日本の聖と賤 近世篇 の商品レビュー
本書の冒頭で沖浦和光は、瀬戸内の鞆の浦の「海の民」の家に生まれたことから、瀬戸内海を活動の舞台とした村上水軍の歴史を語り、さらにサンガ、木地師、タタラ者といった「山の民」の考察へと議論が移っていきます。 次に江戸時代の文化がとりあげられています。元禄文化にかんしては、歌舞伎や人...
本書の冒頭で沖浦和光は、瀬戸内の鞆の浦の「海の民」の家に生まれたことから、瀬戸内海を活動の舞台とした村上水軍の歴史を語り、さらにサンガ、木地師、タタラ者といった「山の民」の考察へと議論が移っていきます。 次に江戸時代の文化がとりあげられています。元禄文化にかんしては、歌舞伎や人形浄瑠璃を中心に、井原西鶴、近松門左衛門らの仕事が簡潔に紹介されたあと、中世末期の雑芸能から近世における門付芸、大道芸の考察がなされています。また化政文化にかんしては、歌舞伎の四代目鶴屋南北、浮世絵の東洲斎写楽、黄表紙や読本、洒落本などがとりあげられ、さらにそうした文化事業を支えた蔦谷重三郎の役割に注目して、これらの文化を支えた民衆の生活や社会意識にまで話がおよんでいきます。 こうして著者たちは、日本の文化を貴族文化、武士文化、町人文化、賤民文化の四つの層に分けることを提唱します。この分類の特徴は、町人文化と賤民文化を区別して考えるところにあるといってよいでしょう。賤民文化の特異で突出したありかたが、制度化された既成の文化を突き破り新しい時代を切り開いていく推進力をもっていたことに注目し、そうした視座から日本の近世文化のダイナミズムを見ることが、著者たちのもくろみだったではないかと考えます。
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「海の民」・「山の民」・河原者芸能と項目を分けつつ、今まであまり論じてこられなかった被差別民の暮らしについて論じた本。半分資料。山の民の生活についてが大変勉強になる。
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