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江戸しぐさの終焉 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2019/02/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

“それにより私たちは、たった一人の人物の空想がマスコミを味方につけて次第に社会的影響力を強め、ついには文部官僚を介して公教育まで侵食するに至った実例を目の当たりにすることになった。”(159ページ) に尽きる。 著者が偽書の専門家であり、と学会メンバーでもあるというのがおもしろい。通常いわゆるトンデモ本というのは、あまりにも常識からかけ離れたようなトンデモない内容の書物をとにかくツッコミまくって笑いながら語られるものだが、この「江戸しぐさ」の場合は、そこで語られている内容そのものは(歴史的事実がない想像の産物であるということを除けば)それほどトンデモなわけではない。それよりも冒頭に挙げたようにそれがどのように信奉され、受け入れられ、広がってしまったか、そちらのほうがトンデモである。つまり一個人による著作内容というよりは、それを取り巻くさまざま人たち自体がトンデモであるという、ちょっと変わった事例である。 その意味では「江戸しぐさ」を考案した芝三光にも罪はあるが、それを取り巻く人々、さらにはそれをきちんと検証もせずに教育の現場に取り入れた文科省関連(の無責任ぶり)などのほうが興味深い。 偽史という点から見ればかなり新しい部類のものであり、それを丹念に調べ上げていく著者の努力は一読に値する。しかし一方で、端々にと学会っぽい(やや相手を小馬鹿にしたような)ツッコミのニュアンスがにじみ出ているのが残念。この書ではそうしたところは封印して、徹底的にクールに攻めていってほしかった。

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2016/10/21

さすがにもう江戸しぐさのことは書き尽くしたんじゃないか、と思ってたら、まだあったんだねえ。「親学」なんていうオカルトも取り上げてるけど。 江戸しぐさ、一連の書籍では完全に論破されているけれど、現実はまだまだ見かけるからねえ。教育現場とか。 もうしばらく、著者には地道に戦ってほし...

さすがにもう江戸しぐさのことは書き尽くしたんじゃないか、と思ってたら、まだあったんだねえ。「親学」なんていうオカルトも取り上げてるけど。 江戸しぐさ、一連の書籍では完全に論破されているけれど、現実はまだまだ見かけるからねえ。教育現場とか。 もうしばらく、著者には地道に戦ってほしい。

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2016/05/04

前著「江戸しぐさの正体」の与えたインパクトがその後、どのように波及したか。文科省の無責任、学者の放置、TV業界の低感度による蔓延。プライドと権力を持つ人がコロッと騙された時、その後の対応は本性を現す。誤りを認めるか、知らん顔で引っ込めるか、頑なに認めないか。 信じたくなるファン...

前著「江戸しぐさの正体」の与えたインパクトがその後、どのように波及したか。文科省の無責任、学者の放置、TV業界の低感度による蔓延。プライドと権力を持つ人がコロッと騙された時、その後の対応は本性を現す。誤りを認めるか、知らん顔で引っ込めるか、頑なに認めないか。 信じたくなるファンタジー。その気持ちはとてもよくわかるが大人なら事実を見据えよう。現実解としては、採用した者の責任は問わない。ただ「これ、嘘でした」と認めて引っ込めれば良い。現在の日本礼賛の風潮とからめて、内容そのままに、江戸時代ではなく現代日本人の所作として「クール・ジャパン・マナーw」とでもすればいいんじゃないか。 偽史・捏造であることを知る第一段階。嘲笑する第二段階。信者を啓蒙しようとする第三段階。蔓延を憂い、現実的に終息を目指す第四段階。カルトが最も嫌がるのは「笑われること」だという。権力者には嘲笑を、信者には正しい情報を。 サムシング・グレートがインテリジェント・デザインの模倣だとは思っていたが、提唱者が天理教だったとは。さらに、親学の主唱者で安倍首相のブレーン説もあるとは、オバマがホメオパシーにはまるようなもんだな。 江戸しぐさを、石器のゴッドハンド事件になぞらえるのは非常に興味深い。辿った・辿るだろうプロセス「普及・蔓延(マスコミの加担)・捏造発覚・その後の責任逃れ」。チェック機構と責任を明らかにする仕組みが無い官僚機構がどれだけ国の信用を損なうか。

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2016/03/07

「江戸しぐさ」って最近よく名前をよく見るけど実態がさっぱりわからず、知りたいが為に購入したのが「江戸しぐさの正体」。本書はその続刊にあたります。 疑似科学で終わるならともかく、文科省のお墨付きをいただいてしまい、小学校の教科書にまで掲載されてしまうという現状を指摘したのが前書で...

