外道クライマー の商品レビュー
あぁ、これはバカ(最上級の誉め言葉)だ、と思いながら一気読みしました。 良くわからない専門用語がそのまんま残ってたり、描写がイマイチわからなかったり荒削りだったりしましたが、それを補って余りある勢い、熱さ、タフさ、純粋さ。粋だけど不器用だし損する生き方なのかもしれないけれど、それ...
あぁ、これはバカ(最上級の誉め言葉)だ、と思いながら一気読みしました。 良くわからない専門用語がそのまんま残ってたり、描写がイマイチわからなかったり荒削りだったりしましたが、それを補って余りある勢い、熱さ、タフさ、純粋さ。粋だけど不器用だし損する生き方なのかもしれないけれど、それをわかっていて突き進む潔さ。「沢ヤ」ってなんて不思議な生き物なのか。 末尾の角幡氏の解説も「なるほど、そういうことか」と腑落ちする感覚でこれまた素晴らしい。登山行為が本来抱えている原罪、というくだりは考えさせられますし、なんでわざわざそんなコトするの?への答えがあります。 全編面白かったですが、特に印象に残っているのは第7章のヘビのくだり。極限状態とはこういうことか。本当は笑えない、我々の日常では文明で覆い隠されているベールが剥がれただけのシーンなのだけれど、不思議なユーモアがあってついつい笑ってしまいました。
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那智の滝を登ったクライマーが逮捕されたというニュースを、随分前に読んだ記憶がある。 なんのために登るんだろう? 自分勝手なやつがいるなとぼんやり記憶している。 彼はきっと、自分のために登ったのだ。 自分の欲求を満たすために登る事を突き詰めていくと、そこにはrock '...
那智の滝を登ったクライマーが逮捕されたというニュースを、随分前に読んだ記憶がある。 なんのために登るんだろう? 自分勝手なやつがいるなとぼんやり記憶している。 彼はきっと、自分のために登ったのだ。 自分の欲求を満たすために登る事を突き詰めていくと、そこにはrock 'n' roll があるのだ。 最高に自分勝手で、最高に研ぎ澄まされて、最高に最高な沢登りの記録。 無茶苦茶でハチャハチャで、でも、とんがっている剥き出しのクライマー 。 彼の親ではなくて、本当に良かった。
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悪絶なまでに面白い。非冒険的であっても沢を一度でもやった事があるなら5倍楽しめる。と言うか沢やってなかったら楽しめないかも。軽妙で下品で笑える文体にも、著者のキャラクターにも好感を持って読んだ。かと言って一緒に沢行くにはちょっと怖い。あんなにぼろくそに書いて高柳氏との人間関係は平...
悪絶なまでに面白い。非冒険的であっても沢を一度でもやった事があるなら5倍楽しめる。と言うか沢やってなかったら楽しめないかも。軽妙で下品で笑える文体にも、著者のキャラクターにも好感を持って読んだ。かと言って一緒に沢行くにはちょっと怖い。あんなにぼろくそに書いて高柳氏との人間関係は平気なんだろうか、と心配してしまうくらい。無論強い信頼があるから書けるんだろうけども。ゴルジュストロングスタイルの精神に少しでも近づけたらと思うね。
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狂っている。まさに狂人だ。それは一般人が想像する山登りではない。むき出しの自然と対峙した人間が、どこまで立ち向かえるのか。負ければ、死に直結する。 登山スタイルは人それぞれだ。厳冬期のアルパインクライミングも登山であり、ピークハントを目指さないハイキングも登山である。 ...
狂っている。まさに狂人だ。それは一般人が想像する山登りではない。むき出しの自然と対峙した人間が、どこまで立ち向かえるのか。負ければ、死に直結する。 登山スタイルは人それぞれだ。厳冬期のアルパインクライミングも登山であり、ピークハントを目指さないハイキングも登山である。 数あるスタイルの中でも、他のスタイルと明らかに一線を画す連中がいる。沢ヤだ。 登山ではあるが頂上を目指していない。彼らのフィールドは谷底だ。それも谷が深ければ深いほど、それを好む。 最近流行りのキャニオニングやシャワークライミングなどとは明らかに違う。谷底の、まさに文字通り陽が当たらないフィールドだ。 那智の滝を登って逮捕。確かにそんなことあったなぁ。アホなことする人もいるんだなぁとしか思わなかった。 2012年だから、この頃には俺は自転車で百名瀑に全部行く、という目標を持っていた。滝は登るものじゃなくて、見るものとしか考えていなかった。 この事件で、世間は沢ヤの存在を初めて認識し、社会は彼らを理解できず徹底的にバッシングした。 なぜ彼らが那智の滝を登ったのか。「登りたかったから登った」という一見幼稚な発言は、なぜ登りたかったという動機を得るに至ったかが本書で書かれている。 前人未踏の称名廊下、四十六日間のタイ遡行、台湾の大渓谷チャーカンシー、そして冬期称名の滝登攀。 常識では考えられない。本当に命がけだ。少し気が緩んだだけで死に直結する行為を繰り返し、彼らが何を望んでいるのか。本当のところは、読者にもわからない。 角幡唯介の解説より、 「登山をはじめとする冒険行為一般は、反社会的であることから免れることはできない」 言われてハッとする。自分のことを思い返せば、立ち入り禁止の柵を幾度となく乗り越え、行きたい場所に行き、見たいものを見てきた。 誰にも迷惑かけてないからいいだろ。そう理由をつけてきたが、常識の内側で暮らす一般人から見れば反社会的行為である。 那智の滝を登る。反社会的行為だ。しかしそれは、登山が根源的に反社会的行為であることを、全ての登山者に突き付けたのだ。 登山者必読の書である。なぜ山に登るのか。その根源的な問いを各自答える義務がある。
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高野秀行さんが「早くも今年度ベスト1」と絶賛し、アマゾンの20件近いレビューはすべて☆五つ。探検・冒険ものは好きなジャンルでもある。それでも、これはちょっと…。 いや、おもしろいのはわかる。著者は、「沢ヤ」を名乗り、昨今の軽くてお行儀のいい登山やアウトドアブームに唾を吐きかけ、...
高野秀行さんが「早くも今年度ベスト1」と絶賛し、アマゾンの20件近いレビューはすべて☆五つ。探検・冒険ものは好きなジャンルでもある。それでも、これはちょっと…。 いや、おもしろいのはわかる。著者は、「沢ヤ」を名乗り、昨今の軽くてお行儀のいい登山やアウトドアブームに唾を吐きかけ、「反社会的行為」としての山登りを前面に押し出すスタイルをとっている。その露悪的と言っていいほどの徹底ぶりは、タイトルからも明らかだ。はっきり言って下品なんだけど、妙なユーモアと魅力があるのだ。 主に綴られているのは、46日にも及ぶタイのジャングルでの沢登りと、日本最大の滝である称名滝登攀の記録だ。これがもう、よくぞまあ死なずに帰ってきたものだという壮絶さ。その迫力には有無を言わせぬものがある。 それでも小声で言わせてもらえば、わたしはやはりマッチョは苦手。「力」というものにどうしようもなく惹かれていくのは人のサガだと思うが、それは人間の一側面でしかない。マチズモはそこが肥大しているわけだ。著者の破壊的なエネルギーや情熱には痛快さもあるが、胸がざわざわするような違和感を感じずにはいられない。ちょっとしか出てこないが、女性の描き方ははっきりと不愉快だ。
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