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脊梁山脈 の商品レビュー

3.8

12件のお客様レビュー

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2023/04/05

終戦を運良く五体満足で迎え、帰国した矢田部は故郷へ帰る汽車の中で、見ず知らずの男より親切を受け、そのわずか1日の交際を忘れられない。運良く食うに困らない遺産を相続した矢田部はその男が「木地師」という特殊な職業であり、その系譜の研究に没頭する。 孤独に歴史を追う矢田部の前に現れる...

終戦を運良く五体満足で迎え、帰国した矢田部は故郷へ帰る汽車の中で、見ず知らずの男より親切を受け、そのわずか1日の交際を忘れられない。運良く食うに困らない遺産を相続した矢田部はその男が「木地師」という特殊な職業であり、その系譜の研究に没頭する。 孤独に歴史を追う矢田部の前に現れるのはタイプが違う2人の女性。三角関係でもつれる展開になりそうだが、ストーリーは日本古代史の天皇制を論じる意外な方向へ。実は、本作品は作者の歴史研究が披露される社会派小説だったのか。と、思わせたが、主人公は一人の人間として、孤独な研究より家族や恋愛を選ぶ。 戦争にはじまり、山脈のような山あり谷ありの男の人生。立ち位置がフラフラしているが、なぜか誠実さを感じて憎めない。

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2022/05/14

乙川さんのはじめての現代小説。それにしても、本当にその場にいるかのような臨場感。戦争の話もかつてないくらいに、その悲惨さが伝わってくる。そしてそこから15年、主人公が25歳で復員し、38になるまでに、大化の改新頃の日本の歴史にも触れて、そして二人の好い女性と佳い女性との間で織り成...

乙川さんのはじめての現代小説。それにしても、本当にその場にいるかのような臨場感。戦争の話もかつてないくらいに、その悲惨さが伝わってくる。そしてそこから15年、主人公が25歳で復員し、38になるまでに、大化の改新頃の日本の歴史にも触れて、そして二人の好い女性と佳い女性との間で織り成される叙情。 この著者の本をはじめて読んだ時に目にした「ひともしごろ」、この言葉、別にこの著者のオリジナルではないのだが、そのときは衝撃的な経験だったけど、この本にも数回出てきて、そっか、この言葉は時代小説書いてる時に使っていたんだろうなと、腑に落ちた。多岐子とやっと所帯をもって行こうとしてる矢先に死にそうになってしまい、果たして、信幸は思いを完うできるのか。そして弟の信は本当にフィリピンで生きていたのだろうか、佳江果たしてこのままフランスからヨーロッパで人生を終えてしまうのか。そういうことは全部未解決?いやある意味解決をしながら、ページをもうめくれないところまで、読み終えた 途中、読み終われないかもと思う箇所もあったが、結局、読み通した。 全体的には、至福の時間だった。

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2021/08/04

大作だった。上海からの引き揚げの列車で一緒になった人物を探す旅路の途中で、木地師の足跡を巡る目標を見つけ、二人の女を愛する主人公。 木地師から派生して独自の日本古代観が披露される。 これがビックリな推論で一冊で2度美味しい楽しみをくれた。 男は生活を忘れ目標を追うが、達成すると虚...

大作だった。上海からの引き揚げの列車で一緒になった人物を探す旅路の途中で、木地師の足跡を巡る目標を見つけ、二人の女を愛する主人公。 木地師から派生して独自の日本古代観が披露される。 これがビックリな推論で一冊で2度美味しい楽しみをくれた。 男は生活を忘れ目標を追うが、達成すると虚無感に襲われる。対して女は生活に追われても強く自分を見失うことがない。 そして最後に尋ね人に会う主人公。流行りを追うのも良いが自然に根ざした日本人らしい姿に憧れる。 解説に三浦しをんが登場するが、彼女の祖父母が住む山奥が木地師が開いた村らしく、彼女が「神去なあなあ日常」を何故描きえたかを知ることができたオマケまであった。

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2021/04/11

戦後の日本の面影を知りたいと思って購入。 敗戦後の帰途で体調不良の矢田部を看病した小椋という男を探しながら木地師の歴史を調べて行く。 調査内容に面白さを感じたけど女性に対する態度に何を考えているんだと思ってしまう。 この男性みたいに悠々自適な生活ができたらいいなぁと思う反面、多希...

