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潮鳴り の商品レビュー

4.2

32件のお客様レビュー

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2022/08/28

落ちるところまで落ちた櫂蔵が、弟の自害を契機に、這い上がって行く。 身寄りなく、客をとって身を立てていたお芳との心の共鳴は、孤独と絶望を感じた者の間でしかわからない世界が広がっていた。 深みある読み応えのある作品だった。

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2022/08/04

一度失敗を犯した者が再び花開くことが可能なのか、という命題がテーマになった作品。 無駄なプライドを捨てて、自分に正直に、かつ自分のことをきちんと見てくれる人の想いに報いるべく生きることの価値を一貫して綴られています。 やもすれば青臭い理想論になってしまうところですが、葉室氏の巧み...

一度失敗を犯した者が再び花開くことが可能なのか、という命題がテーマになった作品。 無駄なプライドを捨てて、自分に正直に、かつ自分のことをきちんと見てくれる人の想いに報いるべく生きることの価値を一貫して綴られています。 やもすれば青臭い理想論になってしまうところですが、葉室氏の巧みな人物描写とストーリー構成で、力強い感動的な読後感を味わうことができました。

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2022/06/07

蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小...

蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小説ではあっても2010年代に書かれただけあるなという感じ。えっ、そんなことになってしまうの?と悲しくて泣けましたし、いい話だったけど、最後にまさかそんな水戸黄門の印籠みたいなまとめになるとは思いませんでした。

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2022/06/07

先が読みやすい勧善懲悪のストーリーながら、人を思いやる気持ちの大切さに改めて気付かされる小説である。ともすれば自分本位となりがちな現代において、人を慈しむ慈愛の心こそが人の共感を呼び、連帯感を強くすることを再認識させられた。読後感も爽やかである。

Posted byブクログ

2022/03/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

九州豊後の羽根藩士である伊吹櫂蔵は、勘定方として出仕していたおり、酒席での失態から身を持ち崩し、転落の人生を送っている。長男であったが継母である染子にも疎んじられ、染子の実子である弟の新五郎に家督を譲ることとなった。新田開発奉行並として凛々しく出世した腹違いの弟新五郎と比べ、櫂蔵は襤褸蔵(ぼろぞう)と呼ばれる有り様。お芳という訳ありの女性が営む飲み屋で酒に溺れ、時にそのお芳と肌を合わせ、博打ですったあげく海辺の漁師小屋に寝泊まりしている。そんな矢先、弟の新五郎が櫂蔵の元を訪ねたあと、切腹をして果てたと知らされる。さらには櫂蔵のもとに勘定奉行が現れ、新五郎の職であった新田開発奉行並を継げと命じられる。弟の無念を晴らすため、櫂蔵は新五郎の職につくが……。  櫂蔵が新五郎の無念を晴らしていく物語の中で、周囲の人々の裏のエピソードひとつひとつが謎を解く上での鍵になり、次々と扉が開いていく様が心地よく、どんどん読み進んでしまう。 「懸命に生きることは無様でござるか」 「落ちた花は二度と咲かぬと誰もが申します。されど、それがしは、ひとたび落ちた花をもう一度咲かせたいのでございます。(中略)二度目に咲く花は、きっと美しかろうと存じます。最初の花はその美しさも知らず漫然と咲きますが、二度目の花は苦しみや悲しみを乗り越え、かくありたいと願って咲くからでございます」  櫂蔵の生き様はこのふたつの言葉に尽きる。  お芳は今生で咲くことはかなわなかったが、櫂蔵や染子の胸に永遠に咲く花となった。  この継母染子の存在、後半の素性が明らかになって物語を動かしていく様が痛快。  悲しみがひたひたと打ち寄せる物語の中で、人々の信念、死ぬよりもつらい生き続けることを選んだ櫂蔵たちの姿が胸を打った。

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2022/01/25

2022年1月25日読了。 「蜩の記」に続いての羽根藩を舞台にした物語。 生きて、落ちた花をもう一度咲かせて下さいというお芳の心が切ない。

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2021/08/21

前作同様、藤沢周平の再来かと思わせるようなストーリー展開、雰囲気で楽しめる。最後は何か、清々しい気持ちになった。

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2021/06/20

再起をはかる人々の物語。 地べたから始まっていることを考えれば、何事も諦観をもって前を向いて取り組める。

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2021/06/18

痛快な復讐劇で大変面白かった。 前作「蜩ノ記」のような心に染みるような感動作ではないが、先の展開を期待しながら清々しい気持ちで読み切れた。シリーズといいながら舞台となる羽根藩が同じだけでどれから読んでもokの続きものでした。

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2021/05/02

「蜩ノ記」の羽根藩シリーズ第2作。続編と思いきや、他のレビュアーも書かれているとおり、「蜩ノ記」とは独立した物語です。とても読みやすく、作者の執筆のスピードも早かったのではないでしょうか。 一度落ちた花が、再び花開く話ですが、そこに至るまでに2つの犠牲があります。主人公の身近な...

「蜩ノ記」の羽根藩シリーズ第2作。続編と思いきや、他のレビュアーも書かれているとおり、「蜩ノ記」とは独立した物語です。とても読みやすく、作者の執筆のスピードも早かったのではないでしょうか。 一度落ちた花が、再び花開く話ですが、そこに至るまでに2つの犠牲があります。主人公の身近な人達の死です。主人公もほとんど死に近いところまでいくのですが、戻ってきます。そして、武士としての潔さの延長にある死を選ぶのでなく、生きぬいてことをなす、したたかさに裏打ちされた強さが描かれます。 主人公に影響を与えたはずの父親は描かれませんが、当初は冷たかったものの主人公の成長とともに賢母として顕現する継母が描かれます。賢母と愚息という構図は藩主とその母親にも現れ、悲劇を起こす元となり、終盤では救済をもたらします。悪い男性は描かれるが、悪い女性は描かれないなど、読後には人物像に偏りを感じもしますが、読んでいる最中にはそんなことは気になりません。時間も忘れて読むことになるでしょう。

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