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一般意志2.0 の商品レビュー

3.9

15件のお客様レビュー

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2023/02/25

デジタル時代の民主主義の在り方について、10年以上前に出たこの本で触れているのは驚きです。政治にコミュニケーションは不可欠と思っていましたが、国民全員がコミュニケーションが得意なわけでもなく、ただ、こうして欲しいという潜在的な欲求は持っているもの。これをテクノロジを駆使すれは、一...

デジタル時代の民主主義の在り方について、10年以上前に出たこの本で触れているのは驚きです。政治にコミュニケーションは不可欠と思っていましたが、国民全員がコミュニケーションが得意なわけでもなく、ただ、こうして欲しいという潜在的な欲求は持っているもの。これをテクノロジを駆使すれは、一般意思として抽出できるという主張。 ある意味、最近話題の成田先生の著作「22世紀の民主主義」の問いに対する答えを準備しているかの内容。一読再読の価値ありと思います。ChatGPTなどの優れたAIまで実装された現在、一般意思2.0を把握するところまであと一歩。どこかの国で試験的にシン民主主義が始まるような気がします。あるいは国内の自治体で潜在的な住民意思を細かな政策に反映していけば、シャイで内気な人も含めて、貴重な民意が反映され、快適な生活を求めて移住する人も増えるのではと思いました。

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2022/10/31

22世紀の民主主義を読んで、似た本を読んだことがあるのを思い出して再読してみた。解釈が難しいと言われるジャン・ジャック・ルソーが唱えた「一般意思」を哲学的な考察をしつつ現代(出版は2011年)に展開します。インターネットに散在する言説を無意識の集積としてビッグデータとして取りまと...

22世紀の民主主義を読んで、似た本を読んだことがあるのを思い出して再読してみた。解釈が難しいと言われるジャン・ジャック・ルソーが唱えた「一般意思」を哲学的な考察をしつつ現代(出版は2011年)に展開します。インターネットに散在する言説を無意識の集積としてビッグデータとして取りまとめ、それを一般意思として選良へ熟議を方向付けるとありますが、選良というより選悪なので難しそうです。

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2022/05/22

1 Googleの創業理念「世界中の情報の体系化」 →ルソーの一般意志の実装化 『社会契約論』=個人主義どころか、ラディカルな全体主義の、そしてナショナリズムの起源の書として読むことができる 「個人の社会的制約からの解放・孤独と自由の価値」と「個人と国家の絶対的融合・個人の全...

1 Googleの創業理念「世界中の情報の体系化」 →ルソーの一般意志の実装化 『社会契約論』=個人主義どころか、ラディカルな全体主義の、そしてナショナリズムの起源の書として読むことができる 「個人の社会的制約からの解放・孤独と自由の価値」と「個人と国家の絶対的融合・個人の全体への無条件の包含」という矛盾 集合知・群れの知恵の再検討 →「多様性予測定理」と「群衆は平均を超える法則」 2 関係規定でなく、結合された人々、支配者も被支配者もともに属する共同体(→一般意志)を生み出すための本 社会契約(社会を作ることそのもの)→一般意志→統治機構 政府は一般意志の手足にすぎない 一般意志の執行は民主制より君主制のほうが適する 重要なのは国民主権だけで、誰が担うかはだれでもよい(→フランス革命) ←革命権を保証するもの ホッブス『リヴァイアサン』 またこれらは虚構で、理念に過ぎない(学術的) 一般意志も全体意志も特殊意志の集合にかわりない 一般意志は共通の利害に関わる⇔全体意志は私的な利害の総和 →特殊意志はベクトル(数学的)、全体意志はスカラーの和 3 一般意志が適切に抽出されるためには、市民は「情報を与えられて」いるだけで、たがいにコミュニケーションを取っていない状態のほうが好ましい =政治にコミュニケーションは必要ない 4 一般意志は人間による秩序の外部 公共性アーレント/ハーバーマス→熟議民主主義 シュミット ≒トーマス・フリードマンの「フラット化」 5 Googleやユビキタス社会 「一般意志はデータベース」 総記録社会 一般意志1.0は物語で存在しない →一般意志2.0はデータベースとしてサーバにある(民間企業に占有されている) 6 「心の動揺」の起こし方 7 国民の必要なものをデータとして理解する ルソーの立法者=精神科医 人間は中途半端に動物だから社会をつくってしまう ネットには無意識が記録(可視化)されている? 夫と妻の非対称性 メタ内容的記憶保持 フロイト『日常生活の精神病理学』 8 総記録社会=市場原理主義・社会民主主義 自分自身を認識するために、国家とデータベースという二つの手段をもっている いままでの自覚とは異なった自覚の回路が現れている 熟議の限界をデータベースの拡大により補い、データベースの専制を熟議の論理により抑え込む国家 大きな公共は存在できず、小さな公共の切り貼りで 9 一般意志をモノとして捉える 10 ひきこもりの作る公共性 11 無意識民主主義 激安の機能制限普及型政治参加パッケージ ニコニコ動画の利用 12 市民の固有性を奪う 13 ローティのアイロニー=デリダの歓待の論理=柄谷のヒューモア 動物としての人間がたがいに憐れみを抱き感情移入しあう Twitterについて 14 mixi民主主義 Google民主主義 Twitter民主主義 15 動物的な生の安全は国家が保障し、人間的な生の自由は市場が提供する

