奥の部屋 ロバート・エイクマン短篇集 の商品レビュー
忘れられた英国文学の巨匠エイクマンの傑作短編集。「学友」学生時代の親友サリーが20年ぶりにこの街に戻って一人暮らしすると言う。しかし家に籠ったままのサリーの言動がおかしくなってきた。私は距離を置くがサリーが倒れて救急車で運ばれると彼女は妊娠してると医師に告げられる。そして私は…。...
忘れられた英国文学の巨匠エイクマンの傑作短編集。「学友」学生時代の親友サリーが20年ぶりにこの街に戻って一人暮らしすると言う。しかし家に籠ったままのサリーの言動がおかしくなってきた。私は距離を置くがサリーが倒れて救急車で運ばれると彼女は妊娠してると医師に告げられる。そして私は…。何が起きてるのかわからないままどこかに罠が仕掛けられてるという不安感と不気味な謎だけが残る。ストレイジテール、妖しげな話とでも言いましょうか。奇妙な体験をする。その謎を論理的に常識的に解明すると推理小説になりその謎の解決が異次元的非現実的に落ちるとホラーになる。ストレイジは結論を提示せず仄めかしもしない。このざわざわ感が堪らない
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むぅ〜。まったく予想できない奇妙なお話でした。明快なオチはなくスッキリ感は無い話が多いけど、こういう独特の読後感が著者のテイストなのだろうか。比較的オチ、スッキリな「何と冷たい小さな君の手よ」は主人公の追い詰められ感に息苦しくなりました。
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面白い。怖いんだけど、そういう怖いんじゃない。 幽霊っぽいのもでてくるんだけど、そこはさらっと書いてあって、 「学友」の家の雰囲気とか、メルの心のザワザワ感とかが、すごく体験できる、文章。怖いのは苦手だけれど、これは全然、好きだ、私は。
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ホラーに近いけど怖がらせるために書かれているのではなく、幻想小説というには登場人物たちが理性的な、でもどこか読んでいて気持ちの据わりが良くない、後を引く短編集。 こういう雰囲気を文章で出せるのはすごいし、逆に文章だからこそ出せるのかもしれない。
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怖いかと訊かれれば、然程怖くはないような。それともあとからじわじわくるのかもしれない奇妙な読後感。無難な現実がいかに心許ないものなのかとふとおもう。
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・ロバート・エイクマン「奥の部屋 ロバート・エイクマン短編集」(ちくま文庫)の巻頭の「学友」を読み始めた時、かういふ雰囲気は好きだと思つた。訳のせゐかもしれないが、原作にかういふ雰囲気があればこその訳文であらう。そんな英国文学の伝統の中で育つた人なのかとも思つた。エイクマンは19...
・ロバート・エイクマン「奥の部屋 ロバート・エイクマン短編集」(ちくま文庫)の巻頭の「学友」を読み始めた時、かういふ雰囲気は好きだと思つた。訳のせゐかもしれないが、原作にかういふ雰囲気があればこその訳文であらう。そんな英国文学の伝統の中で育つた人なのかとも思つた。エイクマンは1914年生まれである。母親がユダヤ系ドイツ人ではあつても「エイクマン家は典型的な『アッパーミドル』階級に属していた」(「訳者あとがき」330頁)し、「名門ハイゲイト・スクールに入学」(同前331頁)した。学校嫌ひであつたので「入学資格試験ではよい成績を収めたものの大学には進学しなかった。」(同前331~332頁)といふが、この頃から作家志望であつたらしい。たぶんそれなりに英国文学の伝統を身につけてゐたといふことなのであらう。本格的な作家活動は第二次大戦後である。そんなに古い時代の作家ではない。それでもやはり英国の作家である。この雰囲気もそれと無関係ではあるまい。私には何よりこれが印象的であつた。いささか古風な雰囲気を持つ、そんな作家なのかもしれない。 ・その「学友」である。幼友達のサリーの父が死んでしばらくしてから、突然、サリーが尋ねてきたところから物語は始まる。最初は「彼女には、まだ娘自分の 面影が変に残ってい」(19頁)たのに、後日、彼女の家を訪ねるとどこかその時と様子が違ふ。