心はすべて数学である の商品レビュー
先日松岡正剛との対談本を読んだ津田一郎の著作。複雑系、カオスアトラクター、カントル集合、様々な数学的な道具立てでもって心の謎に迫る。カオスと記憶、その折りたたみ方などを始め、全体を通して非常に興味深い内容だとは思うのだが、「数学的言語」を上手く「一般の普通の言葉」に訳出できてない...
先日松岡正剛との対談本を読んだ津田一郎の著作。複雑系、カオスアトラクター、カントル集合、様々な数学的な道具立てでもって心の謎に迫る。カオスと記憶、その折りたたみ方などを始め、全体を通して非常に興味深い内容だとは思うのだが、「数学的言語」を上手く「一般の普通の言葉」に訳出できてない、そういう印象が強く残った。実際、脳と数学というのは普通想像する以上に近いものなのではないかと思っている。
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心理といえばとらえどころのないものと考えられることが多い。心は複雑で決して数学では捉えられないとも感じる。しかし、本書によれば、その本質は数学で説明できるという。 コンピューターなどの工学の知識や、脳科学の成果なども参照して、それらが数式としてまとめられるといているのである。...
心理といえばとらえどころのないものと考えられることが多い。心は複雑で決して数学では捉えられないとも感じる。しかし、本書によれば、その本質は数学で説明できるという。 コンピューターなどの工学の知識や、脳科学の成果なども参照して、それらが数式としてまとめられるといているのである。 詳細な部分はまだ理解できないが、本書は哲学的な人間評価が根本にあると感じられる。人の行動には核となる原理が存在し、それが様々な形として現れるというのである。あくまで本質に迫ろうとする研究態度に感銘した。
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数学の概念を人間の心や心と脳の関係性に適用させその仕組みを解き明かそうとした本。 脳内にカオスが存在することから、初期条件によって全てが決まる決定論的な概念だけでは脳内の処理は説明できなく、ここから人間の自由意志の存在についても言及されているのが面白かった。
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デカルトが精神と物質はそれぞれ実体であるとして以来、心と身体(あるいは脳)の関係が問題となってきたが、この問題に正面から取り組んだものをはじめて読んだ。そしてかなり納得した。第2~4章を特に面白く読んだ。(5~6章は自分には難しかった。)心とは何かについて、独自の切り口で、なおか...
デカルトが精神と物質はそれぞれ実体であるとして以来、心と身体(あるいは脳)の関係が問題となってきたが、この問題に正面から取り組んだものをはじめて読んだ。そしてかなり納得した。第2~4章を特に面白く読んだ。(5~6章は自分には難しかった。)心とは何かについて、独自の切り口で、なおかつ古今の思想を引きながら、誰にも納得のできるような筋道で論を展開している。他者とのつながりのなかで心は共有・伝播され、それに合わせて個々の脳が形成されていく。心が主で脳が従、という見方には、なるほどと思った。
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難しい! 冒頭のp27で,感覚は具体的で感性は普遍的だとの記述がある.反対のような気がするが,丁寧な説明が続く.有限の事象を想像力の力で無限の世界に導く由.それに脳の海馬が関係するそうだ.カオスの話が出てきて,さらに難しくなる.荘子の因循主義やカントル集合が出てくる??? エピソ...
難しい! 冒頭のp27で,感覚は具体的で感性は普遍的だとの記述がある.反対のような気がするが,丁寧な説明が続く.有限の事象を想像力の力で無限の世界に導く由.それに脳の海馬が関係するそうだ.カオスの話が出てきて,さらに難しくなる.荘子の因循主義やカントル集合が出てくる??? エピソード記憶がカントル集合で説明できる由.エピローグで全体を総括しており,これだけを読んでも良いのかな感じた.
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人間の可能性を感じさせる、じっくりと読んでいただきたい書籍である。 津田氏は「抽象化された普遍性」という共通項を数学と心に見出す。彼の専門は複雑系であるが脳科学にも造詣が深く、海馬の働きや写像マッピング、他者を通じた自己形成などはなにやら最新のITテクノロジー技術書を読んでいる...