「江戸しぐさ」って最近よく名前をよく見るけど実態がさっぱりわからず、知りたいが為に購入したのが「江戸しぐさの正体」。本書はその続刊にあたります。 疑似科学で終わるならともかく、文科省のお墨付きをいただいてしまい、小学校の教科書にまで掲載されてしまうという現状を指摘したのが前書でした。その後は文科省でも見直される兆しはあり、教科書からは削除されつつあるとのこと。1冊の本が直接の原因かはわかりませんが、これだけの動きがあるというのは正直驚きでした。 最近は伝統や伝承と言った物自体がよく取り上げられる時代だなと思います。ネットがもはや当たり前以上の物になった現代ならではのことです。体育祭での学生による組み体操や、武士道についてもよく名前を見ます。伝統、伝承のために大きな事故になったり、誰かが不幸になったりというのであれば、見直す余地も必要なのかな、と思います。江戸しぐさについてはちょっと性質は違いますが、いいことだから、伝統や伝承だから、ということですぐ受け入れてしまうのは時として看過できない問題になるということがわかった1冊でした。

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2016/02/29

出ました「江戸しぐさ」批判第二弾。 前著をがっつり読み込んだことと、その後もジセダイのサイトで連載されていたものを読んでいたせいか、新鮮!と思った部分は案外多くはなかったが、“親学”にまで斬り込んでおられるのはさすがだと思った。“現代の”江戸しぐさに親学、さらにはEMに水伝、ゲー...

出ました「江戸しぐさ」批判第二弾。 前著をがっつり読み込んだことと、その後もジセダイのサイトで連載されていたものを読んでいたせいか、新鮮!と思った部分は案外多くはなかったが、“親学”にまで斬り込んでおられるのはさすがだと思った。“現代の”江戸しぐさに親学、さらにはEMに水伝、ゲーム脳などが関係しているところまで踏み込んでいるのは著者ならでは(その分、前著であちこちに散りばめられていたヲタ系ネタが一切なくなってしまったのは個人的には少しだけ残念)。 創始者である“夢見る老人”の妄想世界がいかにしてメディアや教育界に食い込んでいったかは蓋を開けてみればそんなに突飛なものではないのだが、それだけに本書を読むと「一見良さげで道徳的顔を見せ、キャッチーな仕掛けをすることで人はこんなにも簡単に虚偽を信じてしまえるのか」という怖さを感じる。 様々な場面で見聞きする、教育行政の不誠実さも個人的に頭が痛いところで、文科省が最後まで知らぬ存ぜぬを通したまま“なかったこと”にした結果、一種宗教じみた教えとしての「○○しぐさ」が地方単位で残っていくことを危惧してしまう(田舎は中央の情報が10年単位で遅れて入ってくるし)。うう怖い。 極めて重箱の隅なのは承知の上で、自分の立場から“親学”に関連して発達障害に触れたくだりにいくらか加えておきたい。 ①著者が触れた澤口氏の著書では診断名等がまだDSM-4のものになっているが、現在では各診断名がDSM-5に準じたものと変わっている旨が注記されていると有難い。本書は刊行されたばかりであり、今後長く読まれていくと考えられる。その点を考えると、刊行された時点で診断名変更後であることの明記は必要なのではないだろうか(例:精神分裂病→統合失調症) ②発達障害について、適切な医療的対応や社会の理解が必要というのが通説であるという主旨のくだりがある。しかし、医療が積極的に関わるのは診断名をつける段階と投薬治療(二次障害および多動に対する対症療法)であり、現在ではむしろ母子保健行政での早期発見と早期療育、就学後は適切な教育的配慮が中心となっている。今春から公共機関において「合理的配慮」が義務化されることを考えると、ここは正確な記述をお願いできるとありがたいと思っている。 著者はあくまで歴史の研究家なので「親学」などは本来は守備範囲外なのだろうけれど、第三弾はぜひ、より深く斬り込んでいただけないだろうかと思った。

Posted byブクログ