人とのつながりとこころ 人と社会を見通す心理学 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
人とのつながりにおいてのこころの動きの研究・考察を、わりあい平易な文章で紹介する本です。編著者は3名、執筆者は15名。たとえばこういう研究考察がありました。恋愛をしている人にはポジティブな特性があるとみなす「恋愛ポジティブ幻想」、世の中の恋人がいる人の割合を実際よりも多く見積もる「恋愛普及幻想」。これらによって、恋愛をしていないと、自分はポジティブじゃない、自分は少数派だと勘違いして自尊心を傷つけてしまうそうです。昨今、おひとりさまが増えていることから、そういった「幻想」によって傷ついた人も以前よりも多くなっていそうに思えます。それで、そういった自尊心を傷つけて劣等感を持つようなことになると、がんばれなくなるという精神状態になり悪循環を生む。世の中の元気のなさの一つの理由がここにあるかも。そしておひとりさまをひとりぼっちととらえてネガティブなイメージと恐怖心を持つ人が多い。それでいて価値観の多様化などによって未婚者や恋人のいないひとり者が増えている。そういうことが意味するのは、やはり劣等感の強まりなんじゃないか、そしてそこから影響していく頑張れない精神状態を思うのです。価値観の多様化によって、人はひとりになりがちな状況に急に放りこまれた、と言えるかもしれない。あまりに急だったものだから、あっぷあっぷしているのが現代なのかなあ、と思いもしました。
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