ある島の可能性 の商品レビュー
読み応えのある、読む価値を感じる作品。 ウエルベックの作品はすべて読もう。 著名お笑い芸人ダニエルの人生記と、それを確認し、注釈を加える2000年後の彼のクローンたち(24代目と25代目)の物語。 ダニエルは辛口で卑猥な芸風で世間の人気を得、二人の女性を真剣に愛するものの、老い...
読み応えのある、読む価値を感じる作品。 ウエルベックの作品はすべて読もう。 著名お笑い芸人ダニエルの人生記と、それを確認し、注釈を加える2000年後の彼のクローンたち(24代目と25代目)の物語。 ダニエルは辛口で卑猥な芸風で世間の人気を得、二人の女性を真剣に愛するものの、老いには逆らえず、愛に振り回される。カルト宗教団体エロヒム会に入り、遺伝子を残す。 エロヒム会は独自の研究で遺伝子からクローンを作り出すことに成功し、子供を作らずクローンのみで世代を繋ぐ新しい人間を構想する。新しい人間は口から食べ物を摂取することもなく、排泄もせず、一定の期間を経て肉体が衰えると、次の世代に交代する。感情の起伏は少なく、愛も感じない。従来の人間とは区別し、ネオ・ヒューマンと呼ばれる。 クローンである子孫たちは祖先の人生記を確認し注釈を加えることだけに明け暮れる。 しかし愛や感情の必要を感じた25代目ダニエルは、外の世界へ飛び出す。そこは核戦争や大干ばつによって人類がほとんど滅びた不毛の世界。一部が野人として文化のない動物のような生活を送っている。 25代目ダニエルは愛を求めてさすらうが、それは叶わず、無限の海と無限の雲が広がる場所で肉体が滅びるのを待つ。 愛に耽溺し、争いごとが好きな人類は滅亡に至らざるをえないが、かといって他との接触を絶ち愛を知らない状態で世代を重ねても果たして生きていると言えるのか。 人間はこの苦悩を忍び続けるしかないのか。 エピローグのとてつもなく広い世界に放り出された間隔が読んでいて印象的だった。 しかし隅々まできちんと理解しているとは思えない。 次に読めばきっとまた新しい発見があるだろう。 少し本筋からは逸れるが、クローンというのは遺伝的にまったく同一人物ながら、 中にある意識としては同じ人物が継続しているわけではない。 そう考えると自分というのはいったい何だろうと少し思った。 あと、犬がいい。 犬にはずっと楽しく生き続けてほしかった。
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未読。ポーランドの演出家、マグダ・シュペフトさんが上演したという話であらすじ聞きましたが、オカルトとSFが折り重なる世界観にひかれる。ぜひ舞台作品も招聘してほしい。
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