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2021/09/20

ルソーによると、一般意志とは国人の意思の集合体である共同体意思のことを指す。したがって市民はこの一般意志に従わなければならない。ただし政府は一般意志を執行するための"代理機関"にすぎないため、市民は政府に服従しなければならないわけではなく、むしろ革命権を肯定し...

ルソーによると、一般意志とは国人の意思の集合体である共同体意思のことを指す。したがって市民はこの一般意志に従わなければならない。ただし政府は一般意志を執行するための"代理機関"にすぎないため、市民は政府に服従しなければならないわけではなく、むしろ革命権を肯定している点はホッブズと異なる考え方。 現代社会において一般意志とは何か考えてみるとまず思いつくのは世論あたりになるが、これとは全く性質が異なる。なぜならルソーは一般意志について「一般意志はつねに正しく、つねに公共の利益に向かう」と述べているからだ。世論は、みんなの意思だがしばしば誤ることがある全体意志に該当することになる。 このように一般意志は人間の秩序(コミュニケーションの秩序)ではなくモノの秩序(数学の秩序)に属するため、必ずしも共同体の成員の合意は必要ではない。つまり政治にコミュニケーションは不要という奇妙な結論が導かれることになる。 コミュニケーションこの概念は常識的な意味での「政治」や「意志」からかけ離れているといえるが、現代の文脈においてGoogleのビックデータやSNS発信といった、膨大なデータ蓄積が進んだ現代社会に通じる点があり、もはやこのようなプラットフォーム上では個々人の思いを超えた無意識の欲望パターンの抽出が可能になっている(→データベース、集合知)本書では一般意志の概念全体を「一般意志」とした時、ルソーのテキストを総記録社会の現実の照らして捉え直し、それをアップデートして得られた概念を「一般意志2・0」と定義している。

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2021/07/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

