脊梁山脈 の商品レビュー
乙川さんといえば、山本周五郎、藤沢周平を継ぐと見なされていた時代小説作家です。ただ、最近は周平さんのような清冽な軽みでは無く、暗く行き場のない情念を女性を中心に描くことが多く、それはそれで良いのでしょうが私の好みからは外れてきて残念に思っていました。 この作品はそんな乙川さん初の...
乙川さんといえば、山本周五郎、藤沢周平を継ぐと見なされていた時代小説作家です。ただ、最近は周平さんのような清冽な軽みでは無く、暗く行き場のない情念を女性を中心に描くことが多く、それはそれで良いのでしょうが私の好みからは外れてきて残念に思っていました。 この作品はそんな乙川さん初の現代小説です(と言っても終戦直後が舞台ですが) 読み始めは良い雰囲気でした。 主人公が木地師を訪ねる物語ですが、木地師の世界やその娘達の姿は清々しく、以前の乙川さんが戻ってきた感じでした。しかし後半はやはりドロドロとした強い情念の世界に入り込んでしまいました。 また、木地師の世界から古代(大化の改新あたり)を推測する話がやたらと長く。木地師と天皇家のつながりは北方さんの南北朝三部作にも出てきて、それはそれで興味深いのですが、古事記や日本書紀あたりの知識がないと読み解けないような記述がずっと続きます。せめて図表でもあれば理解しようという気にもなるのですが。。。 一言で言えば、悪くはないのだが、私の好みではないという感想です。 ちなみにAmazonの書評を見ると五つ星評価も多く、そうした人たちがやたらと長い評論を書いているのも、ある意味乙川さん好きらしいのかもしれません。
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乙川を初めて読んだことになる。テーマの手触り、ストーリーの輪郭がくっきりとして、読者のペダンティズムも満足させるような仕掛けもあり、華もあり、重みが好きな人にも受ける、まあ、よくまとまった小説である。 太平洋戦争をくぐった復員兵が、日本の良さを再探求しながら、戦後の生活に立ち上が...
乙川を初めて読んだことになる。テーマの手触り、ストーリーの輪郭がくっきりとして、読者のペダンティズムも満足させるような仕掛けもあり、華もあり、重みが好きな人にも受ける、まあ、よくまとまった小説である。 太平洋戦争をくぐった復員兵が、日本の良さを再探求しながら、戦後の生活に立ち上がっていく物語と読めるが、完全に戦後世代の乙川が、なぜこんな小説を書きたかったのかが、よくわからない。乙川がモノゴゴロついたころは、すでに高度成長期であるから。
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