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戦場の掟 の商品レビュー

4.5

8件のお客様レビュー

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2020/05/23

2020年5月23日読了。 イラクにおける「民間警備会社」のノンフィクション。著者は本作でピュリッツァー賞を受賞。 イラクで物資の輸送や要人の警護、施設の警備に民間警備会社が多数雇われていることは、案外知られていない。 民間警備会社、悪く言えば「傭兵」はイラクでの戦死者数に含...

2020年5月23日読了。 イラクにおける「民間警備会社」のノンフィクション。著者は本作でピュリッツァー賞を受賞。 イラクで物資の輸送や要人の警護、施設の警備に民間警備会社が多数雇われていることは、案外知られていない。 民間警備会社、悪く言えば「傭兵」はイラクでの戦死者数に含まれていない。 捕虜の取り扱いを決めた国際協定「ジュネーブ協定」の対象でもない。 また、本作で「ビックボーイ・ルール」(原題)と呼ばれている「強者のルール」で蛮行を繰り返す会社もあり、一部の会社の蛮行がイラク人の欧米人に対する忌み嫌う原因にもなっている。 著者はイラクに何度か足を運び、民間警備会社の武装警護員にインタビューを行なっている。 インタビューした警護員がある日、武装勢力に拉致されてしまう。 著者は家族と連絡を取り、拉致捜査の進展を取材する。 読んでみて、軍の他に民間警備会社が幅を利かせていることは知っていたが、こんなに傍若無人ぶりをはたらいていたとは知らなかった。 取材から10年以上(拉致事件は2006年)経っているので、民間警備会社の現状も変わっているかもしれないが、未だ混迷を極めるイラクの内情を垣間見た気がする傑作。

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2019/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

傭兵は戦死者数にカウントされない、傭兵の犯した罪は現地の法律では裁けない、必要悪と一言で片付けるには大きすぎるブラックウォーター社の存在。誰かの不幸は誰かの飯の種になるんだ。

Posted byブクログ

2017/11/07

 世界的人気ゲームMGS4で取り上げられた民間軍事会社PMCの真実に迫った一冊。  日頃から念仏のように「戦争反対だ」「憲法九条を守れ」などと唱えてばかりの平和主義者には、頭を撃ち抜かれるほどの衝撃で目を醒まさせられる内容。  かつての軍需産業は兵器や弾薬、装備品や車輌、艦船や航...

 世界的人気ゲームMGS4で取り上げられた民間軍事会社PMCの真実に迫った一冊。  日頃から念仏のように「戦争反対だ」「憲法九条を守れ」などと唱えてばかりの平和主義者には、頭を撃ち抜かれるほどの衝撃で目を醒まさせられる内容。  かつての軍需産業は兵器や弾薬、装備品や車輌、艦船や航空機といった、ハードウエア産業の話だと思っていたのだが、イラク戦争の前後から、傭兵や民間軍事会社等の、ソフトウエア産業へと機軸がシフトしている。ベルリンの壁崩壊や米ソ冷戦の終結以降、世界的な軍縮の流れにより、かつての社会主義国家を中心に、軍事関係の人材の流出が激しくなっており、民間軍事会社は、能力や知識を持て余した軍事関係者の格好の受け皿となっている。  「世界の警察」を自称するアメリカ軍も、殺人や戦後処理など、自らの手を汚したくない業務は全て外部に委託する。正規の軍人じゃないからジュネーブ条約や国際法等のあらゆる法律や条約にも抵触しないらしいが、同時にその恩恵や保護も受けられない。ルールなど無い。唯一あるのは「強者の掟」のみ。  受け取る給料は大半が現金払いで、正規の軍人よりはるかに高いが、死ねばただの紙屑。それでも、はるかに安上がりなのだろうからビジネスとして成立するワケだし、金を目当てにアメリカ全土や世界各国から、ピンは元軍人、キリは犯罪者、麻薬中毒、普段の日常生活に適応できず、生死のスリルを味わえる戦場にしか自らの生き甲斐や存在価値を見出せない連中が集まってくる。  PMCは「アウトソーシングの成れの果て」、はたまた「グローバル経済の終着点」の産物というべきか。いずれにしても、「右」から「左」まで必読でしょう。

Posted byブクログ

2017/03/28

輸送トラックを警護中にイラクで行方不明になった傭兵、 ジョン・コーテという魅力的なアメリカ青年の生い立ちとイラクでの生活を中心に、 セキュリティ会社とは現実になにを目的として活動しているのか? 傭兵とはどういった人物像でイラクに行く目的とはなにか? 当時のイラクの治安状態は実際の...