とてもロマンチックな、いや、もはやロマンティークな読書でした。とくに前半。 200年以上前の社会哲学の概念で、これまではまったく現実的ではない(というか謎)と思われていた「一般意志」を、現代の情報技術の進化で実現可能なのでは?というシミュレーション論考。 この「一般意志」という概念が不思議なもので、少なくとも自分自身の常識では、国や地域などの社会の意思決定をするときに、議論を重ね反対意見と折衝しつつ妥協点を探るモデルをイメージするが、一般意志は違う。 まず政党などの結社を禁止し、議論や意見調整を否定している。しかし市民は一般意志に絶対に従わなくてはならない。 意識や利害で選んだそれぞれの主張の総意ではなく、大衆の「無意識の欲望のパターン」みたいなものらしい。 これには少し数学的な定義があり、まず、個人の欲望を「特殊意志」と呼び、特殊意志の合計を「全体意志」と呼ぶ。全体意志は世論みたいなものか。 そこからプラスとマイナスを相殺しあい、残った差異の和が一般意志だという。 現代社会は個人個人の欲望が枝分かれしすぎて共通の大きな欲望を持つことが難しい。誰かの得は常に誰かの損になる。そんな状況で意識的な議論による総意の調整は大変だ。 意識的な利害を相殺して残った方向性(意志)が一般意志だという(たぶん)。 そのなシステムでも現実的な運営をする政府は必要になるだろうが、一般意志の元で政府は、一般意志と市民の間で調整するだけの存在になる。意思決定はすでにされているので、粛々と決まったことを遂行するだけ。利権や汚職の機会はかなり減ると思う。 けど当然、そんなものどうやって可視化できるの?という話だが、この辺のジャンプが本書の見せ所で、現代はSNSやネットショッピング、日常の電子マネー決算などで自分達一人一人の無意識の欲望丸出し情報が絶えず記録されているじゃん?それって一般意志じゃね?という話。 さらに、前述した一般意志による独裁のようなシステムではなく、現状の民主主義システムの監視(ツッコミ)としてネット上に集められた無意識的総意を使ってはどうかというマイルドな提案。 後半は上記のような一般意志の実現可能性と、その有用性についての地固め的な話になる。 熱いのは、可視化不可能に思われた一般意志をネットなどの情報技術の発展で「可視化された集合的無意識」として「一般意志2.0」という概念を立ち上げる、その過程の説明。 著者の熱量 もちろん冷静に細かく筋道をたどった説明を積み重ねているが、文章から気持ちが熱くなっていることがガンガンに伝わってくる。 すっかり熱が伝わったころ、そういえば冒頭に「これから夢を語ろうと思う」という宣言していたことに気づいた。 人が夢を語る姿には元気付けられる。夢といっても、荒唐無稽な誇大妄想過ぎず、明日の晩飯が少しリッチになるようなみみっちい話しすぎず、ワクワクやトキメキを感じるような話に元気付けられる。 過去の遺物化した概念をテクノロジーで蘇らすSF的面白さ、理想主義的な一元解決を求めない中庸的なシステム。ロマンだらけ。 世間的には突出した一元的な強さ(ヒロイックな)を求めがちだが、個人的には、どこか一方に寄らず何かと何かの衝突する瀬戸際でかろうじてバランスを取りながら奇妙なダンスを踊っているような立ち振る舞いが好きだ。 それは、たぶん、狙って出来ることではなく、自分のカルマ(変えられないない言動の傾向)による衝動を感じる。 「一般意志2.0」の論理的補強として照会される、アーレントの「ゾーエー」と「ビオス」、ローティの「アイロニスト」と「相対主義の苦悩」など、初見で面白そうな考え方にも出会え、種が蒔かれた感じで楽しみ。

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2021/02/21

再読。今読み返しても、東浩紀さんの思想は変わらず、会社経営という形で実「戦」していることが分かる。分かりやすいところではシラスのコメントの流れ方を何故こうしたのか、数年の経験から悩み抜いた事がわかる。

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2023/08/18

「日本人は「空気を読む」ことに長けている。そして情報技術の扱いにも長けている。それならば、わたしたちはもはや、自分たちに向かない熟議の理想を追い求めるのをやめて、むしろ「空気」を技術的に可視化し、合意形成の基礎に据えるような新しい民主主義を構想したほうがいいのではないか。そして、...