戦後の日本の面影を知りたいと思って購入。 敗戦後の帰途で体調不良の矢田部を看病した小椋という男を探しながら木地師の歴史を調べて行く。 調査内容に面白さを感じたけど女性に対する態度に何を考えているんだと思ってしまう。 この男性みたいに悠々自適な生活ができたらいいなぁと思う反面、多希子や佳江みたいに自分の力で生活していくのが人間らしさなのだろうな。 この小説は女の強さを出しているのかもしれない。

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2018/01/15

主人公は上海から復員してきた矢田部信幸。 故郷に向かう、ごった返す車中で体調を崩す。 偶然乗り合わせた同じ復員兵 小椋康造に 窮地を救われるも何のお礼もできないまま 東京で別れることに。 帰郷後、その恩人を訪ねる旅を出かける事を 思い立ち、信州へと向かう。 その旅では小椋との再会...

主人公は上海から復員してきた矢田部信幸。 故郷に向かう、ごった返す車中で体調を崩す。 偶然乗り合わせた同じ復員兵 小椋康造に 窮地を救われるも何のお礼もできないまま 東京で別れることに。 帰郷後、その恩人を訪ねる旅を出かける事を 思い立ち、信州へと向かう。 その旅では小椋との再会を果たせぬものの、 彼が木地師(ろくろを使って、お椀などの 木地を作った職人)として第二の人生を送って いることを知る。 この関心が信州・東北の深山幽谷へと誘い、 「木地師」の歴史の深奥に触れる。 知的好奇心を大いに揺さぶられ、 研究に没入していく矢田部。 そして、ひとつの仮説が立ち昇る。 「千数百年前から存在する木地師の歴史は、 日本人のルーツ・古代律令国家の成立にも 深く関わっているのではないか」。 木地師の誕生は朝鮮半島からの渡来人 なくしては語れず、その足跡は海上ルート ではなく、列島を貫く「山脈ルート」を通じ 良木を求めて自由に交流し、文化の面においても 大いに付与していたに違いないと。 その研究は机上を超え、私財を投じ無名の 芸術家「木地師」たち匠の作品を収めた図録 制作へと向かわせる…。 読み手によっては、この小説があまりにも 多面的であるため、持て余すかもしれない。 古代史好きとしては、否が応にも「木地師を 巡る冒険探偵小説」的な展開に身を乗り出し、 夢中でページを繰った。 ひとつの木椀が結ぶ古代と現代をスリリングで 壮大な着想に牽引されながら読み終えた。

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2016/09/01

20160901 読むのが辛かった。乙川さんの本は時代物しか読んでなかったので新鮮だった。戦後の雰囲気かよく描かれていると思う。

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2016/07/05

終戦後に復員した主人公が、その列車の中で出会った小椋に助けられ、その後その恩人を探す旅に出ます。その旅の中で木地師という存在を知り、またその魅力にとりつかれ、彼らの道のりを知ることを目的に生きることになります。木地師が日本の歴史を裏からどのように関わってきたのか、その重要さが、縁...

