過ぎ去りし世界 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ジョー・コグリン完結編。 ギャングとしてあくまで倫理を失わず、敵を作らないやり方でその道での座を築いてきたジョー。 前作『夜に生きる』がその出世物語だったのに対し、今作は王座を揺るがされる物語。 第二次世界大戦という外的要因により、家業のしのぎが難しくなっていく中、誰かがジョーを無き者にしようとしているという話がジョーの耳に届けられる。 いったい誰が。 一方では、明らかに密告者がいるような摘発が続く状況や、不用意な抗争を無秩序に仕掛ける浅はかな組織の構成員が悩みの種に。 何しろジョーの立ち回りがかっこいい。完璧に洗練された大人のギャング。 そして結末が切ない。 この家業でハッピーエンドなんて夢のまた夢。
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楽しみにしていた『夜に生きる』の続編。スルスル読める。これ以上はネタバレになっちゃう!シリーズ一作目は『運命の日』は未読だけど、とても面白かったです。
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『過ぎ去りし世界』デニス・ルヘイン World Gone By by Dennis Lehane このミス9位、文春ミステリー12位 『運命の日』『夜に生きる』『過ぎ去りし世界』 コグリン・シリーズの3作目 1,2作目は冗長に感じたところがあり 3作目がいちばん好きかな ...
『過ぎ去りし世界』デニス・ルヘイン World Gone By by Dennis Lehane このミス9位、文春ミステリー12位 『運命の日』『夜に生きる』『過ぎ去りし世界』 コグリン・シリーズの3作目 1,2作目は冗長に感じたところがあり 3作目がいちばん好きかな ミステリー的なところもあって楽しめた。
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コグリン三部作の完結編。警察小説としての『運命の日』では長男のダニー・コグリンを、ギャング小説としての『夜に生きる』では三男のジョー・コグリンを描いたシリーズ最終編は、ジョー・コグリンのその後、前作より10年後の世界を描く。少し前に紹介された『ザ・ドロップ』という小編も含めて、...
コグリン三部作の完結編。警察小説としての『運命の日』では長男のダニー・コグリンを、ギャング小説としての『夜に生きる』では三男のジョー・コグリンを描いたシリーズ最終編は、ジョー・コグリンのその後、前作より10年後の世界を描く。少し前に紹介された『ザ・ドロップ』という小編も含めて、最近は裏社会に材を取ることの多いこのところのルヘイン。 本書は裏社会を描いているものの、実は背景としては太平洋戦争真っ只中である。つまり現代人にとってはもはや過ぎ去った時代であると同時に、暴力的な暗黒組織にとっても、ラッキー・ルチアーノが収監中というもはや過ぎ去りし世界の物語なのである。 さて、もとはハードボイルドの探偵小説でスタートを切り、その後ギャング戦争に題材を移しているかに見えるルヘインだが、最近では、ドン・ウィンズロウなども同じ傾向で小説戦争を仕掛けているところを見ても、この題材、つまり暗黒街や犯罪組織間戦争というアメリカ史にとって切っても切れない裏世界は、人間の生き様として魅力溢れるものなのだろう。 犯罪結社というと切りがない闘争というイメージが歴史上残されているし、現に日本でも最近の組織間抗争は衰えを知らず繰り返され、一般社会に不安を呼び起こしている。 アメリカは銃の歴史を持つ国家なので、抗争そのものも派手だし、あらゆる小説にガンマンという職業も当たり前のように頻出する。西部劇の舞台に生まれた文化が、コンクリート・ジャングルの時代にも変わらず引き継がれ、男たちは撃ち、撃たれる。 本書では子供の姿をした幽霊がジョーの視界に頻出するし、彼には9歳になる息子がいる。子供たちの世界を巻き込んでの暴力闘争というところに、普通の親なみの痛みを覚え、悩む主人公は、作者がならではの、勧善懲悪ではない、善と悪の間を行き来するしかない弱い人間たちの象徴であるかに見える。原罪を持つ人間たちのカルマのようなものが小説をドラマティックに構築しているように見える。 人間の命がごみのように扱われ、せっかく生まれた者たちが、いともあっさりと消えてしまう世界。手軽に持ち運びされ得る人間の運命、もしくは死体。そんな過酷な世界に身を置く者たちの極度の日常世界。それは、我々の遥か遠くにあるようでいて、実は隣り合った場所にこっそり紛れ込んでいるような世界であり、それはもしかすると一般社会にも容易に入り込んで来るかもしれない重たい駆け引きで糾われる残酷な絵巻の世界であるのかもしれない。 そうであれば、むしろ本書の世界は、過ぎ去らざる世界であるのかもしれない。警鐘は鳴り響き、そして今に続いているのかもしれない。
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一気読み。「夜に生きる」を直接受けて、その7年後が描かれる。「夜に~」は、三部作最初の「運命の日」に感じた冗長さがまったくなく、抜群におもしろかったが、これもそれに勝るとも劣らない傑作。 圧倒的なリーダビリティで、エンタメ度は高いけれど、そこにとどまらないものがある。あっけなく...
一気読み。「夜に生きる」を直接受けて、その7年後が描かれる。「夜に~」は、三部作最初の「運命の日」に感じた冗長さがまったくなく、抜群におもしろかったが、これもそれに勝るとも劣らない傑作。 圧倒的なリーダビリティで、エンタメ度は高いけれど、そこにとどまらないものがある。あっけなく、さして意味もなく人が死に、信じていたものには手ひどく裏切られ、愛するものは弱みとなる、そうした現実が世代を超えて連鎖する世界。それが甘さのカケラもなく描かれるのに、全篇にどうしようもない切なさが漂っていて、そこがルヘインの大きな魅力だ。 ギャングの世界など垣間見ることもない無縁なものなのに、ここまで真に迫って感じられるのはどういうわけか。まるで実際に映像を見ているような感覚にしばしば陥った。ジョーが殺し屋テレサと刑務所で会うシーン、やはり殺し屋であるコヴィッチの家を訪れたときの緊迫した描写(一つ一つの動きが目に見えるよう)、そして何と言っても圧巻は、終盤近くジョーが飛行機で脱出しようとする場面。飛行機のエンジン音や叫び声まで聞こえてきそうだ。 ラストはやはり、これしかないだろうという結末。これぞルヘイン。しかし、「次世代」が(まだ生まれていない子も含めて)何人も登場していたわけだから、パトリック&アンジーシリーズにまさかの完結編があったように、次作があるかも、と期待してしまう。 (この後あの「犬の力」の続篇「カルテル」を読もうと思うのだけど、うーん、しばらくこの余韻に浸りたい気もする)
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「夜に生きる」の続編。 緊迫感に溢れているのは前作同様。 主人公と息子の親子の物語でもあり、その2人の関係性のぎこちなさがなんとも言えない。 今回もすこい作品。
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デニス・ルヘイン最新作。 前作に続くノワールものだが、ギャング云々よりも、人間ドラマの方に焦点が当てられている。血腥さは薄め。
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