中国とは異なる歴史を歩む台湾は盛り上がっていたことを覚えている。 本書は現地に詳しい新聞記者目線から見た、日本人が知らない台湾の基本について分かりやすく解説してくれる。ちょっと勢いのある主観的な書き方が気になったが、正論とか事実だけを振り回すではない、現地の事情を理解した説明は説得力がある。 なお、本書は中国の影響増大・トランプ出現する前に書かれたものであるので、本書が取り上げている最新情報・未来については昨今の情勢で各自アップデートする必要はある。しかし、日本と台湾の歴史的な関わりと現代、そして何より中華民国ではなく「台湾」として生きようとする在り方をこの1冊で知ることができたのは収穫だった。
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読了。 いま香港で起こっている事を理解し、そのありうべき未来を予測するにあたって、日中の政治パワーの狭間で絶妙なバランスを保ちながら、独自のポジションを築き上げた台湾を考察するのは、それぞれの立場に於いても大いに意味のあることだろう。 元朝日の記者にしては(笑)、非常にバランスの...
読了。 いま香港で起こっている事を理解し、そのありうべき未来を予測するにあたって、日中の政治パワーの狭間で絶妙なバランスを保ちながら、独自のポジションを築き上げた台湾を考察するのは、それぞれの立場に於いても大いに意味のあることだろう。 元朝日の記者にしては(笑)、非常にバランスの取れた観点で、フェアに現在の台湾を描き出そうとしているのは好感が持てる(でも、ちょっと蔡英文に肩入れしすぎかな)。
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台湾面白い!こんなに捻れていたことを全く知らなかったことを強く恥じる。ぜひ行ってみたい。 230105再読 やっと行けることになりそうなので再読。 終章の「日本は台湾とどう付き合うか」の部分は改めて考えさせられることが多い。
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「親日国(地域?)台湾」。これが多くの日本人が台湾について語る言葉である。しかし、著者が指摘するように、残念ながら多くの日本人は、台湾の歴史(特に日本との関係)を理解することなく、ただ「思考停止」しているというのが事実ではないだろうか。台湾を等身大の台湾として理解するための入門書。これが、本書の位置づけのようである。 台湾の歴史は複雑だがその分面白い。500年前まで南島語族の先住民族の居住地だったが、16世紀以降、福建系・客家系の南方系漢民族など新たな族群が渡来。「海洋アジア」と「大陸アジア」などが混在する多様性に富んだ民族構成になっている。日本統治50年の結果、日本文化に造詣が深い日本語話者も少なくない。 日清戦争(1894-95)、辛亥革命(1911-12。1912年1月1日南京に中華民国成立)、日中戦争(1937-45)、国共内戦、東西冷戦という、東アジア世界を大きく変えた近現代史の大事件に、台湾は深く絡んでいる。台湾はアジア世界の縮図のような国なのである。 国連との関係も注目すべきだ。常任理事国は国連憲章で規定されており、今も中華民国(The Republic of China)が含まれているのである(第5章-第23条1)。 The Security Council shall consist of fifteen Members of the United Nations. The Republic of China (略) shall be permanent members of the Security Council. 1971年に中華人民共和国が加盟を果たそうという時、蒋介石総統はアルバニア決議「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」(10月25日)を不服とし、国連を脱退。中華民国の立場を中華人民共和国が引き継いだ形となっているのだ。 尖閣諸島問題について、中国人の領土認識では、尖閣諸島は台湾の一部であり、台湾は中国の一部だから尖閣は中国の一部という論法らしい。そもそも、台湾には中国の権限が及ばないはずなのに。