愛国と信仰の構造 の商品レビュー
戦前の皇室祭祀は、ほぼ全部明治維新後に定められた。 復古と言いながら、明治政府の存在理由の権威付けにすぎない。 「伝統」は、政権の統治のあり方に基づいて発明される。 革新左翼は人間が理性を使って正しく設計すれば、未来はよい方向に変革できると考える。右翼は、人間の理性だけでは、理...
戦前の皇室祭祀は、ほぼ全部明治維新後に定められた。 復古と言いながら、明治政府の存在理由の権威付けにすぎない。 「伝統」は、政権の統治のあり方に基づいて発明される。 革新左翼は人間が理性を使って正しく設計すれば、未来はよい方向に変革できると考える。右翼は、人間の理性だけでは、理想社会は実現できると考えず、長い歴史の中で蓄積された経験や伝統といった「人智を超えたもの」を重視するべきと考える。ありもしなかった過去のよき社会を復古させることができれば、ユートピアを実現できると。 何が無謀な戦争に向かわせ、国民の自由を奪っていったのか、しっかりと自覚できていない。ゆえに「憲法を押し付けられたせいで、日本は主体性を失ったから、憲法を改正し、明治の体制に戻れば、本当の強い日本を取り戻せる」という単純な議論が罷り通る。長州という通奏低音が響く自民党は、戦後レジームの解体などと言いながら、アメリカ追従という矛盾に満ちたことをしている。
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第1章 戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか 第2章 親鸞主義者の愛国と言論弾圧 第3章 なぜ日蓮主義者が世界統一をめざしたのか 第4章 国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教 第5章 ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走 第6章 現代日本の政治空間と宗教ナショナリ...
第1章 戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか 第2章 親鸞主義者の愛国と言論弾圧 第3章 なぜ日蓮主義者が世界統一をめざしたのか 第4章 国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教 第5章 ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走 第6章 現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム 第7章 愛国と信仰の暴走を回避するために 第8章 全体主義はよみがえるのか 著者:中島岳志(1975-、大阪府、政治学者)、島薗進(1948-、東京都、宗教学者)
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明治維新以降の150年のうち、前半の75年と後半の75年で同じような道をたどっているとのことだ。富国強兵に向かっていることか。それにしても中島氏はいろんなことをよく知っている。大学教授はみなこんな感じなのだろうか。
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全体として、肯ける議論が展開されている。宗教各派や国家主義者の思想、論理は私には理解しきれないのだが、それは別として、二人の著者の真摯な議論は傾聴すべき内容だ。 国家と個人の間に存在する、中間的社会団体としての宗教団体の果たす役割りに着目する、という指摘は最もだけれども、宗教...
全体として、肯ける議論が展開されている。宗教各派や国家主義者の思想、論理は私には理解しきれないのだが、それは別として、二人の著者の真摯な議論は傾聴すべき内容だ。 国家と個人の間に存在する、中間的社会団体としての宗教団体の果たす役割りに着目する、という指摘は最もだけれども、宗教団体以外の団体も同様に重要だろうと思う。
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右翼の歴史に詳しい政治学者中島氏と国家神道に詳しい宗教学者島薗氏による対談。とても勉強になったし、共感する部分も多かった。特に「現代の右翼が考える”伝統”とは、明治時代に政治主導で作られた伝統でしかない」という指摘は、今までもやっとしていたものを言語化してくれたように感じた。
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発売された当初から読まなきゃと思っていたが、3ヶ月足らず経ってしまった。 私が勉強を進めようかどうしようかと門の前をウロウロしている仏教、特に親鸞聖人の教えが、戦前の全体主義につながっていった、ということを、常に注目している中島岳志さんが対談されているということで、読まないわけ...
発売された当初から読まなきゃと思っていたが、3ヶ月足らず経ってしまった。 私が勉強を進めようかどうしようかと門の前をウロウロしている仏教、特に親鸞聖人の教えが、戦前の全体主義につながっていった、ということを、常に注目している中島岳志さんが対談されているということで、読まないわけにはいかなかった。 賢い人が2人寄ると、賢いことになるなあと感心しながら読んだ。 新書の対談本ということで、私のような基礎的な知識のないものにも、わかりやすく書かれていたのが良かった。といっても、あまりにも無知なので、スマホ片手に、人名や仏教用語、歴史的事件など、検索しながら、できるだけたくさん検索結果をたどりながら読み進めた。 たくさんの知識を得、いろいろと考えさせられ、いい読書時間を過ごせた。 自分の中で、また次につながっていく。 私にとって、あまりにも内容が盛り沢山すぎて、感想がまとまらないが、特に近代日本150年が、75年サイクルで繰り返しになっているという指摘(もともとは大澤真幸さんの指摘)には愕然となった。
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宗教と政治の話はタブー。 それが、常識かのように刷り込まれて大人になってしまった気がする。 公の場で話題にすることを避けてきたから、わからないことはそのまま。「なぜ?」と思うことも、聞くこともなかった。でも、知らないままでいることはとても危険だ。 第二次世界大戦の状況に似ていると...
宗教と政治の話はタブー。 それが、常識かのように刷り込まれて大人になってしまった気がする。 公の場で話題にすることを避けてきたから、わからないことはそのまま。「なぜ?」と思うことも、聞くこともなかった。でも、知らないままでいることはとても危険だ。 第二次世界大戦の状況に似ていると言われる現代の日本。 同じ過ちを繰り返さないためには、歴史を引き受けることだ。 「宗教」と「政治」について向き合うための必読書。
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お二人の研究への入口が、学園紛争やベトナム戦争、阪神淡路大震災やオウム真理教事件から受け取った衝撃や周囲との違和感であったように、生きていく中では共感や違和感の繰り返しであるなとつくづく思ったことと、宮沢賢治も、天皇機関説も、秋葉原事件も、伊勢神宮も、靖国神社も、新宗教も同じ文脈...
お二人の研究への入口が、学園紛争やベトナム戦争、阪神淡路大震災やオウム真理教事件から受け取った衝撃や周囲との違和感であったように、生きていく中では共感や違和感の繰り返しであるなとつくづく思ったことと、宮沢賢治も、天皇機関説も、秋葉原事件も、伊勢神宮も、靖国神社も、新宗教も同じ文脈でどんどん整理されていく展開をおもしろく読みました。
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中島は昭和初期の煩悶青年や日蓮主義親鸞主義からつながる全体主義、 島薗は国体論や国学からつながる全体主義を語る。第二次世界大戦へとむかう宗教とナショナリズムの関係を俯瞰するうえで非常に見通しのいい地図を与えてくれる。
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歴史は繰り返す。今は戦争前の状態によく似てる。 宗教が全体主義と結びついて超国家主義へと向かった。
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