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君が戦争を欲しないならば の商品レビュー

4.6

22件のお客様レビュー

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2022/02/28

ジブリ映画でも有名な高畑勲氏の岡山市での講演会をもとにした本です。 映画『火垂るの墓』を「反戦映画」ではない、と考えている監督の想い・考えには大きな衝撃を受けました。 たしかに、戦争末期の悲惨な兄弟の様子を描き、「戦争ではこれほどまでにつらい出来事があったのだ」ということを語り継...

ジブリ映画でも有名な高畑勲氏の岡山市での講演会をもとにした本です。 映画『火垂るの墓』を「反戦映画」ではない、と考えている監督の想い・考えには大きな衝撃を受けました。 たしかに、戦争末期の悲惨な兄弟の様子を描き、「戦争ではこれほどまでにつらい出来事があったのだ」ということを語り継ぐことそのことは重要です。しかし、「戦争=悲惨」ということをいくら伝えたとしても、将来の戦争を防ぐことにはつながらない、と筆者は言います。 戦争が「悲惨な出来事だ」ということは世界中の人々が認識しているはずですが、今日また戦火が開かれようとしています。そのときに私たちはどのようにふるまうべきなのでしょうか。 「ナンセンス」なことに対して「ナンセンスである」と発言できなくなる、その理由とは何か、ということについても筆者の体験を踏まえて分析されていて説得力がありました。 あえて欲を言うとすれば、「どのように行動・思考を新ためればよい(と筆者は考えている)か」というところについても、もう少し具体的な言及があればよりよかったと思います。 日常生活の中で「空気を読む」「和を以て貴しとなす」ということはもちろん大切な要素・能力だと思います。一方で、「平和」を維持するためには「大勢に流される」ことを避けねばならない場面も出てきます。このバランスをどのようにとるのか、その判断を誤らないためにも正しい情報を集めることや、自分なりの言葉でしっかりと考えることが必要になるのだろうと思います。

Posted byブクログ

2022/02/15

戦後もうすぐ80年にならなんとしている。その間日本は憲法9条に護られ市民の戦死者を一人として出すことなく過ごすことが出来た。ありがたいことである。高畑さんの本でもこのことは書かれている。憲法9条を護持し外交を研ぎ澄ますこと。それはその通りであると思うが、今のこの情勢の中でそれだけ...

戦後もうすぐ80年にならなんとしている。その間日本は憲法9条に護られ市民の戦死者を一人として出すことなく過ごすことが出来た。ありがたいことである。高畑さんの本でもこのことは書かれている。憲法9条を護持し外交を研ぎ澄ますこと。それはその通りであると思うが、今のこの情勢の中でそれだけで日本が戦争を遠ざけることが可能だろうか?その答えは誰も知らない。現在に生きる我々が考えていくべきことだと思う。日本は元来、多民族が作ってきた国家である(このことはゲノム分析で近年明らかになってきた)。これが人さますなわち世間との同調性が強い特殊な民族性と関係があるように思える。したがって、高畑氏の唱える欧米的な声のあげ方、ナンセンスと叫ぶ気質を持ち合わせていないと残念ながら思う。もっと違う方法で平和を維持する努力をしないと力による現状変更を考えている国家と対峙することは適わない。この違う方法は今を生きる我々個人は一人一人が考えなければならないのである。

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2021/11/08

「君が戦争を欲しないならば、繕え、平和を」 理想なくして対処はできない、それを忘れた政治家は第一にも第二にも利権のために国民を扇動しているだけで、それを政治と呼んでいる現状が悲しい

Posted byブクログ

2021/04/21

倚りかかってしまう。 これは自分も含め、自分の周りでここ最近感じるていることを言っているのかもしれないと思った。 自分の意見を持たずに流されてしまう、持っていても空気を読んでしまう。流されてしまう。空気を読む、合わせる。それは状況によってはとても危険な方向に向かうことにつながって...

