ぼくが弟にしたこと の商品レビュー
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虐待連鎖の話。 原題は「蝶々の木」 蝶の好きな弟による(蝶の捕食者である)大蜘蛛が2階にいると怖がるエピソードが、最後まで読み原題を知った後でじわじわ効いてくる。 ラストの自由に飛び回る蝶々。 弟と一緒に完成させた蝶々のパズル。 蜘蛛の糸のように心を縛る虐待の呪縛から逃れることができた兄に重なる。 話がリアル過ぎて大人から子どもに進んで与えるのはためらうが、人生のうちの何処かで出会ってほしい本。 暴力と躾をセットにしてはいけない。 子どもが大人を変える事はできない。 親のせいで歪んでも、自分で自分を変えなければ前に進めない。 本質を直球で投げかけてくれる。
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色々考えさせられる物語でした。 今、平和に暮らしている子でも、殴りたい衝動に駆られることはあるだろうし、境遇が似ていなくても何かしら心に響くものがありそうで、でもさほど長い物語ではないので、高学年でお勧めしたい一冊でした。 四つ年下の弟を力任せに殴ってしまった6年生の兄が主人公。物語は淡々と自分の気持ちを吐露して綴られていく。あんなに殴ってしまったことは後悔しているが、その時湧いてきた怒りにそうすることしかできなかったのだ。3年前に両親が離婚し、母と弟と3人で暮らしている。父からは幼い頃から殴られていて、何か失敗すると「お前はダメだ」と強く言われていた。父のせいで失敗する怯えた子どもになっていたようだが、もちろんその父は自分の正当性だけを信じている。 主人公は対面した時に、父に殴った事を謝ってもらおうと思って話をする。まだ怖い気持ちがある父に対し、決心してなぜ殴ったのか聞くが、父は1度や2度はあったが…。と、悪いなどとは思っていない。昭和には、時々いたタイプか? その怖さから逃れるために、弟は空想の力で本能的に逃れる行動や思考になっていたのだと思う。 トラウマから解放されるのは大人でも大変だが、小学校6年生で自分の内面と向き合い、弟や母の気持ちまで考える。それが無理なく描かれている忘れられない物語だった。
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タイトルからして「重いぞ、これは」と思いましたがやっぱり重かったです。 子供は親を選べないし、嫌だからと言って逃げ場もない。 父親が「ぼく」にしたことが、「ぼく」が弟にしたことに繋がって、でも、このお話ではそれがなんとか断ち切れてよかった。(明言されていませんでしたが、きっと父親...
タイトルからして「重いぞ、これは」と思いましたがやっぱり重かったです。 子供は親を選べないし、嫌だからと言って逃げ場もない。 父親が「ぼく」にしたことが、「ぼく」が弟にしたことに繋がって、でも、このお話ではそれがなんとか断ち切れてよかった。(明言されていませんでしたが、きっと父親は誰かからされたことを断ち切れなかったし、断ち切るのを手伝ってくれる人もいなかったのでしょう) しつけとか、教育とか、そういう正しいような言葉で覆えばまかり通ってしまう暴力(精神的な暴力も)って、いやだなあ。
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岩瀬さんは、子どもの微妙な感情を語らせるのが上手い作家だから、こらも父に殴られていた子どもの気持ちが伝わって、大人でも読むのが辛い。 これまでも、子どもがおかれた苦しい状況を描いてきた作家ではあるが、ここまでストレートに書かれると怯む。大人向けの本なら良いが、児童書でこのストレー...
