居酒屋の戦後史 の商品レビュー
歴史的な推移は知らなかったことも多数あり興味深く読んだ 文士というちょっと特別な職業ではあるが その酒を求めるエピソードの数々は戦後まもなくの生活を浮き彫りにしていてとても興味深い 第3~5章は戦後復興から高度成長期へと至る酒文化の流れがよく分かるしこのあたりはもともと興味が...
歴史的な推移は知らなかったことも多数あり興味深く読んだ 文士というちょっと特別な職業ではあるが その酒を求めるエピソードの数々は戦後まもなくの生活を浮き彫りにしていてとても興味深い 第3~5章は戦後復興から高度成長期へと至る酒文化の流れがよく分かるしこのあたりはもともと興味があるのでとてもおもしろく読んだ そしてそれだけでは終わらないのがさすがの社会学者 第6章での数値による分析はあまたある酒文化本のなかでも異彩を放っているのではないか? モノクロのためグラフが見づらい 文章でそれを補っているがわかりにくくやや斜め読みをしてしまったが 1)日本は格差大国・貧困大国であり 2)酒中流社会から酒格差社会へと移行 3)その要因のひとつに逆進性の酒税法がある という著者の主張は今の日本を酒(=庶民の食文化)という新しい視点から読み取った点においてこれまでにない(?)労作であると思う --- はじめに 第1章 ヤミ市から生まれた戦後居酒屋 1 1945年の酒 2 戦後ヤミ市と現代の居酒屋文化 3 屋台から横丁居酒屋街へ 4 映画に見るヤミ市居酒屋の姿 5 なぜ豚を焼いても「やきとり」なのか 6 「やきとり屋」というビジネスモデルの誕生 7 密造酒「カストリ」はどういう酒か 第2章 文士と酒の戦中・戦後 1 終戦直後の繁華街--高見順 2 ヤミ市を歩く医学生--山田風太郎 3 古川ロッパと「東京五人男」 4 どんな酒でも口にした--徳川夢声 5 カストリとクスリで書き上げる--坂口安吾 6 原稿料の代わりに酒をよこせ--内田百閒 第3章 戦後復興と酒 1 区画整理事業と駅前広場の形成 2 配給ビールの味 3 「酎ハイ」の誕生 4 酒の「戦後」の終わりと始まり 5 ビールが高級品から大衆の酒になるまで 6 昭和史の生き証人--「銀座ライオン」ビヤホール 第4章 高度成長期の酒と居酒屋 1 なぜ水割りはハイボールを駆逐したか 2 ウイスキー階級社会 3 チェーン居酒屋の誕生 4 居酒屋界の怪物・木下藤吉郎 5 新興居酒屋チェーンの系譜 6 高度成長と「酒中流社会」の成立 第5章 地酒ブームと銘酒居酒屋の発展 1 地酒ブームの到来 2 酒ジャーナリズムによる批判が果たした役割 3 名酒居酒屋の系譜 4 名酒居酒屋のメッカ・池袋 5 名酒居酒屋が生まれるまで 第6章 格差拡大と「酒格差社会」 1 女が居酒屋へ行くとき 2 日本は格差大国・貧困大国 3 衰退する飲酒文化 4 「酒中流社会」から「酒格差社会」へ 5 居酒屋が映す格差社会 6 「酒格差社会」を助長する酒税法 7 酒文化の危機
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※このレビューにはネタバレを含みます
酒という日常に深く入り込んでいるもの。 その歴史を知ることができて面白かった。 覚えているポイントをいくつか。 ・戦時中、駅は主要建築物のため爆撃を避けなければならず、駅前の建物は疎開させられた。そうやって今日の駅前の大きな広場はできた。そして新宿のようなバラックでできた闇市が誕生した。これは吉祥寺、西荻窪にも見られる。 ・戦時中、戦後当時はウイスキーはとても高く、ウイスキー原液1~3%とアルコール、といったものもあった。 ・バクダン=燃料用アルコールを薄めたもの、カストリ=清酒の粕を蒸留して作った米焼酎(芋、麦、粗雑な米) ・女性の飲酒に使う金額は男性と比較して少なく、特に戦後の1954年は極端に差があった。女性が男性と同じように、女性だけで飲むようになったのはつい最近のこと。女性が酔態を晒すのは恥だとされていた。 ・ビールは配給により庶民にも広まった。
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おもしろかった・・・ 著者自身が飲むのが好きじゃないと書けない本だと思う。トピックとしては、戦争中のお酒事情/日本人へのビールの広まり/居酒屋チェーン創業/酒格差社会・酒税法。 【戦中戦後のお酒事情】戦中戦後の話は、「とにかく飲んで酔うためのもの」という志向や、合法だった覚せい...
