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君が戦争を欲しないならば の商品レビュー

4.6

22件のお客様レビュー

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2024/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2015年6月29日、岡山市戦没者追悼式・平和講演会での講演記録を収録したもの。60ページほどの本で、すぐ読み終わります。 9歳のとき岡山で焼夷弾による空襲を経験した高畑勲にのる、平和への提言。大変真面目で、まっすぐでわかりやすい言葉でした。重みがあります。 高畑勲は、いままで戦争の体験を語ってこなかったという。その理由は簡単で、悲惨な戦争を語り継いだところで、 ①「あんな悲惨な戦争を繰り返さないために、武器を捨て平和憲法を守ろう」 ②「あんな悲惨な戦争を繰り返さないために、武器を持ち戦える準備をしよう」 これら両方の意見が出てくるからだと。とくに為政者は②を支持するだろうと。なるほど確かにその通りだ。 そして、日本の「責任を取らないずるずる気質」、「空気を読む」国民性が、70年前からいままで何も変わっていないという。どれだけ戦争に反対している人でも、いざ始まってしまえば、「始まったからには勝つしかない」と反転してしまう。偉大な詩人や芸術家も同じ、市民も同じだった。そして自分もきっと同じ。それが一番怖いという。 読みながら、まったくその通りだと思った。平和憲法を守り抜くしかないという結論は、現代においてはあまり響かない主張かもしれませんが、しかし、それしかないと私も思います。 緊張が高まっているから軍拡して備えなければいけない、というのが最近の流行りですが、その道はどれだけ不安定だろうと思う。 戦闘機やミサイルをたくさん持って多少強くなったとして、中国やアメリカの軍事力に対抗できるのか。それこそ桁が違う戦闘力の国に対して、同じように武器を持って準備して、誰も殺さず殺されない道をずっと歩めるか。できそうにない。ちょっとバランスを崩しただけで、戦争に転がり込むだろう。 では仮に世界一の軍隊を手に入れたところで、果たしてそれはいつまで続くか。栄枯盛衰は歴史を見れば明らかで、そんな不安定な道のりに進んではいけない。その不安定さがはっきり想像できるから、私は軍拡には賛成できない。 唯一の被爆国である日本だからこそできる、平和への歩みがあると思う。平和憲法などお花畑だという人は多いが、お花畑を目指さずして、平和な世界を作れるというのか。 笑顔で握手をしながら裏では銃を突きつけあうのが大人の世界の平和だ、という言説を何度か見かけたことがある。互いに武力を持ち緊張状態を保つことが平和だと。そんなわけあるかと思う。そういうことをずっとやってきて、失敗し続けているのが人間ではないか。武力による緊張状態を保ち続ける、という思想こそが、お花畑ではないか。 武器のない世界をどうやって作れるか、戦争をけしかけた方が損をする仕組みはどうやって成立できるか。それを考え続け、世界にも発信し続ける。それしか本当の平和への道はないのではないか、と私は思います。 半分以上、自分の思いを書いてしまった。しかし、そういう思いを抱かせる本でありました。

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2024/03/29

「ここで負けるわけにはいきません!」絶叫は、オリンピックの試合でも戦争中でも日本にこだまする。と高畑さんは言う。63ページと短いので「君が戦争を欲しないならば」読んで欲しい一冊。ずるずると押し流され、空気をすぐ読もうとする同調気質には疑問を抱いていきたい。

Posted byブクログ

2024/05/10

63ページしかない短い本だったけど、すごく整理されており、読みやすくわかりやすい。 岡山は隣の県で駅周辺はよく見知った場所だったので、高畑勲の空襲で辿った経路をなんとなく想像できた。 整備された美しい小川だと思っていた西川緑道が、防火帯のための強制疎開で開かれた道なのは初めて知...

63ページしかない短い本だったけど、すごく整理されており、読みやすくわかりやすい。 岡山は隣の県で駅周辺はよく見知った場所だったので、高畑勲の空襲で辿った経路をなんとなく想像できた。 整備された美しい小川だと思っていた西川緑道が、防火帯のための強制疎開で開かれた道なのは初めて知った。 街には歴史があり、私たちは歴史の上に生きていると思った、歴史を生かさなければと思う。 この本で高畑勲は、悲惨な戦争の体験を語っても戦争を防止することはできない、そうなる前のこと、どうして戦争が始まったか、為政者、国民がどう振る舞ったかを学び、ではどうしたら防げたのかを考えることが戦争防止になると主張する。 最後にまとめられているが、私たち日本人の同調し責任追求ができず、押し流され空気を読む気質のせいで、本当の民主主義はまだ身に付けられていないと非難している。異を唱えるものは排除される村社会であり、多数派に流され、上部の議論で全てが進んでいく。(最近の国会の様子を見ていても野党が弱く、閣議決定されたものでほとんどの法案が決められてしまっているのも危機感を感じる) この体質を変えるのは簡単ではないし時間のかかること、これを変える努力をするのはもちろん、こう言った日本人の性質から戦争への道を閉ざす最後の砦はやはり憲法9条なのだと。 安倍政権時から改憲を目指す動きが徐々に顕になってきているが、本当に恐ろしいことだと思う。 憲法9条に守られてきたことを誇りに思い、アメリカに頼らず、沖縄に依存しない外交は何かよく考えるべきだと思う。 私は日本の文化的財産を世界に発信すること、強い経済で世界に通用するインフレ基盤を持つこと、輸出産業を守ることが、防衛以外の安全保障として役割をもつ大事な抑止力になると思う。 経済を推進するにも、少子化に歯止めをかけるのも、人権が守られ戦争をしない国にするためにも今の政治(とも呼べない茶番劇)を今すぐ変える必要があると思う。 裏金問題が露呈しても、責任を取らず居座り続ける議員にはすぐに全員辞めてもらわなければ、と強く思う。 高畑勲みたいな頭が良く心がある人を亡くしてしまったのは本当に惜しく思うし、この本で言う「頭で食う」人間が多くなっていて危機感を感じる。東大をはじめとする有名大学出身のエリート層はもうどうしたら稼げるかしか考えておらず、社会の見えない弱者には関心もなく自己責任と自助で糾弾し、社会全体の利益を考えてるような志はないような人が多く見られる。そしてこの国の全体もそんな感じでみんな自己中心的で物事を考えている。 どうやったら同調することに寄らない民主主義、功利主義をみんなが身につけられるようになれるのだろう。 自分で考えて意見できるようになりたいから、私ももっと勉強しなきゃいけないと反省する。