輸送トラックを警護中にイラクで行方不明になった傭兵、 ジョン・コーテという魅力的なアメリカ青年の生い立ちとイラクでの生活を中心に、 セキュリティ会社とは現実になにを目的として活動しているのか? 傭兵とはどういった人物像でイラクに行く目的とはなにか? 当時のイラクの治安状態は実際のところどうだったのか? セキュリティ会社と傭兵を取り巻く法整備の実態についてなど幅広く書かれている。 また残された家族についても丹念に取材されていてる。 残された家族が、安易に戦争反対と唱えることもなく、 すべての登場人物が「戦争」という行為についての受け止め方がそれぞれ興味深い。 ちなみに登場人物が「ニーバーの祈り」を唱える箇所があり深く感動しました。 自分 はヴォネガットの『スローターハウス5』に載っている方の訳の 「ニーバーの祈り」のほうが、馴染んでいることもあるので好きかも。 『スローターハウス5』のニーバーの祈り 神よ願わくばわたしに 変えることのできない物事を受けいれる落ち着きと 変えることのできる物事を変える勇気と その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ

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2016/01/11

イラク戦争で従軍し、戦争後遺症を患ったアメリカの好青年が、戦争請負会社に再就職し、不幸な事件が起こるべきして起きてしまう。そして、彼と遺された遺族と交流した著者のノンフィクション。 以下のようなポイントを丁寧な取材により描いてる。 「イラク統治への平和的移行の失敗」 「軍事費削...

イラク戦争で従軍し、戦争後遺症を患ったアメリカの好青年が、戦争請負会社に再就職し、不幸な事件が起こるべきして起きてしまう。そして、彼と遺された遺族と交流した著者のノンフィクション。 以下のようなポイントを丁寧な取材により描いてる。 「イラク統治への平和的移行の失敗」 「軍事費削減のための戦争請負会社へ依存の失敗」 「失業者や社会的不適合者の受け皿としての戦争請負会社」 私が、この作品に価値を感じるは、アメリカが全世界の模範たる警察の義務を果たすために派兵し、若者が外国で命を落とす事に、若者の血で賄うだけの国家・国民へのリターンを疑問視する世論が、確実にある事です。 昔、歴史の教科書で習った国際社会からの孤立主義を、アメリカが先祖返りのように希望する兆候も垣間見れる。 三文冒険小説のようなバタ臭い題名が欠点であるだけで、最高のノンフィクション。ハヤカワのミリタリー分野のセレクトは、ハズレなしです。私は、今後もレーベル買いします。

Posted byブクログ

2016/11/23

イラク戦争で裏に隠れている「傭兵」(米軍は決して傭兵という言葉は使わない)について、実際にイラク入りを繰り返して取材を重ねたドキュメンタリ。 イラク戦争における現場の兵士に関しては、『アメリカン・スナイパー』で狙撃兵本人の目から描かれたが、民間警備会社の傭兵は、そこに登場する米正...

イラク戦争で裏に隠れている「傭兵」(米軍は決して傭兵という言葉は使わない)について、実際にイラク入りを繰り返して取材を重ねたドキュメンタリ。 イラク戦争における現場の兵士に関しては、『アメリカン・スナイパー』で狙撃兵本人の目から描かれたが、民間警備会社の傭兵は、そこに登場する米正規軍とは違っている。彼らは軍規ではなく、CPA指令第17号により、イラクの法律下にも置かれず、戦場の不文律「強者のルール - ビッグ・ボーイ・ルール」に沿って行動する。そこでは責任はあいまいにされる。イラクの傭兵市場において、ブラックウォーター社など複数の会社が設立され、そこで働く人の数、および死んでいった人の数も正確には知られていないという。彼らによるイラク民間人に対する殺人も含む傍若無人な振る舞いは、現地におけるアメリカの立場を悪くする。それでも、彼らなしで米軍は戦闘を遂行できないようになっているのが現実になっていた。 著者は、イラクで襲撃されて連れ去られ、最終的に殺害されたクレセント・セキュリティ社のメンバーとも直接交流を重ねていた。特にその中の非常に好感度の高い青年ジョン・コーテの人生を取り上げる。一度、従軍し、フロリダ大学で会計学を学ぶも、イラクの地に赴き、その地で斃れた。 読み物としては、ややフォーカスが甘いところがあって読みづらいかなという印象。コーテやその仲間、遺族に近すぎて遠慮をしているところもあるようにも感じる。また、著者自身の父親の話(イラクに行っている間に亡くなった)や弟の話(バリー・ボンズの薬物疑惑を記者として暴いたがは余計だ情報提供者の名前を提供を巡って係争中)が入るが、著者として書く必然性はあるのかもしれないが、読者が求めるイラクの状況を語るには余計な話のように思う。さらにアメリカ側の矛盾とともに、イラク人の側に立った報道姿勢があってもよかったように思う(遺族への配慮がそれを阻んだのであれば残念だ)。 最後、クレセント・セキュリティ社からは誰も参列者がない壮大なコーテの葬儀で終わるが、イラクでは自らの意志でそこに立ったわけではないものたちが数多くビッグ・ボーイ・ルールの下で殺されて、ひっそりと埋められて新たな怒りを生んでいることで終わるべきではなかったのか。 --- 『アメリカン・スナイパー』のレビュー http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/415050427X

Posted byブクログ

2015/12/23

2004年秋から特ダネをつかむため米軍とともにイラク各地を訪れたワシントン・ポストの特派員スティーブ・ファイナルは仕事が原因で離婚し主夫に熱中するあまり鬱になっていた。そしてバリー・ボンズが薬漬けになったことを記事にし大陪審証言をリークしたとして収監された弟と悪性腫瘍で余命わずか...