「日本人は「空気を読む」ことに長けている。そして情報技術の扱いにも長けている。それならば、わたしたちはもはや、自分たちに向かない熟議の理想を追い求めるのをやめて、むしろ「空気」を技術的に可視化し、合意形成の基礎に据えるような新しい民主主義を構想したほうがいいのではないか。そして、もしその構想への道すじがルソーによって二世紀半前に引かれていたのだとしたら、」 誤解されやすい主張なので丁寧に読む必要がある。 テクノロジーによって可視化された一般意志に従うべきだとか、一般意志がまるで生き物のように政治を行うことができるとかいう話ではない。 モノとしての一般意志を、制約として加えるという提案だ。 地球の重力のように、あらかじめ与えらている前提条件のひとつとして考える。 イメージとしては、アメリカの建築家アレグザンダーの都市計画がわかりやすかった。 「アレグザンダーの提案は基本的には単純である。彼はまず、経路の決定に影響を与える二六の要因を抽出し、各要因の分布状況を予定地の地図のうえにプロットする。」 「この段階で、建設費用から地域の発展性や環境破壊のリスクまで、さまざまな要因の分布が色の濃淡で表現され可視化されている」 「それら二六枚の地図を「重ね焼き」する。結果として浮かびあがってくるいくつかの太い線、それがさまざまな条件をクリアした最適の経路のパターンだとアレグザンダーは考える。」 「アレグザンダーの提案を、デザインを決定するのではなく、むしろデザインに制約を与える方法論だと理解すれば、それは十分に機能するのではないだろうか。」 読了後はルソーのイメージも大きく変わった。 過去の偉い思想家みたいなイメージから一転、彼の姿は現代でいうところの「ナード」だ。 ナイーブで近しい人間関係もうまくやれないくせに、国家や政治みたいな大きなことを考えては夢物語を語る。コミュニケーションすら必要ない理想郷。 まさかルソーの人物像に、恥ずかしいような愛おしいような感覚になるとは想像もしなかった。 「人間嫌いで、ひきこもりで、ロマンティックで繊細で、いささか被害妄想気味で、そして楽譜を写したり恋愛小説を書いたりして生活をしていた。『社会契約論』は、そのようなじつに弱い人間が記した理想社会論だったのだ。  だから彼は、コミュニケーションなしの政治を夢見た。サロンなしの一般意志の生成を摑もうとした。」

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2020/07/05

新しいコミュニティというか、自治みたいなものを考える上でとても参考になる一冊。ここ数年の政府の意思決定や市民の声を集めるという文脈でモヤモヤしていたことが少しクリアになった。まとめると、今や私たちはSNSやTwitter、blogなどに様々な意見を書き込んだり、検索や購買履歴、行...

新しいコミュニティというか、自治みたいなものを考える上でとても参考になる一冊。ここ数年の政府の意思決定や市民の声を集めるという文脈でモヤモヤしていたことが少しクリアになった。まとめると、今や私たちはSNSやTwitter、blogなどに様々な意見を書き込んだり、検索や購買履歴、行動履歴などが記録されており(総記録社会)、無意識を含め自分の知らない自分が存在するかのようであるし、それを分析したりまとめたりする技術も存在している。ならば、それを表に出すことで「一般意志」とみなし、政治の意思決定に利用するべきではないかというもの。一時的な「祭り」だけではなく、数ヶ月分など期間を切って分析することも可能だろう。筆者は、現在行われている会議(国や地方自治体の議会、委員会、専門家会議)などを全てネットで公開し、ニコニコ動画のようにいつでも誰でもコメントできるようにしておけば、政治家等もその意見に耳を傾けざるを得ない状況を作れるのではと提案する。これは面白い。副題の「ルソー、フロイト、グーグル」というのも、読了して納得。「情報量の減少こそが価値」というのはビジネスのヒントにもなる。

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2018/12/27

現実味としては薄い感じがするし、たぶんルソー研究者から見たら異端なのだろうけど、「見える一般意思」という概念はワクワクしてしまう。 著者が真摯に考え抜いていることもよくわかり、その考えを一般読者に伝えたいという思いも伝わる。 賛否はあろうが、現代社会を考えるうえで目を通しておい...

現実味としては薄い感じがするし、たぶんルソー研究者から見たら異端なのだろうけど、「見える一般意思」という概念はワクワクしてしまう。 著者が真摯に考え抜いていることもよくわかり、その考えを一般読者に伝えたいという思いも伝わる。 賛否はあろうが、現代社会を考えるうえで目を通しておいた方が良い本であろうと思う。

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2018/03/14

最近読んだ本にルソーの一般意志が出ていたので、思い出して読了。 思想家・東浩紀が東日本大震災の前まで書き連ねた一冊ですが、熟議からデータベースにアップデートした総記録社会を夢想していたのが、その後の安倍政権という反動で退行してしまっているだけに、さらに遠ざかっている現実が残念です...

最近読んだ本にルソーの一般意志が出ていたので、思い出して読了。 思想家・東浩紀が東日本大震災の前まで書き連ねた一冊ですが、熟議からデータベースにアップデートした総記録社会を夢想していたのが、その後の安倍政権という反動で退行してしまっているだけに、さらに遠ざかっている現実が残念です。 だからこそ、私たちは民主主義2.0をめざしていかなくてはなりません。

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