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2023/10/29

焼夷弾の実際、日本人のずるずる体質。言葉にされて、ハッとなる。ものすごく教養のある人なのだなと感じる。

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2023/09/03

久しぶりに岩波ブックレットを読んだ。 高畑勲は単なるアニメーション監督としか認識していなかったけど、なかなか素晴らしい人物だったのだと今になって気づく。 日本がずっとやってきた「ずるずる体質」や「責任を取らない体質」は、これからも続いていく危険性がある。そのための歯止めとして憲法...

久しぶりに岩波ブックレットを読んだ。 高畑勲は単なるアニメーション監督としか認識していなかったけど、なかなか素晴らしい人物だったのだと今になって気づく。 日本がずっとやってきた「ずるずる体質」や「責任を取らない体質」は、これからも続いていく危険性がある。そのための歯止めとして憲法九条が必要なのだと高畑勲は訴える。 この考えを全て受け入れるかどうかは別として、改憲が叫ばれている世の流れの中で、護憲の主張を訴える岩波らしい本を久しぶりに読んだ感じ。

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2023/06/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

戦争なんて望んでないけど備えることは不可避な局面にあると今は思う。戦争経験者の、戦争なんてするもんじゃない、という言葉には全力で同意するけど無策のまま反対を唱えることもまたできない。国際社会は戦火が広がらないようあの手この手で踏ん張ろうとしてると思う。その中で日本は何ができるか。日本の民主主義が村八分ってのは怖いけど真実かなと思った。でも最近はマイノリティ配慮が行き届きすぎて多数派が我慢する場面も増え分断を生んでる気もする。平和への思いと流れに身を任せてしまうことの怖さを伝えたかった作なのかなと受け止めた

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2023/03/24

『火垂るの墓』『かぐや姫の物語』で知られる高畑勲が自身の戦争体験の経験や、昨今の憲法改正に向かおうとする日本への危機感が語られている。 日本は戦後70、80年足らずで、もう以前の戦争でどれだけ悲惨なことが行われたのか忘れられようとしている。 広島、長崎で原子爆弾が落とされ、亡く...

『火垂るの墓』『かぐや姫の物語』で知られる高畑勲が自身の戦争体験の経験や、昨今の憲法改正に向かおうとする日本への危機感が語られている。 日本は戦後70、80年足らずで、もう以前の戦争でどれだけ悲惨なことが行われたのか忘れられようとしている。 広島、長崎で原子爆弾が落とされ、亡くなった日本人の魂に黙祷が毎年の行事として行われようと、戦争の傷跡をもう忘れてしまったようだ。 その証拠に2023年の日本は軍事費を増やし、自民党主導による憲法改正(しかもその憲法に緊急事態条項まで追加しようとしている)への道を諦めてはいない。 本著で指摘される「ずるずる体質」「責任を取らない体質」も、この10年でどんどん酷くなっていっているように思える。 高畑勲が『火垂るの墓』で清太を糾弾しようとする意見が大勢を占める時代が来るかもしれないという危惧をしていたが、今の日本国民はそうなっているのではないだろうか……。 ロシアのウクライナ侵攻で「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」に似た主張から軍備の拡大や、憲法改正を唱える声が聞こえようとも、「もし きみが戦争を望まないなら、繕え 平和を」のプレヴェールの言葉、そして高畑勲が語る主張を信じたい。

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2022/11/21

戦争ものがわたしは悲しくなりすぎる為 読むのが苦手だが、薄い本だし高畑勲さんだし、読んでみた。 人とは簡単に 朱に交われば赤くなる 生き物だということを 高畑勲さんが仰っているのかなと感じた。 いま、読んで欲しい本です。

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2022/10/30

政治や戦争の歴史に対して、取っ付き難い印象を抱いている若者などに読んで欲しい本。この本がきっかけで、無知な自分に対して危機感を感じることができるようになった。

Posted byブクログ

2022/04/12

高畑勲氏の戦争論。自身の体験に基づく話は説得力がある。いまだからこそ、ひとりでも多くの人に読んでもらいたい本。

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