たった一つを変えるだけ の商品レビュー
教師から発問をし、生徒たちが答える授業から、生徒たちが問う授業への転換を謳う本。生徒たちにより深く考えさせられる発問を考えていた教師が、まさに、「この深く考えられる発問を考える」ということこそ生徒たちに考えさせたいことなんじゃないかと、思い至ったことが実践づくりの出発点だというが...
教師から発問をし、生徒たちが答える授業から、生徒たちが問う授業への転換を謳う本。生徒たちにより深く考えさせられる発問を考えていた教師が、まさに、「この深く考えられる発問を考える」ということこそ生徒たちに考えさせたいことなんじゃないかと、思い至ったことが実践づくりの出発点だというが、このエピソードが個人的には好き。 国語の教材研究をしているとき、今自分がやっているこのプロセスこそ、生徒たちに見せてやりたいよな、と思うことは多々ある。テクストの解釈や周辺情報、基本情報の調査。文学理論や哲学理論による整理、解釈。こういったことこそが、一番知的に思考を働かせている部分だなと思う。 この本では、そういった教師が授業をつくるプロセスのなかでも、特に「発問づくり」に焦点をあてる。そのプロセスを生徒たちが追えるようにする単元の展開を紹介する。 ①質問づくり、②質問の分類、③ランキング付け、④質問づくりのふり返り。4ステップで進む授業のプロセスは明快で、とても参考になった。 ただ、こうした学習活動に達するまでのプロセスや、実際の実践の手続きについては、全面的に賛成するし勉強になった一方で、本全体に対する印象はあまりよくない。こうした授業の成果について、生徒と教師の断片的な証言を集めて、こんなに生徒たちや現場の教師たちが満足しているからいいものなのだ、という感じがひしひしと伝わってくる。現場の子どもたちや教師やの声は大切だと思うけれども、それをもって「正しい」ということにはならないというのは、当然のことだと思う。 質問づくりを子どもたちにさせるというコンセプトの意義や価値はきちんと理解したうえで、それによって欠けるものをきちんと見極めて、カリキュラムを立てていく。そうしたドライな態度で読むことが大切な本だと思う。
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【星:3.0】 学校の授業現場において、成果の出る授業を作るため、教師が質問をして生徒が答えるという通常形態から、生徒が自ら質問を作り、その質問に答えを出すという形態に変えると良い、といった内容であった。 そして、質問作成を教師→生徒に変える、というのが本書のタイトルである「た...
【星:3.0】 学校の授業現場において、成果の出る授業を作るため、教師が質問をして生徒が答えるという通常形態から、生徒が自ら質問を作り、その質問に答えを出すという形態に変えると良い、といった内容であった。 そして、質問作成を教師→生徒に変える、というのが本書のタイトルである「たった一つのこと」である。 私がこの本を手に取ったのは、上手な質問作成のスキルを身につけたいというのが目的であった。 しかし、生徒が質問作成にする授業に変えて成果が出た事例はこれでもかというぐらいに書かれているが、質問作成の具体的技術のようなものはあまり書かれていなかった。 私の目的には合致していない本であった。
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問いを生徒に考えさせることの意義、その学校での実践例や意識するポイントがまとめられていて、今の教育で求められる主体的な学びを実践する大きな助けになる要素が紹介されている。 共感することも多いが、星マイナス1の理由は以下の2つ。 1. 翻訳が良くない。本文に忠実に訳しているとは思...
問いを生徒に考えさせることの意義、その学校での実践例や意識するポイントがまとめられていて、今の教育で求められる主体的な学びを実践する大きな助けになる要素が紹介されている。 共感することも多いが、星マイナス1の理由は以下の2つ。 1. 翻訳が良くない。本文に忠実に訳しているとは思うが、原文をそのまま日本語にしたようで分かりにくい箇所が多い。 2.本文の構成自体も読みづらい。結論を最後まではっきりと言わないので、紹介している例のポイントがわからないまま読んでいるような感覚。
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教師に指示されている限り、僕らは何も学んでいない ドキッとするキーフレーズ。自分で学ぶ自立した学習者はそりゃあ、自分で課題を考えて主体的に悩んで学べないといけないわけだけど、学校ではそんなことほとんど全くできてない。 だってどうすればいいんだ。何をすれば? そういう疑問を吹き...
