国家はなぜ衰退するのか(下) の商品レビュー
Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=00000000747...
Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000007473
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この本の題名は「国家はなぜ衰退するのか」であるのだが、追究しているテーマは中国のような収奪的な政治制度を採用している国が経済成長を続けられるかということだ。 著者であるダロンらは、専制的な独裁政治はいずれ経済停滞を招くことを歴史的な検証により明らかにしている。そして長期的な経...
この本の題名は「国家はなぜ衰退するのか」であるのだが、追究しているテーマは中国のような収奪的な政治制度を採用している国が経済成長を続けられるかということだ。 著者であるダロンらは、専制的な独裁政治はいずれ経済停滞を招くことを歴史的な検証により明らかにしている。そして長期的な経済発展の成否を左右する最も重要なファクターは、地理的・環境的・生物学的差異ではなく、ガバナンスの違いだとする。 現在の中国の経済成長と日本の現状を比較すると、中国の政治体制の優位性にとらわれがちであるが、その成長の要因は、今までの「遅れの取り戻し」であり、「外国の技術の模倣」であり、「低賃金による低価格工業製品の輸出」によるものである。これは今までの日本の高度成長を支えた要因そのものであり、ここまでは日本が為したように中国もできる。問題は中進国になった以降も成長するためには、現在のガバナンスでは、新しい成長をもたらす創造的破壊が起こらないので、綺麗こう発展しなくなるというのである。 この本を読んでいて思ったのは、これは今後中国が発展しなくなるということより、日本は中国と異なり、「民主政治」を採用しているが、本当の意味で「多様な社会集団が既存の支配者を打倒するための連合」を組んだことはないのである。日本の産業においては「創造的破壊を伴う技術革新」が行われることが少ないのは、現在のトヨタを見ているとそんな気がする。SONYもPanasonicもそうだった。 なんだか、中国の経済発展は長続きしないという理論が日本経済の成長力の限界の理論として響いてしまった。
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2020/12/01 購入 2020/02/03 読了 ★★★★ 2024/11/30 読了 ★★★
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本書では国家間で経済発展の差が生じている原因を多くの条件の差異がある中で、政治経済制度に求めている。政治経済制度を包括的な制度と収奪的な制度に分け、前者は長期的な経済発展は可能とするが、後者は短期的には可能であるだろうが、長期的にみると必ず歪みが出て、破壊的innovationが...
本書では国家間で経済発展の差が生じている原因を多くの条件の差異がある中で、政治経済制度に求めている。政治経済制度を包括的な制度と収奪的な制度に分け、前者は長期的な経済発展は可能とするが、後者は短期的には可能であるだろうが、長期的にみると必ず歪みが出て、破壊的innovationが妨げられ、経済発展が妨げられる、としている。包括的な制度と収奪的な制度の間の差は、権力が多元化しているか否かであり、前者はしている一方で後者はしていない。前者は自由民主政治が行われている社会であり、後者は独裁国家のほか、ソマリアのような統一政権が明確でない国も含まれる。 本書では最後に現在の中国は収奪的制度の国であるため、現在の経済成長は一時的なもので、破壊的なinnovationは生じずに経済成長は止まると考察している。本書は2013年に発行されたものであり、7年経過した現在、その予想は今のところ当たっていない。しかし、体制に不都合なものを認めない姿勢は変わらず、包括的な制度に移行する見通しは立っていない。本書の予言通りになる日は来るのであろうか、注目である。
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ローマ帝国、ヴェネツィア、清…歴史を紐解けば衰退した大国は多い。現代においても、メキシコと米国、北朝鮮と韓国のように、国境を接しながらも発展に大きな差がある国家は多い。国家はなぜ衰退するのかという遠大なテーマに対して統一理論を提供しようとする試みは挑戦的であるが、民主政治の肯定と...