家の中も雑然としてをり、帰る時に彼女から「どことなく憔悴しきった感じを受け(中略)決して笑わなかった」(26頁)ことに気がつく。そして、彼女が事故で入院した時、家の様子を見てくれと頼まれ、その途中に彼女の妊娠を知らされたりして、例の如く、主人公の恐怖(?)が高まつていく……かう書いていくと型通りの恐怖小説のやうだが、実際にはそれほどでもない。 恐怖の質が違ふ。サリーの父らしき「彼」を見たりもするけれど、それ以上にはならない。失踪直前のサリーが主人公を自分の子供に会はせようとする時の恐怖から逃れるのは、物理的にも、易しい。「エイクマンはそもそも『人を怖がらせる』ことに主眼を置いていないようにすら思える。」(「訳者あとがき」328 頁)といふのが、これにも当たるのかと思ふ。それでもおもしろい。最後の表題作「奥の部屋」もおもしろい。これは所謂恐怖小説と言へよう。人形の家をめぐる綺譚、恐怖譚である。主人公が子供の頃に手に入れた古ぼけた人形の家は屋根を外せないから中を隅から隅まで見ることができない。弟が「軸測投影図法」 (300頁)で間取りを調べたところ「部屋が合わない」(302頁)ことが分かる。ところが、そこで人形の家がなくなつてしまつた。さうして長ずるに及んで、とまたこれまた型通りの進み具合である。主人公は雨の日、とある田舎でこの家に遭遇する。「夢が現実のものとなるなんて、そうあることではない。」 (315頁)それは人形の家ではなかつた。かくして主人公の恐怖は高まつていく。最悪の事態は主人公がその家に囚はれてしまふことだが、さうはならないまでも、十分に恐怖を感じさせつつ物語は終はる。「部屋が合わない」のも解決される。構成もよくある形であらうし、物語自体もどこかにありさうである。姉妹は変化の者かもしれないが、それを出すことなく終はる。幽霊の出ない幽霊譚といふ類であらうか。これがエイクマンの作風らしい。「学友」とも相通じるところである。古風ではあつても、中身は決して古風ではないといふことである。それゆゑに某ムックの「海外ホラー小説編で本書は第一位の栄誉に浴した。」 (「訳者あとがき」327頁)といふ。なるほどである。
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異常な事態を感じ取りながらも何が起こっているかわからず不安に駆り立てられていく登場人物たち。そして読み手も同じように不安な気持ちに包まれていく。オチが明確には説明されず受け手に想像させる余地が多く、また、怪奇譚ではあるが明確な怪奇現象とも示さない絶妙なバランスを常に保っており、物...
異常な事態を感じ取りながらも何が起こっているかわからず不安に駆り立てられていく登場人物たち。そして読み手も同じように不安な気持ちに包まれていく。オチが明確には説明されず受け手に想像させる余地が多く、また、怪奇譚ではあるが明確な怪奇現象とも示さない絶妙なバランスを常に保っており、物語の結末に奇妙で不気味な余韻を与える。ただし、作品によってはもやもやした感覚の方が大きいものもある。 「何と冷たい小さな君の手よ」と「スタア来臨」の二つが好み。
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『とらえどころがない』と巻末の『訳者あとがき』にあった。 確かにとらえどころがないというか、『よく解らないが、何かじわじわと怖い』というのがロバート・エイクマンの作風のようで、本書に収録された短編もそういう不思議な『怖さ』を持っている。対して、表題作にもなっている『奥の部屋』は、...
『とらえどころがない』と巻末の『訳者あとがき』にあった。 確かにとらえどころがないというか、『よく解らないが、何かじわじわと怖い』というのがロバート・エイクマンの作風のようで、本書に収録された短編もそういう不思議な『怖さ』を持っている。対して、表題作にもなっている『奥の部屋』は、因果関係がはっきりしている分、『解りやすい怪奇小説』で、本書のなかでは異色なのでは? とも感じる。こういう本はなかなか無い。 また、同じく『訳者あとがき』には、『よく比較される』作家としてデ・ラ・メアの名前が挙げられているが、これも不思議。比較するならデ・ラ・メアよりアンナ・カヴァンじゃない? 特に『学友』や『恍惚』の、足下が崩壊しそうな危うさはカヴァンと共通していると思うのだが……。 個人的にはお気に入りの短篇集だが、どちらかというと読者を選ぶタイプだなぁ……。
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