イデアの影 の商品レビュー
数年ぶりの森さんの世界。 夢と現実が入り混じって、脳が混乱するけれど、少しずつ神様のもとにお返しするということだけは染み渡った。 神様を信じてはいないのだけれど。
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綺麗な幻想小説だけれど、谷崎潤一郎没後50周年としては変態的要素が少なかったか。 とにかく装丁が良いので単行本で買うべし。例え読まなくとも。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
谷崎潤一郎没後50年・生誕130年の谷崎潤一郎メモリアルイヤーに 中央公論新社から出版された小説。 谷崎潤一郎の「細雪」が扉に引用され、オマージュとなっている。 ミステリーというよりかなり文学的。 不思議な雰囲気を纏った物語だ。 装丁も合っていて、真っ白な本に透明なカバーという とても美しいものになっている。 イデアの影と言えばプラトンの洞窟の比喩。 段々と夢と現の境がわからなくなっていき、 そもそも何が現実だったのかもわからず、 ふと気がつくと底しれぬ恐ろしさを感じる。 「命を少しずつ丁寧に神様にお返しする」 「死の理由は生なのだ」 という言葉が良かった。
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なんだろう…純文学のような作品はどちらかと言えば苦手だし、幻想小説はあまり読まないし、谷崎潤一郎も読んだことがないからどの辺りがオマージュなのかは分からなかったけれど、この作品は読みやすく、引き込まれた。文章が淡々としているからかな?温度がない感じが森博嗣っぽい。 色々考察は出来...
なんだろう…純文学のような作品はどちらかと言えば苦手だし、幻想小説はあまり読まないし、谷崎潤一郎も読んだことがないからどの辺りがオマージュなのかは分からなかったけれど、この作品は読みやすく、引き込まれた。文章が淡々としているからかな?温度がない感じが森博嗣っぽい。 色々考察は出来るけれど、作品の中で描かれたことを一旦そのまま受け止めてみてからかな。
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神様、神様、私は美しく生きられましたか? お預かりした魂を、美しいままに返せましたか? 私は美しいものを見れましたか? 世界は美しいですか? 私の見ているのは、現実ですか? 夢ですか? 現実って、なんですか? 私は生きていますか? 死んでいますか? 死ぬってなんですか? 生き...
神様、神様、私は美しく生きられましたか? お預かりした魂を、美しいままに返せましたか? 私は美しいものを見れましたか? 世界は美しいですか? 私の見ているのは、現実ですか? 夢ですか? 現実って、なんですか? 私は生きていますか? 死んでいますか? 死ぬってなんですか? 生きるってなんですか? あぁ、でも神様。 私はきっと美しいものを見ました。 ありがとうございます。 そんな言葉が溢れてくる一作。 内容は、「私」の周りで、親しくなった人が死んでいき、 「私」は療養所に行き、 出会い・・・別れ・・・ これは病が見せる幻覚? 現実? そんな話です。 心に残る美しい一作でした。
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せかいが、わたしが、壊れていく。ひと片ずつ。 銀でできた鳥籠、が、雲の籠掛けから落ちたとき、大空へ飛び立つのは一羽の白い鳥か。それとも。 喪うことの美しさを堪能する作品なのかな? と思ったりしました。
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千歳図書館から借り出し。 白い表紙に白いレースが描かれた透明のカバー。 レースは薔薇、梟、窓、メリーゴーランドの模様が描かれている。 各章のタイトルは、 プロローグ 薔薇の小径の人 異邦の少年の歌 療養所のハモニカ 季節を見送りながら エピローグ となっている。 内容は耽美趣...
千歳図書館から借り出し。 白い表紙に白いレースが描かれた透明のカバー。 レースは薔薇、梟、窓、メリーゴーランドの模様が描かれている。 各章のタイトルは、 プロローグ 薔薇の小径の人 異邦の少年の歌 療養所のハモニカ 季節を見送りながら エピローグ となっている。 内容は耽美趣味な、映画「ブラックスワン」が近いだろう。 谷崎潤一郎の没後50年(著作権が切れる)記念作品として書かれ、各章の冒頭引用文は谷崎潤一郎「細雪」から。 イデアとは、もともとは、ものの見える形、ものの外観という意味だが、プラトンはこれに理性によって認識できる真の実在という意味を与えた。感覚でとらえられる日常世界のものが生成消滅する不完全な時間的存在であるのに対して、イデアは移ろいゆく感覚的な物事の原型・模範であり、永遠不滅の真の実在である。 ~プラトンは個々の事物はイデアの不完全な模像、イデアの影のようなものであり、イデアを分かちもつ限りで存在性をもつというイデア論を説いた。 濱井修、小寺聡(2014) 倫理用語集 山川出版社 p45
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図書館で、綺麗な装丁に一目惚れ。森さんのお話はシリーズものが好きなんですが、あまりに綺麗な本だったんで。 幻想小説……うん。そうだな。赤目姫に通じるような……通じないような…… 生死感が森博嗣節(笑)ある意味四季シリーズに通じるものがあるような。 装丁も雰囲気も好きだけど、なん...