倚りかかってしまう。 これは自分も含め、自分の周りでここ最近感じるていることを言っているのかもしれないと思った。 自分の意見を持たずに流されてしまう、持っていても空気を読んでしまう。流されてしまう。空気を読む、合わせる。それは状況によってはとても危険な方向に向かうことにつながってしまうのだなとおもった。それが戦争に向かわせたという高畑さんの意見はとても的を得ているのではないかなと思う。 いちいち一人一人が無視してしまうことに考えを持つっていうことはやっぱり大事なことなんじゃないかと痛感した。一度危険な方向に傾いた時に、自分を頼りにできるように学んでいく必要がある。また学ぶ理由が見つかった。

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2019/09/09

火垂るの墓は反戦映画ではないと高畑は言う。 日本人の同町体質。憲法9条がなければ日本人はずるずる体質で戦争に突き進む民族であることを喝破している。空気を読む体質、反対勢力を排除する体質。高畑は読み取っている。

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2021/08/15

高畑勲さんは冒頭からこう言う。「火垂るの墓は反戦映画ではありません。」 さらに高畑さんは、国民学校(今の小学校)4年の6月29日に岡山市内で受けた空襲体験をもとにこうも言う。「戦争末期の負け戦の果てに、自分たちが受けた悲惨な体験を語っても、これから突入していくかもしれない戦争を防...

高畑勲さんは冒頭からこう言う。「火垂るの墓は反戦映画ではありません。」 さらに高畑さんは、国民学校(今の小学校)4年の6月29日に岡山市内で受けた空襲体験をもとにこうも言う。「戦争末期の負け戦の果てに、自分たちが受けた悲惨な体験を語っても、これから突入していくかもしれない戦争を防止することにはならないだろう。」 でも高畑さんは一貫した憲法9条改正反対、戦争反対論者だ。 一見、さっきあげた引用の内容と矛盾するとも思われるけど、通読して改めて高畑さんの思いについて深く考えてみると、次のような、ちょっとビックリする考えに突き当たった。 ――高畑さんは、実はこう言いたかったのではないだろうか?『14歳の清太と4歳の節子を死に至らしめた直接の原因は、アメリカ人じゃなくて日本人にあるのだ』と。 たしかに戦争の相手国はアメリカで、空襲したのもアメリカ。 でも冷静に考えてみればわかる。アメリカと戦争するように「理性を失って」「突っ走った」のは他ならない日本人である。 この本を読めば、火垂るの墓に出てくる意地悪い親戚のおばさんや、仕方なく野菜を盗んだ清太を殴る大人を持ち出すまでもなく、幼い兄妹を追いつめたのは、当時の日本全体の世相であり、そういう「全員一致」の方向に(無意識であっても)突き進んだ日本人全員にあると直視せざるを得なくなる。 もう一方で高畑さんは、「全員一致」の暗雲が別に戦時中の話だけではなく、戦後70年を経てまだ日本や日本人を覆い続けているのではと表明する。その証拠として、表現者として、火垂るの墓の評価が1つのところに“落ち着いている”ことに一種の警戒感を持っているようだ。 さらに高畑さんは、戦中の「撃ちてし止(や)まむ」「進め一億火の玉だ」というフレーズに、戦後民主主義教育を受けた日本人にとって誰もが違和感を持つのだというのは今更否定できないはずなのに、オリンピックやワールドカップなどの際に、それらと似ているとしか思えないフレーズを平気で日本人の誰もが口にすることに素直な目で疑問を持っている。 いや、そのこと自体に疑問を持つというよりもむしろ、その雰囲気からはみ出る考えや意見を、日本人全体で封じ込めたり消そうとする傾向が今も厳然と残っていることに大きな疑問を持っているという方がより近いのかもしれない。 1つの国の国民が一つの方向に全体的に進む、というのは日本に限った話でもないのは私もわかっている。しかしそういう雰囲気になった時に、そこからはみ出る弱い立場の者(まさに節子など)や異なる考えを持つ者を、有無を言わさず隅に押しやる傾向が特に日本人は強いというのを、高畑さんと同様に、もうそろそろ日本人は自覚すべきではないだろうか。 高畑さんはそれを日本人の「体質」と表現している。体質は容易には変えられないので、高畑さんは日本人が戦争をしない状態を今は保ち続けているものの、ちゃんと考えていかないと、いつか戦争やむなしという雰囲気が大勢となる日が再び来てしまうのでは、と予言している。(そしてそれを防ぐ唯一の方法が憲法9条を改正させないことと高畑さんは言及している。) 良いところだけでなく悪いところも同じように描き込むことで事象の真実に迫るいう高畑流のリアリズムは、火垂るの墓でもいい面で出ていたと私は思うけど、この本での戦争や日本人に対する考え方にもそのリアリズムが顕著に表れているように感じて、好感をもった。

