谷崎潤一郎 の商品レビュー
230903*読了 谷崎潤一郎さんの小説ってこんな風だったのか。初めて読むので、すべてが新しく感じた。 あまりにも有名な人なんだけれど、なかなか手をつけられないでいた。 「乱菊物語」から始まる全集。夢中で読んでいたのに、え、前編で終わり!?そんなことってある?ここからがおもしろ...
230903*読了 谷崎潤一郎さんの小説ってこんな風だったのか。初めて読むので、すべてが新しく感じた。 あまりにも有名な人なんだけれど、なかなか手をつけられないでいた。 「乱菊物語」から始まる全集。夢中で読んでいたのに、え、前編で終わり!?そんなことってある?ここからがおもしろいに決まってるやん。とがっかりしていたら、なんと本当に未完のままとは…。 「吉野葛」「西湖の月」はエッセイと間違うほどにリアルだったし、「蘆刈」も最後の方までは実話だと思っていた…。 本当のようでフィクションとは、してやられたり。 「厠のいろいろ」こそがエッセイなのだけれど、ここまでリアルにトイレのこと、しかも当時は水洗式じゃないトイレについて書くなんて…そこはリアルを追求しなくても…。 巻末の解説や年表を読むに、谷崎さんは多作な人であり、恋愛沙汰も多く、2回も離婚している。 恋愛を小説にし、小説のために恋愛するような。人生すべてが小説と結びついているような、そんな人生を歩んだ人なのだ。そして、引越ししすぎでは…。気が休まらないように思える。けれど、それもまた小説の糧になったはず。
Posted by
『春琴抄』『痴人の愛』『瘋癲老人日記』『陰翳礼讃』といった傑作・佳作が収められてないのがおおいに不満である。谷崎潤一郎の全集としてはお薦めできない本だ。筑摩の日本文学全集の方をお薦めする。『蘆刈』『吉野葛』の掲載は評価できる。これも再読だが、『厠のいろいろ』で知人が名古屋は「なか...
『春琴抄』『痴人の愛』『瘋癲老人日記』『陰翳礼讃』といった傑作・佳作が収められてないのがおおいに不満である。谷崎潤一郎の全集としてはお薦めできない本だ。筑摩の日本文学全集の方をお薦めする。『蘆刈』『吉野葛』の掲載は評価できる。これも再読だが、『厠のいろいろ』で知人が名古屋は「なかなか文化が進んでいる、市民の生活程度も大阪や京都に譲らない、自分はそれを何に依って感じたかと云えば、方々の家へ招かれて行った時に、厠の匂を嗅いでそう思った」とあるのは苦笑する。さすが潤一郎さんだ。おそらく潤色ある記述でおもしろい。
Posted by
谷崎潤一郎氏の著作をたぶん読んだことがありませんでした。 文章の量・一文に含まれる単語の量が多く、なかなか 読むのが辛いところもあるのですが、読み進めていくと のめりこんで、面白く読み進められていく内容でした。 『乱菊物語』は、やはり続きが読みたくなります。 エンターテイメント性...
谷崎潤一郎氏の著作をたぶん読んだことがありませんでした。 文章の量・一文に含まれる単語の量が多く、なかなか 読むのが辛いところもあるのですが、読み進めていくと のめりこんで、面白く読み進められていく内容でした。 『乱菊物語』は、やはり続きが読みたくなります。 エンターテイメント性が高く、非常に面白い内容です。 『吉野葛』『蘆刈』は、谷崎氏の女性感みたいなものが わかるような気がします。 収録されているものすべてにおいて、物語性がすごく 濃い内容で面白いと思います。 細雪なども読んでみようかと思いました。
Posted by
何年か前から大谷崎の乱菊物語を読みたくて中公文庫を注文したら品切だった。諦めて全集を図書館で借りようと赴いたら日本文学全集の谷崎潤一郎があったので手に入れた。 今どき3千円前後の価格で文学全集を出版するとなると作家抱き合わせで妙録だらけになるのは明白なのだが、割と好きな作家リス...
何年か前から大谷崎の乱菊物語を読みたくて中公文庫を注文したら品切だった。諦めて全集を図書館で借りようと赴いたら日本文学全集の谷崎潤一郎があったので手に入れた。 今どき3千円前後の価格で文学全集を出版するとなると作家抱き合わせで妙録だらけになるのは明白なのだが、割と好きな作家リストではある。何より谷崎を1人で一冊にしたのは評価できる。しかも乱菊物語は谷崎からすれば本流から外れた趣味で書かれた作品に近い。書いてしまえは紛れもなく谷崎潤一郎そのものだが、伝奇小説の宿命か全体の半分もいかないまま未完である。 追記……解説には大阪朝日新聞に連載。中断の理由は谷崎の離婚再婚のため、屋島諸島の島民からクレームが挙がったため…と記されている。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
何といっても「乱菊物語」の面白さに尽きる。これほど面白いと思った小説はあまりないと感じたほどだ。前編で唐突に終わってしなっているにも関わらず、である。
Posted by
痴人の愛位しか読んだことなく、特に好きでもなかったのですが、この間弥生美術館の展示を見て、あと森博嗣の本の冒頭で、ちょっと気になり。 乱菊物語。 普通の作品だったら、もっと時代小説ぽくなるのでしょうが、そこがエンタメになっていて、少女と女性が全く古臭くないとこが、もしかして谷崎...
