恋歌 の商品レビュー
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恋歌 著者:朝井まかて 発行:2015年10月15日 講談社文庫 初出:2013年8月発行単行本(講談社) *第150回(2013年下期)直木賞受賞作 歴史検証をするノンフィクションの大書(「ラジオと戦争」)とか読んでいると、楽しめる小説が無性に恋しくなる。どれを読んでも面白い朝井まかての文庫を少し前に買ってあったので、貪るように読んだ。朝井まかて作品といえば、女性を主人公に、市井の生活感あふれる日常を描いたものが多く、平凡な人間なりの頑張りで、苦労をしながらも最後にはうまくいく、それも大成功ではなく、そこそこいい人生に落ち着く、といった趣の小説を期待する。ところが、この小説は珍しく結構きつかった。読むのがしんどくなるような部分もあったが、でも最後はきっとうまくいくと信じることができたので読み切ることができた。読んだ後で、これが直木賞作品だと知った。 明治の歌人、中島歌子の数奇な生涯を描いた作品だという。中島歌子は、樋口一葉の和歌の師匠でもあり、この小説は、一葉の姉弟子でもある作家の三宅花圃(田邊龍子)が、世を去る直前の中島歌子の手記を読むスタイルで書かれている。舞台は江戸時代の水戸。江戸で池田屋という宿屋に生まれた登世(歌子)は、兄がいたが、母親がその接客の才を見抜いて宿屋を継がせるべく婿を取る算段をしていたが、水戸藩士で宿屋の客であった林忠左衛門以徳(もちのり)に一目惚れする。母親の反対を押し切り、水戸へと嫁ぐ。 以徳は攘夷派の若き志士で、天狗党という集団を作り、諸生党と対立していた。桜田門外の変に参加する予定だったが、別件で怪我をして間に合わず、それで命を長らえていた。生麦事件なども起き、水戸藩も益々ややこしくなっていった。嫁いだ後、以徳は下士などの子弟に剣術を教える学校の宿舎に住んでいたため、水戸の屋敷に戻ることは少なかった。ランクは中士であり、質素倹約を大切にする水戸藩として生活は裕福ではない。以徳の妹のてつともしっくりいかない。 攘夷の志士でさらに若い藤田小四郎が、屋敷にやってきた。てつは好きになった。彼はさらに過激な尊皇攘夷論者だった。ついに天狗党の反乱がおきた。妻や子供たちはつかまり、牢獄に入れられた。登世もてつも、入れられた。牢獄は劣悪な環境だった。永久に入れられるもの、死刑になっていくもの。悲惨な日々が続く。しかし、わが身よりも以徳が生きているかどうかが気になる。会いたい、の一心だった。凄絶、いや、壮絶な日々。 次々と牢仲間が処刑されていく中、2人は解き放たれた。そして、江戸へ向かった。世の中の変化に翻弄される2人。維新になると、今度は天狗党が英雄になる・・・小四郎は捉えられて斬首されていたが、以徳は怪我のために生きのびて京に向かったという噂だった。一縷の望みにかけて、江戸で暮らしたが、結局、それは根も葉もない嘘で、獄死(病死)していたことが分かった。 中島歌子に長年仕えた下女。それは、なんと諸生党の大物武士(仇敵)の子供だった。歌子はそれを知って雇っていた。そして、その下女の三男に自分の財産などを与えるという遺言を残していた。
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時代小説初心者にはちょっと読むのがしんどかった。 尊王攘夷系の歴史に精通してないから、昔言葉と歴史でよくわからない部分が多くて読むのか辛かった。 純文学もあんまり好きじゃないのかも。 キャラへの感情移入ができなかった。
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朝井まかて、すごい!凄腕!思わず引き込まれてぐんぐん読みました。ラストはこらえきれず、目頭が熱くじーんとなってしまった。知りませんでした。中島歌子がこんな人物だったなんて。もちろん萩の舎のことは知っていたし、一葉さんの師匠だということも知っていたけど。超ド級の純愛物語でした。短歌...
朝井まかて、すごい!凄腕!思わず引き込まれてぐんぐん読みました。ラストはこらえきれず、目頭が熱くじーんとなってしまった。知りませんでした。中島歌子がこんな人物だったなんて。もちろん萩の舎のことは知っていたし、一葉さんの師匠だということも知っていたけど。超ド級の純愛物語でした。短歌に限らず芸術に命をかけるって、私には想像もできないけれどその境地に至れるのはこの上ない幸福なのでしょう。萩の舎のあった安藤坂界隈は私の母の育った町。私も学生時代初めてバイトした土地なのでとても思い入れがある。今度訪ねてみよう。
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時代の流れ、運命は悲しくて 歴史で学ぶと「尊王攘夷」「水戸藩士」「内乱」と点で終わってしまう事柄に、ひとりひとりの人間のドラマがあることにはっとさせられます。 ひとりの女性がきゅんと恋をして力強く愛を貫いていく姿に胸が熱くなりました その人の今に至るまでに、どんな人生があったか...
時代の流れ、運命は悲しくて 歴史で学ぶと「尊王攘夷」「水戸藩士」「内乱」と点で終わってしまう事柄に、ひとりひとりの人間のドラマがあることにはっとさせられます。 ひとりの女性がきゅんと恋をして力強く愛を貫いていく姿に胸が熱くなりました その人の今に至るまでに、どんな人生があったか。 これまでもこれからも出会う相手を、その人の生きてきた過程も含めて大切にしたいなと思いました
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主人公で小説家の三宅花圃が萩の舎を開き樋口一葉の師として知られる中島歌子の過去を手記を読む形で振り返る形で物語が進む。手記を通した読んだ水戸藩内での天狗党と諸生党の争いが凄まじく壮絶で言葉を失った。
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間違いなく自分の記憶に残る作品だな、と思いました。壮絶な人生の中で、女性の生き様、使命、男性とは違った強さやしなやかさを感じます。現代の女性にはもしかしたら残っていないところなのかも、と思いつつ、本質は変わっていないのだろうか?自分にもそんな強さがあれば良いなと思えた作品です。
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幕末という時代がいかに激動だったかがよくわかる。こういう地獄のような状況の中でも失われない人間性が泣かせる。
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歌人中島歌子の話かと思いきや 幕末の水戸藩 天狗党の事が 詳細に描かれて それはそれで とても興味深く 時に辛く胸を締め付けられながらも 一気に読んでいました。 そこここに 散りばめられた歌も 良くは分からないなりにも その時代の人の心が伝わるもので 歌の良さが沁みてきました。 歌人としての中島歌子は 分かりませんが 水戸藩天狗党の妻として生きそして逝った人だったのかなと 一人の人を想い続けた気持ちの強い女性という印象でした。
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久しぶりの時代物。 「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ」 宇多田ヒカルさんの「FIRST LOVE」を思い出した。恋はいつの時代も変わらないのか⁈
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不慣れな時代もので、さくさく読めかったけど、教科書とか学ぶ幕末なんてほんの数ページだけど 、こんな時代があって、生きた人がこんな思いだったのだと、ただただ衝撃だった…。
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