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ある島の可能性 の商品レビュー

3.9

22件のお客様レビュー

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2024/10/28

ウェルベックの短い引用に気になるものが多かったし、一応SFに分類されているということで、読んでみた。かなり哲学的な内容で、強制的に自分の今の生き方を見つめ直させられる。ウェルベックの、中年男性の悲哀を克明に描写する力はなんなんなのか。コロナ期はみんな引き籠もってオンライン通信ばか...

ウェルベックの短い引用に気になるものが多かったし、一応SFに分類されているということで、読んでみた。かなり哲学的な内容で、強制的に自分の今の生き方を見つめ直させられる。ウェルベックの、中年男性の悲哀を克明に描写する力はなんなんなのか。コロナ期はみんな引き籠もってオンライン通信ばかりしていただろうし、生き方を見つめ直すこともあっただろうし、かなりこの本のような状態になっていたのではないか

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2023/04/28

フランス人の作家「ミシェル・ウエルベック」の長篇SF作品『ある島の可能性(原題:La possibilite d'une ile)』を読みました。 「モーリス・ルブラン」、「オーギュスト・ル・ブルトン」、「ジュール・グラッセ」、「ジョルジュ・シムノン」、「レイラ・スリ...

フランス人の作家「ミシェル・ウエルベック」の長篇SF作品『ある島の可能性(原題:La possibilite d'une ile)』を読みました。 「モーリス・ルブラン」、「オーギュスト・ル・ブルトン」、「ジュール・グラッセ」、「ジョルジュ・シムノン」、「レイラ・スリマニ」に続き、フランス作家の作品です。 -----story------------- 辛口コメディアンの「ダニエル」はカルト教団に遺伝子を託す。 二千年後ユーモアや性愛の失われた世界で生き続けるネオ・ヒューマンたち。 現代と未来が交互に語られるSF的長篇。 ----------------------- 2005年(平成17年)に刊行された「ミシェル・ウエルベック」の長篇第3作… 著者自ら「自分の最高傑作」と豪語したSF的な構想に挑戦した作品で、ベストセラーになったようですね。  ■第一部 ダニエル24の注釈  ■第二部 ダニエル25の注釈  ■第三部 最後の注釈、エピローグ  ■訳者あとがき  ■文庫版訳者あとがき 舞台は今から2千年後の未来、喜びも、恐れも、快楽も失った人類は、ネオ・ヒューマンと呼ばれる永遠に生まれ変われる肉体を得た… 過去への手がかりは祖先たちが残した人生記、、、 ここに一人の男のそれがある… 成功を手にしながら、老いに震え、女たちのなかに仔犬のように身をすくめ、愛を求めつづけた「ダニエル」。 その心の軌跡を、彼の末裔たち… 未来人(ネオ・ヒューマン)の「ダニエル24」、「ダニエル25」は辿り、夢見る、、、 あらたな未来の到来を… 命が解き放たれる日を。 斬新で衝撃的な作品でしたが… 作品の世界観が頭の中に描き切れず、お笑いタレントや映画監督として社会的には成功したものの愛に対して苦悩し続ける「ダニエル」の行動にあまり共感できなかったので、500ページを超えるボリュームは、ちょっと辛かったですね、、、 作品の中で描かれる、肉体的な愛、性行為に対する欲求は、人間の正直な心理なのでしょうが… 卑猥な表現が多かったので抵抗感も大きかったなぁ、「結局のところ、人はひとりで生まれ、ひとりで生き、ひとりで死ぬ」という言葉には納得感がありましたけどね。

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2023/04/27

22.11.12〜12.19 快と不快のバランスがゼツミョーだった。ウエルベックの作品はいつもそうかもしれないけど。 Back2Backな構成だから形式は『素粒子』に似ているけど、この小説は構造として『人生記』があるから、全体的にカッチリしてる印象を受けた。 アイデアとしての人生...