図書館で、綺麗な装丁に一目惚れ。森さんのお話はシリーズものが好きなんですが、あまりに綺麗な本だったんで。 幻想小説……うん。そうだな。赤目姫に通じるような……通じないような…… 生死感が森博嗣節(笑)ある意味四季シリーズに通じるものがあるような。 装丁も雰囲気も好きだけど、なんとなくモヤッともする一冊。
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年の離れた夫と家政婦と暮らす彼女。会社社長である夫は、時折手を挙げるが二人は静かに暮らしている。 そんな彼女の周りに現れいなくなっていく男たち。心のバランスを崩していく彼女。 谷崎純一郎の小説にインスパイアされたのであろうか、章ごとに「細雪」の一部が掲載されている。 森博嗣は、...
年の離れた夫と家政婦と暮らす彼女。会社社長である夫は、時折手を挙げるが二人は静かに暮らしている。 そんな彼女の周りに現れいなくなっていく男たち。心のバランスを崩していく彼女。 谷崎純一郎の小説にインスパイアされたのであろうか、章ごとに「細雪」の一部が掲載されている。 森博嗣は、こんな小説も書くのだ。
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『それは、もう何度も何度も考えた。繰り返し疑問を言葉にした。でも、答はない。たとえ答があっても、元には戻らない。そして、幾度も言葉を重ねることで、その言葉を軽くしようとしているみたいで嫌だった。現に、今では涙も流さずに、それは考えることができる。 悲しさは遠ざけることができるのだ...
『それは、もう何度も何度も考えた。繰り返し疑問を言葉にした。でも、答はない。たとえ答があっても、元には戻らない。そして、幾度も言葉を重ねることで、その言葉を軽くしようとしているみたいで嫌だった。現に、今では涙も流さずに、それは考えることができる。 悲しさは遠ざけることができるのだな、と思った。』 「この丘に眠る者たちの影が踊っている」 「お墓のこと? ー あの石は、お墓なの?」 「優しく痩せ衰えて、綺麗に死のうとした人たちだよ ー 命というものを嫌ったわけではなくて、ただ、少しずつ、丁寧に、神様にお返しすることにしたんだ」 「墓標はなにも語らない。言葉がいらないことが、美しさと正しさを物語っている。羊飼いのラッパを聴いてごらん。それは、みんなの命をつないでいる。だから、迷っている命が集まってくる。愛情とか欲望なんて、土の中へは持ち込めない。悲しみだっていらない。静かにじっとしているのに、そんなものは余分なんだ。そうでしょう?」 『自分が弱っていくのがわかった。 これは、ゆっくりと、命を少しずつ神様に返しているのだ、と思った。』 『あのディーゼルカーに並んで座り、窓の外を眺めているときは幸せだった。幸せというのは、躰を寄せて、同じものを見ることなのだと思った。』 『何故、生きているものは死んでしまうの? ずっとそのままでいられないのかしら? ずっとでなくても、もう少しだけでも、そのままでいられないの? 悲しいことが好きなのね、きっと。』 『いつだって、影は彼女と一緒だった。楽しいときも辛いときも、喜びに溢れる一瞬も悲しみに沈む長い夜も。みんないなくなってしまったけれど、彼女はまだ生きている。自分はここにいる。命をすべて返しきれていない。 神様、もう少し待って下さい。 もう少しですよね?』 『神様から命をお借りして、この死というものを体験させてもらう。 そんなツアーを、人生と呼ぶのだ。』 『ここには、彼女しかいない。 この孤独が、彼女のすべてであって、同時に、この上なく愉快だった。 神様、どうもありがとうございます。 こんな、楽しさをいただいて、いえ、お貸しいただいて。 でも、いつ返せば良いでしょうか? もう、そろそろですよね? ちがいますか?』 「誰だ、お前は」 「私? えっと、名前は思い出せないわ。でも、もうお墓に名前が彫ってある大丈夫なの」 「あっちへ行ってろ、関係ねぇだろ」 「関係ないわ。でも、そうだ…、そのナイフ、それで私を刺してくれない?」 「何だとぉ?」 「良い機会だと思ったの。もう、これくらいで良いのかしらって」
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