ドール の商品レビュー
「文藝」2015年冬季号掲載作の単行本化。文藝賞受賞。 二十一歳の女性がこれーー思春期の男子の劣等感や屈折した性欲という闇の部分ーーを書けたことに衝撃を受けた。審査をした作家たちが激賞しているのも納得できる。 母子家庭でいじめられっ子の男子中学生のモノローグで語られる。子...
「文藝」2015年冬季号掲載作の単行本化。文藝賞受賞。 二十一歳の女性がこれーー思春期の男子の劣等感や屈折した性欲という闇の部分ーーを書けたことに衝撃を受けた。審査をした作家たちが激賞しているのも納得できる。 母子家庭でいじめられっ子の男子中学生のモノローグで語られる。子供の頃リカちゃん人形で遊ぶのが好きで、小4からは人形で自慰をしていたが、中学生になってラブドールを通販で購入しユリカと名付けて大切に優しく扱って自室に隠していた。 一緒にいたくて学校に持って行ったラブドールの腕をクラスメイトに見つけられてユリカを貸したが、大切にしていたラブドールのバージンは奪われてしまった。 「ユリカが憎い。僕は彼女に裏切られ、失望させられ、未來を壊された。」と感じた少年の心は壊れてゆき、ユリカという名前の元になった気になる同級生の後藤由利香へと彼の狂気は向かっていく。
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ラブドールを愛する中学生。リアルな感情や表現に、ページをめくりたいようなめくりたくないような感覚を覚えた。 人間のユリカと人形のユリカ。2つの存在に揺れる彼の心はとても不安定で、しかし真っすぐだ。 彼はどのような大人になるんだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第52回文藝賞受賞作。狂気に満ち溢れている作品である。歪んだ愛と性が交錯する感じが非常に良かった。良い意味で気持ち悪く、読んでいてゾクゾクする。ドールを愛する少年の歪んだ性癖に飲み込まれてゆく。そんな感覚がある。主人公が全体的に狂ってるんだけど、終盤のくるいっぷりと気持ち悪さは凄まじいものがある。次回作も期待したい。そんな作家である。
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主人公の吉沢は、クラスメイトにいじめを受けている。 吉沢の唯一の慰めは、ラブドールの「ユリカ」だった。 いじめを受けている少年が主人公のお話はたくさんあるけれども、この本は後味が悪く、救いがないように思えた。 主人公の描写は、「こんな性格じゃいじめられるのも無理ない」「キモイ」...
主人公の吉沢は、クラスメイトにいじめを受けている。 吉沢の唯一の慰めは、ラブドールの「ユリカ」だった。 いじめを受けている少年が主人公のお話はたくさんあるけれども、この本は後味が悪く、救いがないように思えた。 主人公の描写は、「こんな性格じゃいじめられるのも無理ない」「キモイ」って感じ。 けれども、現実ってこんな感じかも。 そういう意味では、リアルな小説だった。
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彼女は僕が今まで見てきたどの女よりも高潔で美しかった。長谷川にユリカを見せるのを、急に恥ずかしく感じた。あまりにも好きな存在を誰かに見せるのは、悲しくなるくらい恥ずかしい。 (P.123)
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2016/1/12 ユリカを愛する僕。ダッチワイフのユリカ。クラスメイトのユリカ。虐められる僕。 未成年の犯罪?わたしの好みど真ん中!と思いきや、拍子抜け。モヤモヤとすっきりせず読後感も悪い。
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人形に性的愛着を示す陰気な中学生の主人公。 すごく歪んでいる、理屈すら通っていない。けれどそんなことはどうだってよくて、ただぐっちゃぐちゃな彼の気持ちだけが大事で、そういうぐちゃぐちゃな私の年齢からするともう懐かしい、としか感じなくなってしまった部分、よく文章にしてくれたなぁと。...
人形に性的愛着を示す陰気な中学生の主人公。 すごく歪んでいる、理屈すら通っていない。けれどそんなことはどうだってよくて、ただぐっちゃぐちゃな彼の気持ちだけが大事で、そういうぐちゃぐちゃな私の年齢からするともう懐かしい、としか感じなくなってしまった部分、よく文章にしてくれたなぁと。 あとわたしお人形とかぬいぐるみに過剰に愛着を示す性質があるのでユリカに裏切られた気持ちとか彼女とはそういうんじゃないとか、そういう部分すごく共感できた。
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こんな話だとは想像せずに手に取ってしまった。今の気分には全く合わず後悔。文章は読みやすいし、主人公の感情もダイレクトに伝わってくるから、作品としてはマル、なんだろうなぁ。
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ドールってラブドールのことだった。 今どきはそんな風に呼ぶのね。なるほど。 個人の好みなのでそれを良いか悪いかなんて言う権利はないけれど、中学生なら生身の人間に興味を持ってもらいたいなぁ。 学校で不安定な立場にあるようだから、文句を言わない人形を相手にすることで癒やされていたと...
ドールってラブドールのことだった。 今どきはそんな風に呼ぶのね。なるほど。 個人の好みなのでそれを良いか悪いかなんて言う権利はないけれど、中学生なら生身の人間に興味を持ってもらいたいなぁ。 学校で不安定な立場にあるようだから、文句を言わない人形を相手にすることで癒やされていたということかしら。それなら少年の救いになっていたのか。 いやいや、同級生の女子への接触の仕方が不自然だからそれはないかぁ。 内面的なことって生活していく中ではみ出さない程度に矯正されていくものなのかな?
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何とも不愉快な話で。 少年の闇の部分だけを抽出するとこうなるのかな。 欲望だけが、何の根拠もなく暴走する。ドールへの偏愛ってその純粋な部分だけに光をあてる作品が多いけど(映画の空気人形みたいに)、これは辛いなぁ。
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