ローマ帝国、ヴェネツィア、清…歴史を紐解けば衰退した大国は多い。現代においても、メキシコと米国、北朝鮮と韓国のように、国境を接しながらも発展に大きな差がある国家は多い。国家はなぜ衰退するのかという遠大なテーマに対して統一理論を提供しようとする試みは挑戦的であるが、民主政治の肯定という目的が先にあるように感じる。 創造的破壊をベースにした経済的強者の交代可能性こそが繁栄の条件であるという議論については同意できる。イノベーションを駆使することで社会的に成り上がるモチベーションが存在するからこそ経済が発展するし、そのために財産権の確保をはじめとした法の支配が必要であるというのは正しい。 しかし、現代中国の経済発展を見ればこの条件には必ずしも多元的な民主主義は必要ないだろうとも感じる。
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上巻では包括的な政治・経済制度(自由主義、民主主義、多元主義、私有財産性、市場経済など)が、豊かな国を産んだ特徴で、収奪的な政治・経済制度(独裁主義、共産主義、奴隷、農園制度、行きすぎた中央集権主義など)が、貧しい国の特徴と述べられました。 では、そうした制度はなぜ今日まで続き...
上巻では包括的な政治・経済制度(自由主義、民主主義、多元主義、私有財産性、市場経済など)が、豊かな国を産んだ特徴で、収奪的な政治・経済制度(独裁主義、共産主義、奴隷、農園制度、行きすぎた中央集権主義など)が、貧しい国の特徴と述べられました。 では、そうした制度はなぜ今日まで続き、豊かな国と貧しい国を分けているのか。そして、収奪的な制度は打破できるのか。包括的な制度が根づく条件は? が、主な下巻のテーマ。下巻でも様々な国家の歴史的事例が挙げられています。 基本的に国家の制度は、収奪的に出来ているというのが著者の意見。それが崩れるきっかけになるのが、大きな社会的うねりだとしています。例えばヨーロッパではペストの流行で、宗教や封建制度への絶対性が揺れ、日本を例にすると、明治維新がそれにあたるそう。 そうした社会の揺れに加えて、収奪的な制度を倒そうとする人々が必要です。イギリスの名誉革命。明治日本の大政奉還までの流れ。しかし、ここで重要なのは政治を改める人たちが多元的であること。 もしこれが、一部の人たちの動きなら、結局その一部の人たちのための政治に置き換わるだけで、制度が抜本的に変わるということはないとのこと。 そして、一度包括的な制度の流れができれば、選挙や憲法ができ、独裁的な政治や、占有された経済制度が生まれにくくなる。また公正なメディアも発展し、庶民に情報を与えることも、それに寄与します。 そして包括的な政治・経済の下で国家が発展していくため、それを抑えようとする動きも弱くなります。もし、何者かが権力を握り自由な経済を閉ざせば、その瞬間経済成長が止まってしまうからです。だから、わざわざ独裁、共産的な動きをしようとする人はいなくなる。 そういう好循環もあれば、悪循環もあると著者はしています。 収奪的な制度は、権力者が自分たちの特権や富を守るため、軍や司法を支配します。その力は絶対的かつ魅力的。結果起こるのは権力と富を狙う終わりなき内紛。また、そうした独裁者やクーデターを抑える憲法も制度もないため、政治も経済も改められることなく、結局悪循環が続くとのこと。 著者は中国に注目します。政治的には共産主義国家ながら、経済自体は資本主義的で今や、アメリカすら脅かす存在になりつつある中国。著者の意見では、中国の成長もこのまま続かないと予測しています。 中国の成長というのは、イノベーションや自由競争によるものではなく、国家が先導して成長分野に積極的に投資をしているからこそ、享受できている。そのため、その成長分野が限界を迎えれば、やがて立ち行かなくなる。 また成長にはイノベーションが欠かせない、というのは上巻でも書かれていたけど、中国はその政治体制ゆえ、イノベーションの芽が出にくい制度らしいとのこと。そのため成長に限界を迎えた先の、変化が起こらない、というのが著者の意見。 そのように事例と意見をまとめながら、繁栄した国家、衰退していく国家の共通点を見出していきます。 著者も本の中で言及しているけど、あえて細部を省いて大枠で見て、繁栄する国家と衰退する国家の共通点を見出していったそうです。