ヨイ豊 の商品レビュー
浮世絵の画集を見ながら読みました。歌川豊国の絵を愛し、四代豊国を名乗った清太郎に、豊国の名前を守ろうとした弟弟子の八十八。浮世絵は浮き世を彩り写す。憂き世は、浮き世だ。書いて書いて書き倒して。ふすまの破れ目に貼り付けて、飽きたらまた新しいのを上から貼り付ける。遺すものではない。芸...
浮世絵の画集を見ながら読みました。歌川豊国の絵を愛し、四代豊国を名乗った清太郎に、豊国の名前を守ろうとした弟弟子の八十八。浮世絵は浮き世を彩り写す。憂き世は、浮き世だ。書いて書いて書き倒して。ふすまの破れ目に貼り付けて、飽きたらまた新しいのを上から貼り付ける。遺すものではない。芸術作品でもない。それでも、江戸から明治へ移る時代の流れの中で、浮世絵を守ろうとした彼らには胸が熱くなる。八十八が近くにいたら楽しいだろうなぁ。
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とにかく名前がややこしく冒頭から苦戦。 そのうちしっくりしてくると、筋はおもしろいのでどんどん読める。 浮世絵、錦絵は一般的なものしか知らないので、注釈でどんなものかつけてくれたら親切だなぁ。それじゃ小説じゃなくなっちゃうか? ご一新でなにもかも変わってしまうやりきれなさがよくで...
とにかく名前がややこしく冒頭から苦戦。 そのうちしっくりしてくると、筋はおもしろいのでどんどん読める。 浮世絵、錦絵は一般的なものしか知らないので、注釈でどんなものかつけてくれたら親切だなぁ。それじゃ小説じゃなくなっちゃうか? ご一新でなにもかも変わってしまうやりきれなさがよくでていた。
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風景画で知られる広重はほぽ幕末の人だが、明治を知らずに錦絵の絶頂の中で死んだ。 主人公たち次の世代の絵師は、先代たち錦絵の絶頂期から維新後の衰退期までを、幕府の消滅と併せて経験することとなる。 二代目国貞を主人公に配したのは、作者の慧眼というべきだろう。
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幕末から明治にかけての江戸・東京…。 西洋にかぶれた、文明開化の名の下に、 江戸文化の花形、浮世絵の衰退に喘ぐ、 四代目歌川豊国の姿を描いています…。 この時代を題材にした小説となると、 やはり、幕末の動乱を描く作品が多く、 時折、後の財閥を築いた人物の一代記、 が見られる感じ...
幕末から明治にかけての江戸・東京…。 西洋にかぶれた、文明開化の名の下に、 江戸文化の花形、浮世絵の衰退に喘ぐ、 四代目歌川豊国の姿を描いています…。 この時代を題材にした小説となると、 やはり、幕末の動乱を描く作品が多く、 時折、後の財閥を築いた人物の一代記、 が見られる感じですが…、 そのような中で、本作品は、 江戸の文化や庶民の様子を描いており、 その点だけでも、興味深かったですし、 その興味に応えてくれる作品でした…。 後半からは、時代のうねりとともに、 お語も、大きく展開はしていきますが、 魅力のあるキャラクター設定に対して、 でも、お話は、そこそこ…までかな~。 評価は、少し甘めな感じです…。
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幕末から明治にかけての浮世絵のあり方がよく分かる.清太郎と八十八の兄弟弟子の葛藤や愛憎半ばする思いが,伝統の継承や芸術性にぶつかって,熱い情熱が溢れるようだ.歌舞伎の世界も勉強になった.私は歌川国芳が好きなので,三代豊国との確執など面白かったです.
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本作の舞台となるのは幕末から明治初期の江戸。黒船の来航以降西洋から押し寄せる文明開化の波の中、徳川の世と同様に終わりを迎えつつある浮世絵、そして歌川の名を守ろうとする絵師・清太郎と八十八をめぐる物語である。 時代物を読み慣れている人であれば気にならないのかもしれないけど、前半は...
本作の舞台となるのは幕末から明治初期の江戸。黒船の来航以降西洋から押し寄せる文明開化の波の中、徳川の世と同様に終わりを迎えつつある浮世絵、そして歌川の名を守ろうとする絵師・清太郎と八十八をめぐる物語である。 時代物を読み慣れている人であれば気にならないのかもしれないけど、前半はほとんど物語が動かず、読み進めるのが若干しんどかった(似たような名前が立て続けに出てきて混乱したこともある)。後半に入り、時代の変化に登場人物たちが翻弄され始めるあたりからはなかなか面白く読めた。今昔問わず、欧米のものこそ価値があると見做し、受け継がれてきた大切なものを簡単に失ってしまう日本人に対する痛切な皮肉としても読める物語だと思った。 読む前は意味不明だった「ヨイ豊」のタイトルについて、物語終盤でその意味が明かされる。なるほどなあといった感じで、読み終えるとこれしかないと思えてくる。
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守っていくものと、新しいものを作り出していくものたち。 変化していくことがいいことなのかどうか。 絵に生涯をかけた愚直な男たちの物語。 「浮世絵」についても、海外から評価されたことにより、我々もその価値を認めることになるのだから…
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浮世絵の終焉を描いた傑作。三代歌川豊国の跡目を誰が嗣ぐのかという興味を縦糸に、円熟期を過ぎ行く浮世絵界の人間模様が描かれていく。史実に基づいて肉付けされたであろう登場人物達の愛憎が生き生きとして語られ、読み始めたらやめられなくなった。 やがて明治、瓦版は印刷機械を使った新聞に変わ...
浮世絵の終焉を描いた傑作。三代歌川豊国の跡目を誰が嗣ぐのかという興味を縦糸に、円熟期を過ぎ行く浮世絵界の人間模様が描かれていく。史実に基づいて肉付けされたであろう登場人物達の愛憎が生き生きとして語られ、読み始めたらやめられなくなった。 やがて明治、瓦版は印刷機械を使った新聞に変わり、まず彫りや摺りから熟練の職人が廃業していく。江戸がなくなり、明治となった世で江戸絵と言われる浮世絵は残せるのか。歌川一門は守っていけるのか。二代国貞、清太郎の迷いを激動の時代の中で浮き彫りにする手腕は見事。 著者の他の作品と同様に登場人物たちの造形はすばらしいが、中でも八十八と芸妓みな吉が秀逸。八十八が両手で清太郎の右手を持って絵を描かせようとするシーンには目頭が熱くなった。また著者には珍しくみな吉との色っぽいシーンがあるのも見逃せない。この二人には、スピンオフ短編などでまた出会いたいものだ。 各章のタイトルには梅がつく言葉が並ぶ。物語中にも清太郎が梅を愛でるくだりが現れるが、梅堂、梅蝶楼と号した二代国貞をもじっているのだろうか。 扉絵は一ノ関圭である。絵師の迫真を描いた見事な絵だ。『茶箱広重』や『鼻紙写楽』を再読したくなる。
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