岩瀬さんは、子どもの微妙な感情を語らせるのが上手い作家だから、こらも父に殴られていた子どもの気持ちが伝わって、大人でも読むのが辛い。 これまでも、子どもがおかれた苦しい状況を描いてきた作家ではあるが、ここまでストレートに書かれると怯む。大人向けの本なら良いが、児童書でこのストレートさは、読み手である子どもには厳しすぎるのではないか。せめて再会した父に、一瞬でも、自分のしたことは間違っていたのでは、と思わせるシーンがあったら救われたのに。虐待をしつけと言い、パワハラを指導と言い、いじめをふざけただけと言う人は、本気でそう思っており、ちょっとやそっとのことでは考えを改めることはないし、自分がやったことも忘れてしまうことが多いのだが、それをそう書いてしまっては児童文学としてはあまりに救いがない。 そもそもなぜ父に会ってみようと思ったのかの描写がない。 こういう難しいテーマを真っ向から書いた勇気は買うが、『「うそじゃないよ」と谷川君は言った』のように(これは岩瀬作品の中でも名作)第三者に語らせた方が良かったと思う。 終わり方も、もう少し希望が欲しい。 挿し絵も、母親の疲れきった顔や、父親の自分勝手な様子、怯えた弟が見る巨大な蜘蛛など、リアル過ぎて逃げ場がない。
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ささいなことで怒りを爆発させ、弟を殴ってしまったぼくは、あの怒りの出どころについて考える。次々と思い浮かぶのは、父に殴られていた日々のこと。その時自分が感じていたこと。 友だちの黒田は、優しい2番目のお母さんに気を使ってちょっと疲れてる。「ときどき、自分のことを大人か、とおもうよ...
ささいなことで怒りを爆発させ、弟を殴ってしまったぼくは、あの怒りの出どころについて考える。次々と思い浮かぶのは、父に殴られていた日々のこと。その時自分が感じていたこと。 友だちの黒田は、優しい2番目のお母さんに気を使ってちょっと疲れてる。「ときどき、自分のことを大人か、とおもうよ」という黒田の気持ちがわかる。大人にならなくてはいけない子どもたちの、苦しさが胸にせまる物語。 重い。救いがないわけではないけれど。救いが外からもたらされることもない。否応なく大人になる子どもの切なさ。
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3年前に両親が離婚して、母親と4つ年下の弟と3人暮らしの6年生の麻里生は、彼のジグソーパズルを勝手に見ていた弟をひどく殴ってしまい、母から責められる。 しかし、麻里生本人も、その時強烈な怒りがこみあげてきたことに驚いていた。 麻里生はよく父親に殴られていた。 でも「父は、ぼくをなぐったあと、あやまったりはしなかった」。 自分が殴られたことは、思い出すのも嫌だし、今まで思い出さないようにしていた。 親方の暴力や、離婚や再婚という大人の事情に振り回されながらも受け入れることを余儀なくされる子どもたちの心情を描く。 まずこれを読んで思ったのは、この本を読む子ども達は大丈夫なのか?ということ。 親からの暴力という、子どもとしては最も辛い事柄に触れてある本です。経験のある子はもちろん、ない子も、感受性の強い場合には特に、ショックじゃないのかなぁ? さらに、16ページの麻里生から弟への暴力と109ページの父親から麻里生への暴力シーンの挿絵が全く同じ構図で、負のスパイラルを意識したんだろうけど、かなり怖い。 最終的に彼は父親からの謝罪は引き出せないまま、弟に謝ることはできたけれど、自分を癒すことはできなかった。ここで手を差し伸べてくれる大人の存在でもあれば希望が持てるのに……。 かなり現実に近い描写をしているとは思うけれども、ショッキングな事実をただ伝えることがいい本だとは思わない。 成長途中の子どものための本であれば、読者がどう感じるかまで考えて書いて欲しい。
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離婚して母親と弟と3人で暮らすことになった麻里生。些細なことで弟を過剰に殴ってしまったことから、父親と自分の接し方などを思い出し、心の中の不安や揺れと向き合うことになる。 思春期の入り口に立った主人公の複雑な気持ちと成長。 子どもが読むなら、かなり読書力のある子にすすめたい。
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2016_013【読了メモ】(160128 18:55) 作 岩瀬成子、絵 長谷川集平『ぼくが弟にしたこと』/理論社/2015 Nov/2Fには蜘蛛がいたんだよ、と蝶好きの弟が言う。殴るのは弱いからだ。
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