2004年秋から特ダネをつかむため米軍とともにイラク各地を訪れたワシントン・ポストの特派員スティーブ・ファイナルは仕事が原因で離婚し主夫に熱中するあまり鬱になっていた。そしてバリー・ボンズが薬漬けになったことを記事にし大陪審証言をリークしたとして収監された弟と悪性腫瘍で余命わずかの父を残し2006年再びイラクに逃げ出した、民間警備会社の仕事を10日間取材するとして。 取材先のクレセントで出会ったのはイラクでこれほど楽しそうにしている人間は他にいないという好青年のジョン・コーテー彼もまたアフガンとイラクの戦争から除隊し、平和な学生生活に耐えられず逃げ出したー達だった。「おい、ここを離れなきゃだめだ。大学に戻ったほうがいい」取材対象相手としては近づき過ぎだがスティーブはコーテに忠告しクレセントを離れた。そして父親が危篤と聞いて戻ったアメリカで聞いた新たなニュースはコーテ達5人がコンボイの護衛中にクウェートからそれほど離れていない比較的安全な主要補給路のルートタンパで誘拐されたと言うニュースだった。 イラクの傭兵の数ははっきりわかっていない。おそらく2.5~7.5万人の間で管理人、コック、トラック運転手や爆弾処理の専門家を含めると08年には軍以外に19万人がイラクにいたと推定される。民間企業との契約総額は850億ドルで米政府の戦費の1/5に当たる。しかし統計上は死傷者に数えられず戦闘にも参加していないことになっている。 クレセントの場合比較的平和なイラク南部へチームを派遣するには1日4~5千ドル、間違いなく攻撃されるファルージャだと35千ドルを請求する。警備部長の月給は1万ドル、チーム・リーダーは8千でメンバーは7千、しかし同じ仕事をやるイラク人には600ドルだ。そのイラク人は最も危険で快適な車内には入れない射手を務める。志願してクレセントの射手になるにはメール1本出すだけでいい、実際に52歳のトラック運転手のホーナーは持ったこともないAKー47を渡されそのまま最初の任務に就いた。「俺はランボーだ」と言えばそれが通じる世界だ。 2005/10/3に発行された連合国暫定当局(CPA)指令第17号に米軍に同行する民間業者の武器使用についてひっそりと発表された「警備任務に必要な場合は武器の使用を承認される」と。連邦法では準軍隊の使用を禁じているが、この指令では先制攻撃の禁止については曖昧で戦闘指揮官の努力目標として規定されている。軍であれば少なくとも指揮命令系統ははっきりしており、犯罪や違反をおこせば統一軍事裁判方で裁かれる。ところが民間警備会社には適用されず、CPA17号指令でイラクの国内法からも免除されている。傭兵を訴追するには実務的な試練にさらされていない法律を適用するしかなく、誰がそれを執行するかも決まっていない。 悪名高いブラックウォーターはイラク政府の免許と適切な武器許可のない会社とは契約を結ばないという新しい命令にも関わらず、国務省に守られ制御できない軍隊となった。道ばたに立っているだけの人を撃ち、対向車や追い越した車を撃つ。それでも何も報告されない。パーティで泥酔した傭兵は首相官邸近くをぶらぶらし、誰何した副大統領の警備員を撃って逃げた。「われわれは殺すために撃つんだ。それに、いちいち脈を確かめたりしない。」ある元傭兵の言葉だ。ブラックウォーターは占領政府のトップや米大使や外交官全てを警護しイラク戦争で10億ドルを得ていた。ブラックウォーターはイラク国民を恐怖で支配する傭兵の代名詞となりアメリカ人が憎悪される原因を作っている。 本書の題名「戦場の掟」(BIG BOY RULES)はブラックウォーターをはじめとする民間警備会社が自分達のルール=強者のルールで戦い死んでいくことから付けられている。米政府は傭兵達を無視しているが傭兵なしでは作戦を遂行できない。2-3回に1度の割合で襲撃される通常20人以上必要なコンボイ警備をわずか7人で実施したクレセントのチームは唯一同行したイラク人に裏切られ拉致された。コーテ達5人は後に死亡が確認されたがクレセントは拉致されると同時に給与の支払いを停止した。 自衛隊が駐屯したサマワでもこうした民間警備会社が警備を担当した。自衛隊がいくら武器使用規定を厳格に守ったとしても、その自衛隊を警備する民間警備会社が銃を撃ち放題だとしたら同じく憎悪の対象になるということだ。

Posted byブクログ

2015/10/06

需要と供給、合理性を突き詰めた結果が救いようのない狂気の世界を作り出している。現代の戦争の姿を鮮やかに描き出した良書。

Posted byブクログ