おもしろかった・・・ 著者自身が飲むのが好きじゃないと書けない本だと思う。トピックとしては、戦争中のお酒事情/日本人へのビールの広まり/居酒屋チェーン創業/酒格差社会・酒税法。 【戦中戦後のお酒事情】戦中戦後の話は、「とにかく飲んで酔うためのもの」という志向や、合法だった覚せい剤とお酒を併用して仕事する坂口安吾のエピソードや、闇市や密造酒といった隠れて飲むイメージからか、アルコールが違法薬物と紙一重って気持ちになった。 思い出横丁は、闇市時代のバラック飲食店街が原形のまま残されている場所らしい。そう思って思い出横丁を思い返すと感慨深い。狭いお寿司屋さんいい感じでおいしかったなー。 【日本人へのビールの広まり】戦中の配給制度で全階級にビールが広まり、また、その際、食料統制下で大麦や、米・ホップなどの副原料も一元的に管理されて各社に決まった比率で配分され、大きな工場で三社寡占により作られたことで、三社とも相対的にかなり近い、こんにちの「日本のビールの味」になったとのこと。なるほどと。 【居酒屋チェーン店】創業者たちの話もおもしろかった。「天狗」「養老乃瀧」とか「つぼ八」とか→「ワタミ」が革新を起こしていったので、今日の居酒屋があるんですね。「飯田四兄弟」ってすごい。 ちなみに著者はチェーン居酒屋の飲み放題制に苦言を呈していて、飲み放題コースじゃないと予約受付てくれなかったり露骨に誘導されたりするけど、そのせいで若者が酎ハイ・カクテルほか限られた種類のお酒しか飲めず、自分で居酒屋料理を選ぶこともできない、若者は酒文化の担い手であることを忘れるなと。たしかに自分で選んだほうが楽しいよね。 最後は、【「酒格差社会」と「酒税法」の問題】。日本社会の格差の広がりが直撃して飲酒文化にも格差が広がっていること、酒税法の逆進性について、著者の専門だからか論拠に基づいていて説得的。 ワインの話ももっと読みたいなー。
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橋本健二 著「居酒屋の戦後史」、2015.12発行。居酒屋が好きで、お酒が好きですから、楽しく読みました。でも、内容的には、総花的な感じでまとまりはなく、読後に何も残っていない感じです。失礼しました。もっと捉える軸をしっかり決めて記述されたらいいと思いました。
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昨夜は酔っ払って新山口にたどり着いたら、駅前に山頭火の像が立っていた。飲まない日は淋しい、と山頭火は語る。そうだよね。 居酒屋は江戸の煮売屋がやがて酒を出すようになって生まれた、とされていることが多いが、本書はそれ以外にも、より昔から料理屋でも酒を出したようだし、そして何より居...
