夏に凍える舟 の商品レビュー
スウェーデンとは橋続きのエーランド島。20世紀初頭に生まれたイェルロフとアーロン。イェルロフは船乗りに、アーロンは?・・・・ 21世紀になろうとする今夏、アーロンは帰ってきた。義父とともに渡った”新しい土地”から。ミレニアムの夏の、帰ってきた老人と、南のフロム家一族の少年ヨーナス...
スウェーデンとは橋続きのエーランド島。20世紀初頭に生まれたイェルロフとアーロン。イェルロフは船乗りに、アーロンは?・・・・ 21世紀になろうとする今夏、アーロンは帰ってきた。義父とともに渡った”新しい土地”から。ミレニアムの夏の、帰ってきた老人と、南のフロム家一族の少年ヨーナス、そしてイェルロフの長いひと夏の出来事。”新しい土地”で過酷な歴史の中に漂った、泳いだ、アーロンの人生が胸をしめつける。 ヨハン・テリオンは「黄昏に眠る秋」を少し読んで放り投げてしまっていた。が、これは最初からぐいぐい引き込まれた。なんといってもアーロン。20世紀を生きたある男の断面、をアーロンに見た。設定が21世紀になろうとする夏、ということで、老人二人と片や11才のヨーナス、人生の終盤と、さあこれからだ、という対比にぐっとくる。 土地持ちのフロム家のリゾートを中心に、関係者の行動が2,3ページつづ人物の見出し付きで綴られるのでわかりやすい。イェルロフ、ヨーナス、”帰ってきた男” リゾートで働くリーサ。並行して昔の出来事が1931年七月、あたらしい国、とか年月日がついて語られる。 たら? れば? は歴史では言ってはいけないというが、アーロンの人生を思うと、新しい国に行かなければ? 義父が別の考えだったら? と思ってしまう。でも妻と娘には恵まれたのでそれが救いだ。 2013発表 2016.3.15発行 図書館
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この土地の夏だからか、登場人物は多い。そして重くつらい過去が現在に影を落としている。相変わらずイェルロフおじいちゃんの頭は冴えていて、周りの人の手を借りながらうまく立ち回る。最後のほう、とてもさみしかったが、”それはまだだよ”と言われているようで、心が温かくなった。表紙絵は暗示し...
この土地の夏だからか、登場人物は多い。そして重くつらい過去が現在に影を落としている。相変わらずイェルロフおじいちゃんの頭は冴えていて、周りの人の手を借りながらうまく立ち回る。最後のほう、とてもさみしかったが、”それはまだだよ”と言われているようで、心が温かくなった。表紙絵は暗示している。でも事件は予想外の派手さだった。
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エ-ランド島に行って見たくなります。 情景描写が緻密で、作品の中に入り込んでしまいました。 話は独立しているけれど、1作目から読むのをお勧めしますよ。
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エーランド島最終章。 犯人は20世紀初頭、義父と真天地を求めてソビエトに発った老人だ。極寒のシベリアや暗いKGB時代と、夏の賑わいをみせるリゾート地での出来事が交互に語られる。イエルロフの鋭くも愛のある眼差しが、事件を少しずつ紐解いてゆく。
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何か読んだことがあると思ったら、シリーズ作で2作品を読んでいた。ミステリー度もあるが、かつての北欧が関わった歴史をよくしることが出来たし、年老いた人間の心情にも深く触れた。スターリンの恐怖政治、知ることが出来た。
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エーランド島ミステリー四部作の最終話「夏」 シリーズ中最も賑やかなエーランド島で、舞台となるリゾート地もにぎやか。 対照的に描かれるのは、20世紀に出現した「ソビエト連邦」という国の内情。 希望と絶望の果てにひたすら「帰る」ことを夢見てきた一人の男の物語は、シリーズ中最も重い...