その一方、1895年に無主地である尖閣諸島を「沖縄県」に編入した事実を記載しないのは、明らかに元朝日新聞記者としての偏向の表れだ。 台湾の独立問題で重要なのが「92年コンセンサス」。これは「中国と台湾がお互いひとつの中国を否定しないことを信頼関係の基礎とし、ひとつの中国がそれぞれ同床異夢であることはあえて問題視しない」という確認事項である(p.186)。民進党はこのコンセンサスは存在しないとする。 台湾の独立は、「理想主義」と「現実主義」の対決とも読める。しかし、国民党の「現実主義=現状維持」という言葉によって人を感動させることはできるであろうか。一方民進党は、「いずれは独立」という「理想主義」を持っている。最近は「天然独」と呼ばれる、生まれながらの独立派が増えている。彼らには独立の「理論」はない。ただ「台湾は台湾だ」と考える。 台湾の行く末は、日本に大きな影響があるだけに、思考停止ではいられない。問題は国民だけではない。日本の左派・革新勢力(野党)は台湾との付き合い方において定見を持てず、軸足が定まらないことも問題を大きくしているのだろう(p.254)。
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【221冊目】元朝日新聞台湾特派員だった筆者が書いた2016年発行の本。筆者がここ10年の台湾を書いたと言っているが、その10年がどのような過去に規定されていたのかという点も簡単にまとめてあるので、台湾(の特に政治)に関する入門書としては最適だと思う。 読んでいて痛烈に感じたのは、筆者の「かつて、日本においては、台湾について正面から論じることをはばかられる時代があった」という認識。これが文書の端々から感じられる。 興味深かった指摘の1点目は、今の台湾には大陸から台湾を守る盾が2つあるという話。 1つ目の盾は、現状維持を望む民意。しかし、アンケート結果から浮かび上がるのは、大陸中国の圧力さえなければ独立を望むという台湾の民意である。「台湾は台湾」という民意は、各種選挙を通じて繰り返し表明され、台湾の政治家もこうした民意に配慮して活動せざるを得ない。結果として大陸中国もこれに一定程度留意せざるを得ず、安全保障上の盾となっているとのこと。 2つ目の盾は、「台湾は『中華民国』である」ということ。これは、「台湾は台湾」という(最近の)大衆意識と矛盾するようであるが、このロジックの帰結は「台湾は『中華民国』であるからこそ、1つの中国を望む」というものである。大陸中国としては、眼前の的は台湾独立論であり、「台湾=中華民国」が「1つの中国」を望んでくれる限りは台湾独立論よりは御しやすい相手と認識するようだ。このことは「92年コンセンサス(九二共識)」というアプローチに姿を変え、中台関係のキーワードの1つとなっている。 興味深かった指摘の2点目は、台湾と沖縄、尖閣諸島の関係である。 ・1879年に、日本政府が沖縄県設置 ・1895年に、日本政府が沖縄県に、尖閣諸島への勝手な渡航を禁止するための杭打ちを認める ・1896年に、日本政府が台湾の割譲を受ける 時系列で並べると、沖縄→尖閣諸島→台湾と、第一列島線に従って見事に南下している。地理的な近接性だけでなく、歴史的な経緯からも沖縄と台湾は、近代日本政府の南下拡張政策の対象だったことが分かる。 ただし、筆者が、台湾の人が自己決定権を求めているように、沖縄の人も自己決定権を求めているというのには賛成できない。台湾が求める自己決定権は、政治体制や安全保障といった「国家」の根幹にかかわることであるのに対し、沖縄の人は、日本という国に組み込まれていることについては反対していない(地元2紙のアンケート結果からも、60%以上の人がこれを肯定している。)。 あと、台湾と大陸中国を隔てたものが、近代性だという指摘も面白い。日本の統治により、台湾には近代的な教育や制度、設備がもたらされた。第二次大戦終結とともに台湾は日本の統治から解放され、待ち望んだ中華民国が台湾島に到来した。しかし、実際にやってきた中国兵は鍋を担いでいたという俗話である。ここに中華民国の前近代性が象徴され、日本支配以上に台湾の人々に嫌悪されてしまったという話である。 台湾と大陸中国を隔てるものの中身は極めて多様かつ複雑であり、ここを理解しない限りは現代東アジアは語れないなと感じた。
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