五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後 の商品レビュー
戦前、満州に設立され「五族協和」を目指した満州建国大学。五族とは、大学に在籍した日本、中国、朝鮮、ロシア、モンゴルを指すのか、あるいは、当時満州に暮らした、朝鮮族、満州族、漢民族、モンゴル族、そして、大和民族を指すのか、ロシアがあるか否かで思想が変わると思う。満州国の標榜する五族...
戦前、満州に設立され「五族協和」を目指した満州建国大学。五族とは、大学に在籍した日本、中国、朝鮮、ロシア、モンゴルを指すのか、あるいは、当時満州に暮らした、朝鮮族、満州族、漢民族、モンゴル族、そして、大和民族を指すのか、ロシアがあるか否かで思想が変わると思う。満州国の標榜する五族には、ロシアは含まれない。なぜ、大学にはロシア人がいて、どうして本著ではこの五族で満州属が無いのか、疑問としても語られないのは残念だ。 戦後中国の戸籍においても、朝鮮族、満族、蒙古族は、漢民族と区別して記される。満族と漢民族が異なるからこそ、傀儡政権と呼ばれた溥儀が存在する。満州や新京は今の長春辺り。清王朝発足の地であり、民族も領土も中華民国とは異なる。これらを一括りに中国とすると、歴史が曇る。 しかし、敗戦に際して日本軍は多くの文献を焼き捨ててしまった。だから、これら大学は記録ではなく、記憶として語られるのみ。著者は生存する当時の学生を訪ねて記憶を探る。特に学内で意外性のある事実は語られない。寧ろ戦後彼ら学生の微妙な立ち位置から受けた苦労が惨い。 関東軍が山海関から東に常駐する軍隊というのは、勉強が足りなかったか、忘れていたか。また、山口淑子、李香蘭が本著に登場し、頭の中で、他の本と関連付いたのは、感動だった。証人が生きた最期のタイミング、著者は良い仕事をしてくれた。
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それぞれ国や思想、人種など異なった若者が祖国の未来のために切磋琢磨し時代の流れに翻弄されていく姿が緻密な取材とともによく書かれていた。 五族協和とても良い言葉。
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信念を持って、正しいことをすることは、誰でもできることじゃないし、いつの時代においても困難なことだが、それを一番難しい時代に成し遂げた男たちの素晴らしい話。
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満洲に五族協和を目指して関東軍 石原莞爾により設立された建国大学。わずか6年しか存在しなかったが、そこでは中国・韓国・モンゴル・ロシア・日本の若者たちが「言論の自由」を保証されて毎晩議論を繰り広げた。 鬼籍に入る前の卒業生を各国に訪ねて聞き取りをした貴重な記録。 そんな大学があっ...
満洲に五族協和を目指して関東軍 石原莞爾により設立された建国大学。わずか6年しか存在しなかったが、そこでは中国・韓国・モンゴル・ロシア・日本の若者たちが「言論の自由」を保証されて毎晩議論を繰り広げた。 鬼籍に入る前の卒業生を各国に訪ねて聞き取りをした貴重な記録。 そんな大学があったんだね。まさに歴史に埋もれていた存在。新聞記者らしい丁寧な取材と読みやすい文章。決してセンセーショナルではないけど大事な記録だと思う。
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☆とても重要なテーマだ。残念ながら、インタビュー者が物故して内容を確認できないでいる。 こういうことだと、インタビューの内容をそのまま残したり、オーラルヒストリーとして記録を残すのも、後世への責務かもしれぬ。 (著作)×水が消えた大河で、南三陸日記 県立 青森 (参考)満州建...
☆とても重要なテーマだ。残念ながら、インタビュー者が物故して内容を確認できないでいる。 こういうことだと、インタビューの内容をそのまま残したり、オーラルヒストリーとして記録を残すのも、後世への責務かもしれぬ。 (著作)×水が消えた大河で、南三陸日記 県立 青森 (参考)満州建国大学物語 青森 大学、白塔 満州建国大学物語 青森
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夏は戦争番組の季節。今年もノモンハン、ヨーロッパで戦った日系人部隊、戦争に駆り出された民間船など10本近く見たかもしれない。そんな中、たまたまTLで見かけたこの本は、満州の手がかりくらいの軽い気持ちで手に取ったのだが、冒頭から大きなショックを受けた。それは「五族協和」を実践するた...