Posted byブクログ

2019/02/15

私は、サッカーやフィギュアスケート、テニスをテレビで観るのが好きだ。サッカなどチームプレーは、選手は日本代表で日の丸背負っているのだろうと思う。観客が大きな日の丸を掲げるのも理解出来る。でも、フィギュアスケートやテニスの個人競技の時にも大きな日の丸を掲げるのは、違和感を覚える。昔...

私は、サッカーやフィギュアスケート、テニスをテレビで観るのが好きだ。サッカなどチームプレーは、選手は日本代表で日の丸背負っているのだろうと思う。観客が大きな日の丸を掲げるのも理解出来る。でも、フィギュアスケートやテニスの個人競技の時にも大きな日の丸を掲げるのは、違和感を覚える。昔はあんなにしていなかったと思うが。 こんな気持ちを持っている人は、他にも多いのかもしれないと、本書を読んで感じた。 自分の国を誇りに思う事は大事だ。でも、自分の国だけ良ければという考え方は、時に悪い方向に政治を向かわせる。 一度、戦争を始めてしまったら、戦争に反対していた人たちも、家族を失わないように勝つ方向に進んでいく、という高畑の考えに、目から鱗、共感を覚えた。

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2018/10/28

【由来】 ・図書館の岩波アラート 【期待したもの】 ・高畑勲、というのが最初の理由。ブックレットなら読みやすそうだし、amazonでの評価も高かった。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】

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2018/05/22

【追悼 高畑勲監督】 戦争体験を語られなかったとのことだが、こうしてブックレットという形になって残り、読むことができることに感謝したい。淡々と語られる空襲体験(再会が感動なんて嘘、ハグしない、の指摘はごもっとも。世の中そんなにドラマチックではない)、戦後民主主義第1期生として手...

【追悼 高畑勲監督】 戦争体験を語られなかったとのことだが、こうしてブックレットという形になって残り、読むことができることに感謝したい。淡々と語られる空襲体験(再会が感動なんて嘘、ハグしない、の指摘はごもっとも。世の中そんなにドラマチックではない)、戦後民主主義第1期生として手探りだった様子が、声高ではないのにリアルに感じられる。日本人は「ずるずる体質」との指摘には、日本だけではないのではと思う。WWII前のドイツもずるずるとナチに引っ張られた。英国では「The Independent」紙がイラク戦争前に開戦反対の論陣を張っていたのにいざ開戦すると「始まったからには…」の論調に変わった(ただし「The Guardian」紙は開戦後も反対のままだった)。とはいえこの講演会が行われた2015年に議論されていたことや当時の雰囲気を(そういえばこんなだった)とハッと思い、忘れかけていた自分の情けなさに気づいたこと、氏が指摘する「倚りかかる」恐ろしさは心に刻んでおかねばと思う。引用されたプレヴェールの言葉とともに。

Posted byブクログ

2018/04/13

「ずるずる体質」「責任を取らない体質」の絶対的な歯止めが、憲法九条。体質を変えるか、憲法を守るか。どちらが簡単だろう?

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