昨夜は酔っ払って新山口にたどり着いたら、駅前に山頭火の像が立っていた。飲まない日は淋しい、と山頭火は語る。そうだよね。 居酒屋は江戸の煮売屋がやがて酒を出すようになって生まれた、とされていることが多いが、本書はそれ以外にも、より昔から料理屋でも酒を出したようだし、そして何より居酒屋のルーツはヤミ市ではないか、と語る。多くは立ち退きを余儀なくされたが、いまでも各地にいくつかはヤミ市由来の「横丁」が残っている。そういうところでかつて出されていたものは、豚の臓物なのにやきとり(ブロイラー以前は鳥が高かった)、メチルアルコール、密造酒粕取り。メチルはともかく、どれも憧れる。 だが現代の密造酒、ではないけれど租税回避のための発泡酒や第三のビールというやつはどうにも飲む気がしない。この違いはどこからあらわれるのだろうか。(ホッピーならよい。つまるところ歴史のないもの、自分がよくわからないものは遠ざけているだけなのかな) 文士と酒。坂口安吾は、ヒロポンで文章を書き上げる。書き上げても覚醒してしまっているので酒を飲んで寝ようとするが、ウイスキーをストレートで飲み、胃壁を傷めて血を吐いたりする。で、カストリにシフトするが、だからといってたくさん飲んでいいわけではなかろうに…。 安吾はそれで、ウイスキーは水か炭酸水で割るべし、と述べるのだが、ハイボールは近年まで駆逐された状態だった。炭酸水が高かったし、食中酒なら水のほうがあっただろうし。そこからウイスキー階級社会、見せびらかし社会の話にも入っていく。 最後は酒格差社会。また格差か。ビールの酒税が高いのはかつて高級酒であったからであって、そしていままた大衆酒から高級酒へとその座をシフトしている。庶民たる僕はやはり偽ビールとしての第三のビールを飲むべきだろうか。 たまたま、自分の生まれ〜育ち〜今住んでいる所の居酒屋状態が比較されていたところもあったりして、自分の飲酒姿勢を改めて問われるよい本だったし、酒と酒飲みと酒場の歴史としてもよい。
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もう読み手からいったら「史」に興味を示すよりもはるかに、紹介されているもろもろの店やメニューに「行ってみたーい」「飲んでみたーい」と、そんな欲求ばっか感じるのではなかろうか。呑み助にとってはほんとに良書。 あと、僕が(やや)ひいきにしている天狗が好意的に紹介されててよかった。
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実感していた事象もかなり出てきており,楽しく読めた.焼き鳥の名前の由来は納得できるものだ.最後に出てくる酒に対する税制の不合理な問題は,ぜひ解決して欲しいものだ.格差の是正を解消する非常に良い視点だと感じている.
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前半は、戦後のカストリ、バクダンなど大衆酒の変遷から、坂口安吾、高見順、内田百閒ら酒豪文士の伝説トリビアよせあつめ。 後半に社会階層研究者としての本分(?)をおもいだし、社会階層と酒消費量による現代日本の「酒格差」分析へ。もう本領がどっちかわからないけど、酒飲みには面白いと思い...
前半は、戦後のカストリ、バクダンなど大衆酒の変遷から、坂口安吾、高見順、内田百閒ら酒豪文士の伝説トリビアよせあつめ。 後半に社会階層研究者としての本分(?)をおもいだし、社会階層と酒消費量による現代日本の「酒格差」分析へ。もう本領がどっちかわからないけど、酒飲みには面白いと思います。 社会階層によって「何を飲むか」の飲酒文化が異なっていた時代から、「貧乏はどの酒も飲まず、金持ちはなんでも飲む(大意)」の一元傾向への変化。 新書なのでざっくりしすぎなとこはありますが、日本のヘンテコな酒税制度がもたらす逆進性への指摘は鋭いです。 (小林)
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確かにそうだったと頷いてしまう(もっとも知らない時代もあるのだけれど)。自分が社会人になった頃はまだ日本酒はだめだったもんなあと思い出したり、バブル景気がなければ今の日本酒はなかっただろうなあと思ったり。何よりも著者が日本の酒環境によくなってもらいたいと思っているのがよくわかる。
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西荻にはまだ闇市時代の建物が残る居酒屋がある。たしかにあった、汚かったがいい雰囲気でした。 焼きトンを焼き鳥と呼んでいる肉を串に刺して焼く事を焼き鳥という言う。
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