痴人の愛位しか読んだことなく、特に好きでもなかったのですが、この間弥生美術館の展示を見て、あと森博嗣の本の冒頭で、ちょっと気になり。 乱菊物語。 普通の作品だったら、もっと時代小説ぽくなるのでしょうが、そこがエンタメになっていて、少女と女性が全く古臭くないとこが、もしかして谷崎のすごいとこなんだろうか…と初めて気付きました! ちらっと出てくる遊女に姫君の姪御の描写やら、果ては戦闘の似合うカップルと、あれ、これが文豪の描写力のすごさなのか、と。 陽炎御前と海龍王にぐっときて、これからこの二人の話に移るのね…というところで…。谷崎おめ最後まで書きゃあ!と内心叫びました。 鏡花ほどではないまでも、生身ながら割と霊性な女性の描写で谷崎を見直しました。 吉野葛。 普通の文章ながら割と鏡花の母恋の崇高さに近いんじゃん、と。(どこまで上から、且つ鏡花基準…) 蘆刈。 もうね、どんだけ理想の女性なの! 初めて森博嗣以外の小説で紅子さんらしさを感じ、こんな昔っから紅子さん並みの女性を描いてたのね、とこれまた谷崎を見直しました。(基準!)
Posted by
この本の半分以上を占める[乱菊物語]は 未完成の作品で前編しか読むことができないのが残念だが、完成していれば政村の生涯から見て悲劇で終わる結末になっていたのだろうか? 未完とはいえ流石に谷崎潤一郎だけあって大衆文学も素晴らしく面白い。
Posted by
・何かと物議を醸してゐるらしき池澤夏樹=個人編集「日本文学全集 15」(河出書房新社)は 谷崎潤一郎である。私が一瞬「残菊物語」かと思つてしまつた「乱菊物語」を中心に、「吉野葛」「蘆刈」等を収める。谷崎を全集で読むなどとは考へたことも ないので、私は谷崎全集の全貌を知らない。従つ...
・何かと物議を醸してゐるらしき池澤夏樹=個人編集「日本文学全集 15」(河出書房新社)は 谷崎潤一郎である。私が一瞬「残菊物語」かと思つてしまつた「乱菊物語」を中心に、「吉野葛」「蘆刈」等を収める。谷崎を全集で読むなどとは考へたことも ないので、私は谷崎全集の全貌を知らない。従つて、「乱菊物語」などといふ作品も知らなかつた。これは「残菊物語」の姉妹編か何かかと思ふほどの無知である。だから、これを収めることを一種の英断ととらえる人がゐる一方で、こんな作品を中心に編むなといふ人がゐるのも、私には全く分からないことである。全集には編集者の個性が出てゐて良いと思ふものの、収める作品には一定の質は必要だよなとごく常識的なことを考へるのが関の山、ならば読んでみようと「乱菊 物語」を読むことにした。 ・この作品は大衆小説ブームの昭和5年に新聞に連載されたが、上のみで未完。それでも本書の三分の二を占める。読後感はおもしろいの一言、見事なエンター テインメントであつた。難しい理屈はいらない。谷崎にもこんなのがあつたのだと思ふばかりである。物語は「二寸二部四方の筺の中へ収まる十六畳吊りの蚊帳」(11頁)と美女かげろうを中心に展開してゐるらしい。あちこち横筋に入つていき、いろいろな人物が登場するので、おもしろくはあつても本筋を忘れてしまひさうである。そこは新聞連載大衆小説といふことであらう、細かいことにはこだはらずに筆のおもむくままに書かれていく。そんな中に谷崎らしい語彙や語法が散りばめられてゐる。その反面、人物造形はいかにもそれらしい人物ばかりといふ気がする。机龍之介や早乙女主水之介のやうな特異なヒーローは現れてゐない。この先に出てきさうな気もするが、未完である、谷崎がさう展開するつもりであつたかどうか。こんなのが出てきた後に本書では「吉野葛」と「蘆刈」 が来る。昭和5年と7年の作、つまり「乱菊」とほぼ同じ頃の作品である。ところが雰囲気も文体も全く違ふ。その落差(と言つては失礼か)に驚く。片や所謂純文学、片や大衆小説、この差に尽きるのだらうが、それにしても谷崎はこの2種を実に手際よく書き分けてゐる。さすが谷崎、プロの物書きである。「吉野葛」「蘆刈」に初期作の雰囲気はない。「吉野葛」はエッセイかと思はれる雰囲気に終始する、ハッピーエンドの優れた作品である。「蘆刈」はその文体の息の 長さに改めて驚く。本当に久しぶりに読み直した。これも良い作品である。男のいつ終はるともしれない話しぶりは読んでゐて疲れる。しかし、あの内容にはああいふ話し言葉の息の長い文体が必要なのである。相手は世間離れしたお姫様である。お姫様のことを普通の男が普通に話したのでは普通のお話にしかならない。へたをすれば大衆小説にもならない。谷崎は「源氏」あたりを考へながらあんな文体であの物語を書いたのであらう。それでこそあの夢幻ともつかぬ物語が 可能になる。あの雰囲気に明晰さは不要である。これはつまり大衆文学の単純明快を求める雰囲気とは逆である。同じ頃にあんな全く違ふ内容と文体の作品を谷 崎は書いてゐたのである。本書の第一の利点はここにある。誰も見向きもしないやうな大衆文学の未完作を中心に一巻を編む。しかもほぼ同じ頃の有名作をそこ に入れる。この落差を確認するのは実におもしろい。作家の多様性を手つ取り早く知ることができる。かういふ文学全集の一巻は、時に個人全集に優るおもしろさをもつ。そんなわけで私は本書をおもしろく読んだ。惜しむらくは「乱菊物語」が未完であつたこと、事情があるらしいが残念であつた。どこかから完結編が出てこないか……。
Posted by
あまりに多才で多面的なこの作家の全容はとても一巻には収まらない。それならば最も物語性に富んだものを。
Posted by
- 1