22.11.12〜12.19 快と不快のバランスがゼツミョーだった。ウエルベックの作品はいつもそうかもしれないけど。 Back2Backな構成だから形式は『素粒子』に似ているけど、この小説は構造として『人生記』があるから、全体的にカッチリしてる印象を受けた。 アイデアとしての人生記の面白さと、書き手であるダニエル1たちが定義する彼の人生の滑稽さと悲しいまでの正直さ。人生記には書かれなかったダニエル1の顛末、ままならなすぎる。 ネオヒューマンは自分自身のことが分かりすぎていてやけにサッパリしているから、その孤独な生き方に滑稽さも含まれているような感じがした。 読んでいてウエルベックは正直な人だなと思った。

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2021/03/17

やっと読了。読み終わってみると、とても面白かった。なるほど名作。 読み終えないと、話の構造が見えなかったので、読んでる間はずっと「なんだこれ、私は何を読んでいるんだ」って感じ。物語の大部分に出てくるダニエル①のキャラが、不快指数高くてキツい。オススメはできない。

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2020/10/21

性と老い、そして不死をキーワードに、現在と遺伝子コピーされたクローンが生きる破滅を迎えた世界を描いた、SFというかディストピアの向こう側のような作品。 セックスから男と女の話、そして文明と広がる話の中で、男と女がそれぞれが求めるものをつきつめると、結局一夫多妻が正解だったのかもし...

性と老い、そして不死をキーワードに、現在と遺伝子コピーされたクローンが生きる破滅を迎えた世界を描いた、SFというかディストピアの向こう側のような作品。 セックスから男と女の話、そして文明と広がる話の中で、男と女がそれぞれが求めるものをつきつめると、結局一夫多妻が正解だったのかもしれないと感じ、そして文明が崩壊していく中で、人生に居心地の悪さを感じた人々は、最終的にはイスラム的な共和国の建設を願うようになるの部分は、後のウェルベックのベストセラー「服従」につながるように思った。 むしろ「服従」につながると思わせながらも、設定としては「服従」後の作品といえるようなのが面白い。

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2020/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

3年ぶりに読み返したことによって、より落ち着いて考えられた気がする。 「仲介」(本ではインターメディエーションとなってる)として人間を捉えることができると思う。ネオ・ヒューマンは確かにダニエル1の時代の人類と、未来人を橋渡しする存在であったかもしれないが、ダニエル1も結局は「遺伝子の乗り物」という意味で、各世代を繋ぐ存在にすぎなかった。 ダニエル1が自覚しつつも直視できない老いは、自身が「遺伝子の乗り物」としての役割を果たせなくなりつつあることを意味する。子供を捨てた経験のある彼は、生殖としての性に入れ込んでいたわけでもないが、愛と結びつく性の意味でも、機会を逸してしまった。イサベルとは愛はあったが性はなかったし、エステルとは性はあったが愛がなかった。ダニエル1の中で両者は切り離されないまま老境を迎え、ダニエルを愛を持って再び迎えたイサベルとの生活も長くは続かなかった。 そこで人類から老いをなくし、不死の存在にするエヒロム教団の活動にダニエルは関心を持つ。が、預言者の「再生」を通し、世間に若さと快楽の永続を約束した教団がもたらしたのは、来世への期待を胸に自死を選ぶ人々の大群だった。ネオ・ヒューマンと呼ばれる人類は、自身のオリジナルの記録を、注釈を通じて次世代に仲介するだけの存在になってしまった。 ダニエル24・25が生きる世界は、それぞれが個として分立し、電子的なやり取りを持って他者と関わる世界である。肉体的な終わりがあるがそれは精神の断絶を意味せず、入れ物が変わるだけである。個としてのネオ・ヒューマンは、<至高のシスター>の教えに従い、来るべき未来人の到来を待つ。だがその生き方は、限りある時間からくる一切の感情を人類から奪ってしまい、仲介としての存在を一層強めただけだった。かといって、ダニエルにはもう野人として生きることもできない。結局「人間は一人で生まれてきて、一人で死んでいく」運命を受忍するしかなかったのか。

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2019/12/24

期せずして最近の読書傾向をなぞった形に。老いと性の話。老いに抗わず、否、抵抗した結果の選択?人間の究極の目的は、、

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2019/12/15

「前例のない水準の繁栄と健康を確保した人類は、過去の記録や現在の価値観を考えると、次に不死と幸福と神性を標的にする可能性が高い。飢餓と疾病と暴力による死を減らすことができたので、今度は老化と死そのものさえ克服することに狙いを定めるだろう。人々を絶望的な苦境から救い出せたので、今度...