そのため、事例や歴史的な記述が多く、ついて行くのが大変だったのですが、大枠としての著者の主張はとてもシンプルで、理解しやすかったと思います。 世界史に明るかったら、もっと読み込めたのかなあ、と思う反面、そうでなくても主張を理解させる論の進め方は、読んでいて親切に感じました。 この本でもう一つ印象的だったのは近代化論の話。近代化論とは、独裁、共産主義の国家であっても、労働者の給料の水準と、教育水準が上がり続ければ、いずれその国家は、民主主義、人権、市民の自由、所有権の保障などの変化が起こるというもの。 著者は中国を例に挙げ、この近代化論に疑問を投げかけています。 最近の中国を見ると、経済成長は確かに著しいものの、香港やウイグル、コロナウイルスの初動の問題など、政治体制が変化する兆しを見せるどころか、ますます悪くなっている印象。 それどころか、世界に目を向ければ、アメリカの自国第一主義や、イギリスのEU離脱など、自由主義や多元主義によって成り立つ、包括的政治・経済制度はどんどん後退していっているような……。 著者は、国家というものは基本的に収奪的制度に陥りがち、というようなことを書いていたけど、近代化どころか、衰退がまさに現実になっているような気がします。 グローバル化が進んで、一つの大国が政治や経済を閉ざせば、それがすぐに世界に波及する現代。この本が導き出した富める国と、貧しい国の境目は、もはや一国家の問題ではなく、世界が共通してもたないといけない認識のように思いました。
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包括的政治と収奪的政治をキーワードに、国々の発展の差異を解説したり、また悪習から脱する事の困難さを論じている 。 下巻の始めの章で語られてる、アフリカのアパルトヘイトの前身を作り上げた過程を描いた話は読む価値があり。 総費用を安く抑える為に、人件費の安い外国に頼るという...
包括的政治と収奪的政治をキーワードに、国々の発展の差異を解説したり、また悪習から脱する事の困難さを論じている 。 下巻の始めの章で語られてる、アフリカのアパルトヘイトの前身を作り上げた過程を描いた話は読む価値があり。 総費用を安く抑える為に、人件費の安い外国に頼るというのはよく聞く話。しかし総費用を抑える為にある国の人件費を恣意的下げる(=経済レベルを後退させる)政策取ったというのは何とも恐い話。全く自分の価値観になかっただけに感心させられると同時にの罪深さ、傲慢さに驚かされた。 政治制度という立場が人を狂わせるということは、基本的には性悪説のスタンスなのかな。だけに制度が重要で、制度によって人を律する事が何より大事、と理解しました。 帯ではジャレド・ダイアモンドが引き合いに出されているが、生物的発展に焦点を当てた『銃・病原菌・鉄』と、国の繁栄衰退に焦点を当てた本作はあくまで別物かな、というのが最終的感想。
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包括的制度の好循環のメカニズムは、権力の行使に対する制約と、社会における政治権力の多元的な分配だと論じている。果たしてそうだろうか?この定義からすると中国は包括的制度からほど遠い。にもかかわらずリーマンショックから立ち直るきっかけを作った経済刺激策は中国から発動された。民主主義の...
包括的制度の好循環のメカニズムは、権力の行使に対する制約と、社会における政治権力の多元的な分配だと論じている。果たしてそうだろうか?この定義からすると中国は包括的制度からほど遠い。にもかかわらずリーマンショックから立ち直るきっかけを作った経済刺激策は中国から発動された。民主主義のスピードでは成しえない政策に世界は羨望した。そしていま、世界はトランプ政権に翻弄されている。だとすると、包括的制度とは、何とも危ういものともいえる。だからといって収奪的制度を肯定する理由にはならないが。
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ボツワナの話が印象に残った。広く浅い、また「偶然」という言葉に頼りすぎてる感はあるが地理的にも歴史的にも広範なデータをとっていて、そこにこの文献の価値がある?
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