夏は戦争番組の季節。今年もノモンハン、ヨーロッパで戦った日系人部隊、戦争に駆り出された民間船など10本近く見たかもしれない。そんな中、たまたまTLで見かけたこの本は、満州の手がかりくらいの軽い気持ちで手に取ったのだが、冒頭から大きなショックを受けた。それは「五族協和」を実践するための大学が満州に存在していたということ。「五族協和」このインチキくさい言葉は日本がアジア侵略のための単なるスローガン、口当たりのいい言葉で、その理念の実現に取り組むことなんてやってるわけないと思ってたからだ。その建国大学の学生は半数が日本以外の民族で、生活空間も互いに混ざり合うよう構成され言論の自由が保障されていたという。力で抑えるよりもこちらの方が現実的と日本が率先してそんな仕組みを作るなんて、ちょっと想像できなかった。 国のリーダーたるべきだった建国大学生は戦後、多くが苦難にあう。第二次大戦後のアジアはどの国でも大きな政治的変革があって、そこでは自由な思想は危険分子となってしまう、特に日本が作った満州の建国大卒なんて最悪だろう。この本では5カ国10数人の建国大学卒業生が登場するが、韓国の首相を務めた姜英勲以外は国の要職には就いていない。インタビューを読んで写真を見れば、この人たちが優れた知性とまっすぐな心と相当な忍耐力を持ってる事がわかる。どんなに優れてても自分ではどうしようもない事が人生には存在する、そこで終わりだと絶望しなかった事がこの人たちが80、90になっても凛々しく見える理由だろう。 私が特に心を打たれたのは中国に残され、共産党と戦わされた百々さんの言葉「歌や詩や哲学というものは、実際の社会ではあまり役に立たないかもしれないが、人が人生で絶望しそうになったとき、人を悲しみの淵から救い出し、目の前の道を示してくれる。」 台湾の李さんと辻政信の話も興味深い。NHKのノモンハンの番組で初めて知った辻政信、ちょっと調べて見るとろくなこと書いてなくて私の中ではインパールの牟田口廉也に続く陸軍のワルというイメージが出来かかっていたのだが、李さんの話を聞くと、ネットの情報程度でまた簡単に決めつけてはいけないのかもと思う。 最後、日本で学びたいという22歳のダナと、建国大学卒業生スミルノフの、日本を敬愛し、思慕する場面で泣いてしまった。今の日本は彼らの憧れと尊敬に値する国になっているだろうか、私たちはそんな国を作ってきたのだろうか。
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大学内では日本人学生、中国人学生、台湾人学生、ロシア人学生、モンゴル人学生、朝鮮人学生が自由に議論し、体制批判もできたと言うのが驚き。卒業生がみんな高齢になり、ギリギリ成し遂げた取材だったが、もう少し若いときにもっと多くの人にインタビューしてほしかった。それにしても自分の日記みた...
大学内では日本人学生、中国人学生、台湾人学生、ロシア人学生、モンゴル人学生、朝鮮人学生が自由に議論し、体制批判もできたと言うのが驚き。卒業生がみんな高齢になり、ギリギリ成し遂げた取材だったが、もう少し若いときにもっと多くの人にインタビューしてほしかった。それにしても自分の日記みたいに、取材の時系列に書くのはいかがなものか。最後に自分の家族に宛てたメッセージとか、本を私物化しすぎ。これだから集英社は。中央公論で出したらもっと良い本になっただろうな。
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満州国を建国した日本が、そこで建立した満州大学。 大学内では当時では考えられない、言論の自由が保障されており、白系ロシア人、韓国人、中国人、モンゴル人、日本人達が集結し「五族協和」を掲げられていた。 争い合う者同士であった別の民族が集まり自由に話し合い本音をぶつけ合う。もちろん馬...
満州国を建国した日本が、そこで建立した満州大学。 大学内では当時では考えられない、言論の自由が保障されており、白系ロシア人、韓国人、中国人、モンゴル人、日本人達が集結し「五族協和」を掲げられていた。 争い合う者同士であった別の民族が集まり自由に話し合い本音をぶつけ合う。もちろん馬が合わずそれっきりになったメンバーも多かったが、喧嘩するほど腹を割って話し合った大学のメンバーのうち一部は戦後60年経った今でも結束が強いことにも衝撃を受けた。 歴史に関しては無知だったが、この本を読んでさらにいろんなことを知りたいと思った。
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第二次世界大戦中の満州にほんの8年間、五族協和を目指した国際大学があった。 満州建国大学の卒業生の戦後への取材を丁寧に綴ったノンフィクション。作者の三浦さんは現在はアフリカ特派員として活躍していて、南スーダンや象牙、児童結婚などの記事からは、誠実な眼差しを感じる。三浦さんだからこ...
第二次世界大戦中の満州にほんの8年間、五族協和を目指した国際大学があった。 満州建国大学の卒業生の戦後への取材を丁寧に綴ったノンフィクション。作者の三浦さんは現在はアフリカ特派員として活躍していて、南スーダンや象牙、児童結婚などの記事からは、誠実な眼差しを感じる。三浦さんだからこそできた本だと思う。 卒業生は90歳近くの高齢で、今回の取材が建国大学卒業生への最後の取材になるかもしれない。 知らないことがたくさんある。
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かつて満州にあった「建国大学」。 五族協和のスローガンの下、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの各民族から優秀な若者を集め、将来満州国の経営に携わるエリートを育てようとした教育機関だ。日本の敗戦とともに学生たちの運命は大きく変わる。著者の興味はその戦後史を追うことにあって、若干感...
かつて満州にあった「建国大学」。 五族協和のスローガンの下、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの各民族から優秀な若者を集め、将来満州国の経営に携わるエリートを育てようとした教育機関だ。日本の敗戦とともに学生たちの運命は大きく変わる。著者の興味はその戦後史を追うことにあって、若干感傷に筆が滑り勝ちであるけれど、それはそれで興味深い。 ただ、ぼくとしては建国大学そのものの話が読みたかった。 五族協和、八紘一宇は今となってはひとの国に攻め込んだ大日本帝国のあと付けのスローガンだが、純真にそれを信じ、理想に燃えていた若者たちがいた。彼らは理想と満州国の現実というギャップをどう見ていたのか。中国人や朝鮮人学生は、石原莞爾や辻政信が一枚も二枚もかんでいた建国大学で学ぶことをどう考えていたのか。「知らなければ対抗できない」と、禁書扱いだった共産主義の本も読むことができ、日本の批判も含めて言論の自由が保証されていたという建国大学はどんな雰囲気だったのか。もし満州国が存続していたら、彼らによって運営される満州国はどんな国になっていったのだろう?
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