無垢の領域 の商品レビュー
違う人間の価値観で作られる違う人生が混ざり合う物語。 小説は1つの事件に全員が巻き込まれる形式が多いけど、この作品はそれぞれに事件がある中で全員がゆるく絡み合い、人生、という感じがした。 自分の卑屈さを紛らわすために、より惨めになりたい気持ち。 自分の冷たさに気づかないように傷...
違う人間の価値観で作られる違う人生が混ざり合う物語。 小説は1つの事件に全員が巻き込まれる形式が多いけど、この作品はそれぞれに事件がある中で全員がゆるく絡み合い、人生、という感じがした。 自分の卑屈さを紛らわすために、より惨めになりたい気持ち。 自分の冷たさに気づかないように傷を求める気持ち。 自分の狡さを隠すために、相手に委ねる気持ち。 人間の汚い感情が丁寧に描写されていて、そこに存在する無垢が強調されていた。
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純香の周りの人間……嫌な奴ばっかりやん……。 誰も救われない、ただひたすらに後味の悪い物語。 並のイヤミスじゃないよ、コレ(笑)……重っっ。 嫌な奴という共通項が有るだけで個性の無い登場人物に感情移入も出来なかった。 物語としても、なんだか平坦で書いてある物をただ読まされてい...
純香の周りの人間……嫌な奴ばっかりやん……。 誰も救われない、ただひたすらに後味の悪い物語。 並のイヤミスじゃないよ、コレ(笑)……重っっ。 嫌な奴という共通項が有るだけで個性の無い登場人物に感情移入も出来なかった。 物語としても、なんだか平坦で書いてある物をただ読まされているだけといった印象……。んで、……解決編の無いぬるくどんよりとした後味……。 なんだ?なんだ?何が言いたい? ミステリとしても最後の盗作のくだりもほぼ予想つくし……ちょっと色々と中途半端な内容で消化不良。
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寝たきりの母親を持つ芽の出ない書道家である秋津龍生と高校の養護教員の妻、怜子。 発達障害の妹純香を引き取り一緒に暮らす民営図書館館長、林原信輝。その交際相手の里奈。 純香が秋津の前に現れたことにより、自分の足りないところがあぶり出され、しかし純香の才能に惚れ込み書道教室の助手にする。 自分の稼ぎで夫、義母の生活を賄う怜子は、純香を口実に信輝に惹かれていく。が、もともと執着しない性質の怜子は一度きりで終わる。 信輝と曖昧な関係を続ける里奈。 里奈も、純香を挟み信輝との関係に悩み… 最後は純香が書道教室の中学生に、橋から突き落とされて亡くなり全てが終わる。 そして書道大会の大賞を射止める秋津龍生の作品は、純香の作品(盗作?)だった。 書に押す雅印は、寝たきりの母親の作品。 最後まで、母親が詐病である理由は明かされなかった。それを何年も続け、医者も欺くということが可能かについては、少し疑問。 でも大好きな桜木紫乃作品なので、余韻がとても心地良い。 何度も図書館で借りて読んでいるが、そろそろ購入しようかな。 自分の置かれている状況、年齢によって、感じ方が違う。 本当にいい作品です。
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生活能力には欠けるけれど書道の天才である林原純香が、民間に運営を委託されその館長となっている兄の元にやってきて起こす、周りへの人々の心のさざ波をえぐり出した問題作。書道家の秋津龍生はなかなか書道界で力を認められず、妻であり養護教員の怜子に経済的に支えられていたが、純香の件で林原館長に相談を受けてから男女の関係を持つ。秋津は純香の天才さに衝撃を受けつつ、そばに置くことを望んで自分の書道教室の教師として迎え入れる。林原館長には純香も馴染んでいる里奈という彼女がいるが結婚までは考えていない。秋津の母は、もうろくしているのか正気なのか定かではない状況。こうした人たちが抱える静かな嫉妬と羨望を、林原純香はそれぞれに気づかせていく。無垢である恐ろしさはそこにある。そして純香の急死。そこで人々の心のさざ波は薄らいでいく。 章ごとに主人公が違ったりして話の深みに入りにくいが、読み進めていくとざわざわとした心持ちになっていくところがこの小説の怖いところか。一度読んだだけでは、その深みに存在する「何か」を読み取るのは難しいかも知れない。自分も、その「何か」を探りあぐねて読み終わった。ジャンル的にはサスペンスらしいが、この作家の作品としては必ずしも成功作とは言えないのかも知れない。
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桜木紫乃にはまりつつある。 中年の男女がメールの行間を読んだり嫉妬したり絶望してたり、じめっとしてるけどリアルな人間模様の作品。このまま終わっていくと思ったら、中盤とラストで2段階の衝撃にやられた。秋津のその後が知りたいような知りたくないような。 発達障害で、若く純真無垢な純香を...