エーランド島ミステリー四部作の最終話「夏」 シリーズ中最も賑やかなエーランド島で、舞台となるリゾート地もにぎやか。 対照的に描かれるのは、20世紀に出現した「ソビエト連邦」という国の内情。 希望と絶望の果てにひたすら「帰る」ことを夢見てきた一人の男の物語は、シリーズ中最も重い。 あんなに強大だったのに既に歴史地図にしか載らない「過去の国」。 でも、そこで行われた史実は、関わった人の記憶と共に生きている。 人にとって「帰るべき所」とはなんだろう。 終盤で、エーランド島から離れる船を前に娘は「父さん帰ろう」と言う。父にとっては「帰ってきた」場所から再び離れることになるのに……。 ラスト、イェルロフの乗る舟をエーランド島に「帰す」風とカモメたちが、彼を絶望から救い出す……あのまま終わらずによかったです。 これで春夏秋冬に合わせて全編終了しました。 変わらないこの島の自然や不思議な出来事を背景に登場人物の心の旅を描く、とても印象に残るシリーズでした。
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エーランド島四部作完結編(うっかり三作目を飛ばしてしまった。。)。 老齢探偵イェルロフの遠い昔、少年時代の恐怖体験に始まり、現代の少年の幽霊船との遭遇、意味深な男のきなくさい帰郷。 序盤は物語がどこへ向かっているのかわからず、遅々とした展開。 次第に動き出す物語にいつしか引き込まれている自分に気づく。スウェーデンとロシアの関係性、大戦中の悲劇を重低音として現代で繰り広げられる復讐劇。 帰郷した男アーロンの人生を時間をかけて振り返り、人物像を積み上げていく過程が肝と感じた。 ちょっと地味だけど、どこか没入させられる静かな典型的な北欧ミステリ。 嫌いじゃないです。
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エールランド島4部作ここに無事読了。 シリーズ通してのキーパーソン(主人公ではないが、ある意味主人公以上のホームズ役)イェルロフが、作を重ねるごとにどんどん老いていったので、オーラスにイヤな予感がしたのだが、まさかそっちが!って終わり方。 シリーズ中もっともにぎやかな作品になったかもしれない。エールランド島は短い夏のお祭り騒ぎを迎えて、リゾート施設では大騒ぎがありーの、その施設で働く人々のバタバタがありーの。 一方で、幽霊船騒ぎがあって、伏線にはスターリンがライバルに打ち勝って以降崩壊に至るまでのソ連があって。 複数の人物による視点で物語が語られ、それが微妙に交差しつつ進められていく物語は見事。お祭り騒ぎでありながらも、丁寧に文章を連ねて味わい深い小説を築き上げるテオリンのすごさ、その雰囲気を損なうことなく日本語に訳してくれた三角和代さんの翻訳力のすごさ。 この作品以降、テオリンの小説が刊行されていないのが残念。シリーズ番外編でもまったく別のものでもいい。もっともっとテオリンの作品を読んでみたいのだ。
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スウェーデン、エーランド島シリーズ四部作最後。島のリゾートを経営するクロス一家、その末っ子クロス、島へ帰ってきた男、主人公元船長のイェルロフ、それぞれの場面が入れ替わりながら進む。これまでの三部作は、季節のせいもあるだろうが、静かだった。でも今回は、夏で、夏至祭りで、島にはたくさんの観光客が来て賑やかだ。イェルロフもこの時期は老人ホームから元別荘の自宅に帰ってきて、親友ヨンとおしゃべりする。 島に帰ってきた男の回想部分にはたまげた。アメリカだと思ってたのに、ソ連とは…。継父はすごい嘘?つくなー。そこからの生き方もすごい。シリーズ最後を飾るのに十分な登場人物だった。
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シリーズ4作とも、とても面白かった。美しい北欧の島を背景に、土地の言い伝えを交え、過去と現在が交差する物語がスリリングに展開。4作を通して探偵役を務める老船長の人柄が素敵で、味わい深いミステリーシリーズになっている。 現在の北欧というと、今まで読んだ本や見たドラマでは、もっと暗く...
シリーズ4作とも、とても面白かった。美しい北欧の島を背景に、土地の言い伝えを交え、過去と現在が交差する物語がスリリングに展開。4作を通して探偵役を務める老船長の人柄が素敵で、味わい深いミステリーシリーズになっている。 現在の北欧というと、今まで読んだ本や見たドラマでは、もっと暗くて荒んだイメージだったから、そうでない一面を感じられたのも良かった。
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