終戦後に復員した主人公が、その列車の中で出会った小椋に助けられ、その後その恩人を探す旅に出ます。その旅の中で木地師という存在を知り、またその魅力にとりつかれ、彼らの道のりを知ることを目的に生きることになります。木地師が日本の歴史を裏からどのように関わってきたのか、その重要さが、縁の下の力持ちという形で好感を持てました。またそれに付随して、日本書紀などの文献から本当の日本の歴史を想像するスケールに、知的好奇心を刺激されます。 木地師と日本の歴史に深く埋没していく物語に、良い意味でそこから引き戻してくれる女性達の存在があり、その都度都度の物語を一歩引き戻して見つめなおせる仕掛けもあり、楽しんで読ませていただきました。

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2016/04/02

まずタイトルに惹きつけられた。 木地師の歴史をたどる旅とその過程で巡り合う二人の女性との交流が全体の流れ。 古代史まで遡る木地師の歴史は興味深い。が、それを受け入れ、または否定したりするだけの知識が私にないのが残念。 舞台設定は終戦から15年間になっているが、やはり東日本大震...

まずタイトルに惹きつけられた。 木地師の歴史をたどる旅とその過程で巡り合う二人の女性との交流が全体の流れ。 古代史まで遡る木地師の歴史は興味深い。が、それを受け入れ、または否定したりするだけの知識が私にないのが残念。 舞台設定は終戦から15年間になっているが、やはり東日本大震災に読み替えるべきなんでしょう。

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2016/01/25

敗戦直後の日本列島を舞台に、新生を模索する日本人のあり様を描き出す。 主人公の矢田部信幸は復員時20代にもかかわらず、戦争の影を背負っているためか、老成している。彼は、古代日本の源流へと遡行するように木地師の足跡を追いかける。それは思わぬ仕方で、天皇制ファシズム国家としての日本を...

敗戦直後の日本列島を舞台に、新生を模索する日本人のあり様を描き出す。 主人公の矢田部信幸は復員時20代にもかかわらず、戦争の影を背負っているためか、老成している。彼は、古代日本の源流へと遡行するように木地師の足跡を追いかける。それは思わぬ仕方で、天皇制ファシズム国家としての日本を相対化していく。 信幸が出会う二人の女性は、それぞれに人生への強い衝動を抱えつつも、過去と境遇の重荷を背負わされている。そういった両義性が、物語全体を牽引していく。 かつて1950年代に「国民文学論争」が文学者の間で展開されたことがある。論争の中で中国文学者の竹内好は、日本の民衆の哀歓をまるごと掬い上げるような作品を待望した。 あれから60年以上の時をへた震災後の日本社会に、ようやく「国民文学」の名にふさわしい作品が誕生したことを、まずは言祝ぎたい。

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2016/01/17

上海から復員してきた主人公が復員専用列車の中で同じ復員兵と語り合う冒頭では、疲弊した日本と日本人の諦めと夢が混じり合って伝わってくる。 物語は主人公がこの復員専用列車で語り合った男を訪ねる旅に端を発し, 歴史の中に埋没していく木地師に巡り合い、消え行くかもしれないその姿を探るうち...

上海から復員してきた主人公が復員専用列車の中で同じ復員兵と語り合う冒頭では、疲弊した日本と日本人の諦めと夢が混じり合って伝わってくる。 物語は主人公がこの復員専用列車で語り合った男を訪ねる旅に端を発し, 歴史の中に埋没していく木地師に巡り合い、消え行くかもしれないその姿を探るうちに日本の古代史に対する謎解きにまで発展する。 その謎解きは万世一系とされる天皇家まで及んでしまう。 そういった、まるで梅原猛さんの日本学を読んでいるような重厚な内容と、新しい日本で力強く生きていく二人の女性の儚くも艶やかな人生が絡み合っていく。 人は自分と自分の行動を正当化する時に自分に都合の良い解釈をして、時として嘘もつく。 それが時の権力者であった場合、一国の歴史も歪めてしまう。 権力の座にある者が保身と権力の為に歪めた歴史の為に埋没してしまう文化は、あたかも戦争の犠牲になる人々のように見えてしまう。 ただ、戦争の犠牲となった人々も未来に向けて力強く生き延びていったように、埋没してしまうかのような文化も脈々と受け継がれいきのびてゆく。 著者が自分と同じ62歳ということを知ってなんとも驚きだった。

Posted byブクログ