桜木紫乃にはまりつつある。 中年の男女がメールの行間を読んだり嫉妬したり絶望してたり、じめっとしてるけどリアルな人間模様の作品。このまま終わっていくと思ったら、中盤とラストで2段階の衝撃にやられた。秋津のその後が知りたいような知りたくないような。 発達障害で、若く純真無垢な純香を介して、周りの大人たちが欲望や嫉妬でそれぞれ破滅していくようなぞくっとする一冊だった。
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北海道の地方を舞台に鬱屈した想いを抱えた三者三様な登場人物による愛憎劇とでも言おうか 主要登場人物3人誰もが煮え切らず共感はしにくいが、ストーリーとしては読ませる
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手本どおりの書道の作品をかける適応障害の純香が生きていればあの書は彼女の名前で応募したのかなと思った!親の過剰な期待で生きる世界が狭まる。沢山の親子の形が書かれている!
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大人はみんな生きづらさを抱えながら生きていて、 幸か不幸かの線引きもできない。 親子も夫婦もきょうだいも、煩わしいと思っても簡単には捨てられないし縁を切れない。 自分の生きる道を探りながら、選んでいく。それが正解かどうかは分からないけど。 すっきり読み終える本ではなくて、生きてい...
大人はみんな生きづらさを抱えながら生きていて、 幸か不幸かの線引きもできない。 親子も夫婦もきょうだいも、煩わしいと思っても簡単には捨てられないし縁を切れない。 自分の生きる道を探りながら、選んでいく。それが正解かどうかは分からないけど。 すっきり読み終える本ではなくて、生きていくことの"グレーさ"を感じさせられる物語。
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結末は終わりではなく、始まりである。 思えば、この作品においてはすべてがそうかもしれない。 何かが終わること、それは取りも直さず、何かの始まりとまったくの同義なのだ。 全体の作りとしては、上質な、けれどももどかしい、大人の恋愛である。 大人の恋愛と本来は相反するプラトニックな...
結末は終わりではなく、始まりである。 思えば、この作品においてはすべてがそうかもしれない。 何かが終わること、それは取りも直さず、何かの始まりとまったくの同義なのだ。 全体の作りとしては、上質な、けれどももどかしい、大人の恋愛である。 大人の恋愛と本来は相反するプラトニックな愛と交流が(途中までは)描かれている。それを浮き彫りにしているのが不倫という道ならぬ恋と、母親の介護、日の目を見ない才能という生々しいものだ。 終盤に入って、物語は急展開を迎えるが、それはそれまでにたくさんあったわだかまりの、一つの出口の塊なのかもしれない。 心理戦(といってよいのか、わからないが、幾人ものモノローグが語ること)が多く、12回の連続ドラマにしたらもしかしたら物足りないかもしれない。けれどもだからこその重厚な物語の造形であるように感じる。 桜木紫乃さんは生身の人間を描くのが上手だ。 それもある程度、自分自身に諦めているような、自分の弱さを知っている、けれども懸命に毎日を生きている、どうにかして前に進んでいる、どうしようもない人を描くのが上手だ。 角度によっては、誰もがそういう弱さや生々しさを抱えている。それを教えてくれる。 絶対的な悪なんてどこにもいないのと同じように、絶対的な善なんてものも、やっぱりない。 人は思惑を持って生きている。その思惑に自分を染めている人もいれば、その思惑に辟易し、けれどもそれにすがって生きていくしかない人もいる。 そしてやはり、道東に行きたい。
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今回学びました。桜木さんの本は、続けて読むものではないと。舞台は北海道、子どものいない夫婦、夫は甲斐性なしで妻が生計を立てる.....って、この間読んだ本と同じ設定や。ストーリーの大きな核は、子供の心まま成長できない天才書道家女子・純香なのだけど、彼女以外の登場人物が全てイヤだな...
今回学びました。桜木さんの本は、続けて読むものではないと。舞台は北海道、子どものいない夫婦、夫は甲斐性なしで妻が生計を立てる.....って、この間読んだ本と同じ設定や。ストーリーの大きな核は、子供の心まま成長できない天才書道家女子・純香なのだけど、彼女以外の登場人物が全てイヤだなぁ。各々の言動・心理描写が地味ーにイヤらしい。そしてラストにかけてがちょっとわかりづらくて、ネタバレサイト見たところ、ゾッとさせられた。心に墨汁を垂らされて、その染みがこすっても取れないような、そんな後味の書道にまつわる物語。
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