人間の可能性を感じさせる、じっくりと読んでいただきたい書籍である。 津田氏は「抽象化された普遍性」という共通項を数学と心に見出す。彼の専門は複雑系であるが脳科学にも造詣が深く、海馬の働きや写像マッピング、他者を通じた自己形成などはなにやら最新のITテクノロジー技術書を読んでいるようだ。 数学者の方の本を読むと彼らの思考の柔軟さ、制限のなさにいつも驚かされる。自然現象を言語表現に落とし込んだニュートンや「証明できないことを証明」したゲーデルの不完全性定理などは冷静に捉えれば驚異的な発想力である。 一見抽象的で乱雑な概念に対して、それこそカオスのような世界において、物事の真理を突き詰めてそれを再度普遍化する。昨今AI vs 人間といった構図が取沙汰されるが知能面においては人間の持つ良さとAIの持つ良さが今後両立していくように、この本を読むと思う。
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★科学道100 / 導かれたルール 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11600264
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
・基本的には我々の思考は、離散的(つまりバラバラ)で有限なものしか扱うことができません。でも、そこに本当は連続体があると考えてみる。また、はるか彼方の一点に向かってどこまでも伸びてゆく線があると考える―それが無限です。もちろん、有限なものから連続体に近づくことができると考えるのは、過程でしかない。しかし有言からどうやって連続体という無限に想像力を近づけていくことができるのか、その思考がまさに人間の脳の思考の典型だと思っているのです。無限は数学の概念であるだけではありません。 ・そもそも、なぜ神経系は記憶という装置を作ってしまったのか?これは大きな神秘であり、問いです。環境が完全にランダムで予測できないものだとすると、記憶はそもそも役に立ちません。すべての出来事を覚えておかなければならなくなる。でもそんなことは現実的に無理でしょう。すると記憶には意味がないので、神経系が有限の材料で記憶装置を作ろうとする状況は起きなかったと思います。そういう進化的なプレッシャーはかからなかったでしょう。一方で、予測可能なことだけが起きているとすると、これもまた記憶は必要ないことになる。例えば一定の間隔で太陽が昇り沈むという周期運動は記憶する意味がないわけです。まったく同じことが繰り返し起きるだけですから、あえて言えば、ごくごく小さい容量の記憶、反射という神経の記憶だけがあればよくて、複雑な記憶などはまったくいらない。 この両極端を考えると、脳だけが複雑な記憶装置を作ったことの意味が見えてきます。自然や人間社会を含めた環境は完全に予測可能でもないし、かといって完全にランダムでもない。決定論的でもなく確率論的でもない。必然でもなければ偶然でもない。環境は途方もなく複雑なだけで、そうした偶有性(コンティンジェンシー)と呼ばれる出来事が起こる複雑な環境と向き合うために、脳は記憶という装置を持つようになったのでしょう。
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「心はすべて数学である」と言い切ってしまっているタイトルはちょっといただけない(本の中でも心=数学ということが証明されていない)けれども、少し変わった切り口から脳の仕組みや人の心を分析していて、興味深い考察も多い。特に人が認識したものを細切れにして点にまとめ、カントル集合的な構造...
「心はすべて数学である」と言い切ってしまっているタイトルはちょっといただけない(本の中でも心=数学ということが証明されていない)けれども、少し変わった切り口から脳の仕組みや人の心を分析していて、興味深い考察も多い。特に人が認識したものを細切れにして点にまとめ、カントル集合的な構造を持ったカオスファクター間を転々とさせながら記憶を定着させていくという工程には腑に落ちるところがあった。度々引用される数学の専門的な知識に関しては理解が及ばず難しく感じられるけれども、一度目を通されてみると何かインスピレーションが得られるかもしれず一興です。
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脳とは集合的な心を個々の心に落としこむための生物的な器官である、と著者は定義する。 自分の心、というものは、生まれる前から胎内で外界の情報を感覚し、それが脳を刺激する。他者の意思や思考により脳は発達していく。自分と他者の心には共通普遍事項があるのでは。その抽象的普遍的心、という...
脳とは集合的な心を個々の心に落としこむための生物的な器官である、と著者は定義する。 自分の心、というものは、生まれる前から胎内で外界の情報を感覚し、それが脳を刺激する。他者の意思や思考により脳は発達していく。自分と他者の心には共通普遍事項があるのでは。その抽象的普遍的心、というものは、数学という学問体系ではないか、と。 概念より実証ばかりが大事にされる世の中である。抽象化も好まれない気がする。どいつもこいつも二言目には具体的に、っていうもんな。いや、そんな低レベルの話ではない。 あえていえば、脳は神の心を表現する器官だ、と。それを数学で表すテクニックそのものの本ではない。数式はそんなに出てこない。けれど数学的発想で心というメカニズムを解こうとしている。これは時間をかけてなんども読みたい本。数学と自分の心のどちらにも大きな可能性を感じるぞ!
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