「前例のない水準の繁栄と健康を確保した人類は、過去の記録や現在の価値観を考えると、次に不死と幸福と神性を標的にする可能性が高い。飢餓と疾病と暴力による死を減らすことができたので、今度は老化と死そのものさえ克服することに狙いを定めるだろう。人々を絶望的な苦境から救い出せたので、今度ははっきりと幸せにすることを目標とするだろう、そして、人類を残忍な生存競争の次元より上までアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウスに変えることを目指すだろう」ー 『ホモ・デウス』ユヴァル・ノア・ハラリ 不死をテーマにしたミシェル・ウエルベックの小説。遺伝子のコピーを世代を超えて記憶とともに引き継ぐことによって「不死」を実現した二千年後の世界。 主人公のダニエル1は、名の知れた成功したコメディアンで映画監督。バツイチだが、監督を務める映画のキャストに応募してきた年の離れたエステルとグダグダな愛人関係。いつも通り、この人の性愛描写は、生々しく露悪的だが、唐突にその衝動が冷めたりする。要するに現実的なのだ。老化によって性愛欲やその能力以前にそこからはみ出してしまうことに対して、ダニエル1は抵抗する。一方、24世代/25世代後のネオ・ヒューマンであるダニエル24/ダニエル25からは性欲のようなものは消えている。少なくとも切実さは失われている。 ダニエル25は最後次のようにつぶやく。 「幸せが実現することはありそうにない。世界は期待したようなものではなかった」 小説のはじめの方に、離婚した最初の妻が連れていった息子の自殺に触れる。 「息子が自殺した日、僕はトマトのオムレツをつくった。『福音書』にも「犬でも生きていれば、死んだ獅子よりましだ」と書いてある。僕はその子のことを一度もかわいいと思ったことがなかった」 未来の人間が「不死」を求めるとき、性愛はどのように扱われるべきなのだろうか。『ホモ・デウス』が避けた議論であるが、ウエルベックはそこから「不死」を考える。『ホモ・デウス』もセックスする。いや、もしかしたら、そうではないのかもしれない。 近未来SF小説として見ると、準備した装置をうまく動かすことができずに、回収すべく置かれたものを放置して終わってしまったように感じる。小説なので、これはこれでよしとして、個人的なこれではない感がぬぐえない。うまく言えないが。

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2019/12/07

傑作。 ファインアートから先端科学、社会情勢、宗教、地勢学、そして人類の命題?であるところの愛について、余すところなく考えが巡る素晴らしい読書体験だった。未来からの注釈を過去を生きる自分たちが読むことになるスタイルも洒落てたし、何よりフォーカスされてる主人公が喜劇を生業にしていた...

傑作。 ファインアートから先端科学、社会情勢、宗教、地勢学、そして人類の命題?であるところの愛について、余すところなく考えが巡る素晴らしい読書体験だった。未来からの注釈を過去を生きる自分たちが読むことになるスタイルも洒落てたし、何よりフォーカスされてる主人公が喜劇を生業にしていた点、読後に振り返ったときに拍手を贈りたくなった。

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2019/05/31

老いるのが怖くなる小説だった。 人が不死の技術を手に入れて、肉体が老いてもまた新たな肉体を手に入れることができるようになり、そうした未来の可能性において人類はほとんど解脱に近い静穏な状態なのだけど、そうした描写になぜか息が詰まる。宗教SF。 その未来のダニエルの視点で現代のダニエ...

老いるのが怖くなる小説だった。 人が不死の技術を手に入れて、肉体が老いてもまた新たな肉体を手に入れることができるようになり、そうした未来の可能性において人類はほとんど解脱に近い静穏な状態なのだけど、そうした描写になぜか息が詰まる。宗教SF。 その未来のダニエルの視点で現代のダニエルの手記を見通すなかでそこに何かしらの郷愁の念があって、手記を読むという行為そのものにやはり「感情」に対する執着が描きこまれているように思う。 そうした構造も面白いし、さらに現代ダニエルは皮肉屋のコメディアンかつ映画監督として栄華をものにし、快楽主義をつらぬいてセックス三昧。またこの性描写がたまらないのだけど、やはりそれは肉体の老いという陳腐な問題のなかで静かにすべてを失ってゆくという深い絶望感が最高の切れ味で描かれていていい(ダニエルは基本的に嫌なヤツなのでな、共感はするが)。 前半とラストが好き。

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