教師に指示されている限り、僕らは何も学んでいない ドキッとするキーフレーズ。自分で学ぶ自立した学習者はそりゃあ、自分で課題を考えて主体的に悩んで学べないといけないわけだけど、学校ではそんなことほとんど全くできてない。 だってどうすればいいんだ。何をすれば? そういう疑問を吹き飛ばす[たった一つで]授業の基本を大きく変える可能性を示している本です。総合的な学習の時間や理科、社会とは特に相性が良さそう。 国語ならスピーチや作文、作品について思考する場面で是非やってみたい。 いい本を読みました。三学期が少し楽しみになりました。Twitterで奨めていた誰かさん、ありがとう。
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要約のみチェック。3〜5人のグループを作って実践できる立場にない自分にとっては逆に良かったかもしれない。本書をいくら丁寧に読んでも、核心は実践しないとわからない類の内容。 その意味で、本書は教育の自由度が高い大学教員におすすめかも。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
考えたり、学んだりするときに不可欠な質問づくりの方法は、民主主義を可能にする基本スキルである。 思考力を構成する3つの思考力があり、それは 「多様なアイデアを考えだし、幅広く創造的に考えられる発散思考」 「答えや結論に向けて、情報やアイデアを分析統合する収束思考」 「自分が考えたことや学んだことを振り返るメタ認知思考」 である。 生徒自身による質問づくりを可能にするため、教師が発問するのではなく、質問を作り出すための引き金となる「質問の焦点」を示す必要がある。また、それは ①明確 ②質問ではない ③刺激によって新しい思考を誘発 ④教師の好みや偏見は表さない ものが効果的である。 質問をたくさん出すための5つのルールは ①できるだけたくさんの質問をする ②質問について話し合ったり、評価したり、答えたりしない ③質問は発言の通りに書き出す ④意見や主張は疑問文に直す というもの。
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2016年に買ってあったのだが、ようやく昨日読んだ。質問づくりを生徒にやらせる価値とか、どのように取り組ませるのかが、とても詳細に書かれていて、イメージがつきやすくていい。例題、いやケーススタディも結構たくさん紹介されていて、その部分を読んでいると、教室の雰囲気がなんとなく想起さ...
2016年に買ってあったのだが、ようやく昨日読んだ。質問づくりを生徒にやらせる価値とか、どのように取り組ませるのかが、とても詳細に書かれていて、イメージがつきやすくていい。例題、いやケーススタディも結構たくさん紹介されていて、その部分を読んでいると、教室の雰囲気がなんとなく想起される。しかし、大体クラスが20-25人程度、というのと、定時制高校のケースが多いので(アメリカにあるのだな)、40人ベースで展開するときにはどうしたものか、と考えてしまったりもするが、質問づくりを授業に取り入れることはできそうだ。が、著者の厳密なステップを踏んでいくのは難しいかもしれない。 どうやって学びを深めていくのか、という点はあまり(というかほとんど)触れられていない。吉田氏の注釈での開設が、かなり役に立つし、共感したりする。
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生徒に「質問づくり(QFT)」の機会をつくることで、劇的に生徒の学習への向かい方が変わるという内容の本。 授業のなかでの「問い」というと、私の場合はまず「発問」をイメージがします。それを生徒に渡し、生徒自身が「問い」を持ち、文章や単元に向かうという感じでしょうか。 本書の中に...
生徒に「質問づくり(QFT)」の機会をつくることで、劇的に生徒の学習への向かい方が変わるという内容の本。 授業のなかでの「問い」というと、私の場合はまず「発問」をイメージがします。それを生徒に渡し、生徒自身が「問い」を持ち、文章や単元に向かうという感じでしょうか。 本書の中に国語での実践は書かれていませんが、以下の号の『教育科学 国語教育 2019年1月号』に実践がまとめられているということで取り寄せました。 実践は中学国語1年生の文学的文章である『少年の日の思い出』 生徒自身が問いをつくり、自分たちで答えを見つけながら、文章を読み深めていることがわかりました。 この学習活動で大事だと思うのは、最後の振り返りです。 どのような質問が良い質問なのか、どう話し合いを進めたらよかったのか、そのような質問づくりを俯瞰して振り返ることでメタ認知の力を養うことが大事だと思います。 具体的にどのような授業で実践すればよいのかは正直まだイメージできません。 特に作られた問いをどのように扱うのかという点をどうすればよいか悩みます。 けれど「問い」をもつ力はこれからの社会を生きていく上で大事な力だとは思うので、なんとか実践はしてみたいです。
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「教師に指示されているかぎり、僕らは何も学んでいない」表紙カバーの言葉が痛く感じます。 実践例があり、探究学習の入門として必要な一冊です。
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質問作りを通して、生徒に学ばせる、という教育方法の紹介の本。 ① 教師は質問の焦点を決めて、生徒に提示する。 ② 生徒は、質問を考えてとにかくたくさん出す(善し悪しは考えない)。 ③ 生徒は、それを重要だと思う順番に並び替える。 このステップで質問を作る、という授業です。 ...
質問作りを通して、生徒に学ばせる、という教育方法の紹介の本。 ① 教師は質問の焦点を決めて、生徒に提示する。 ② 生徒は、質問を考えてとにかくたくさん出す(善し悪しは考えない)。 ③ 生徒は、それを重要だと思う順番に並び替える。 このステップで質問を作る、という授業です。 読むと、生徒が生き生きと動いているのが伝わってきますが、やってみないと半信半疑から抜け出すのは難しそうです。 そして、普段の授業では教科書の進度の問題もあるのでどうしましょうね。ひとつのテーマに対して、数時間をかける必要がありそうだと言うことと、理系科目を教える立場として、発散思考から収束へ・・・というところの収束の部分がちょっと苦しく感じてしまいます。質問作りを使うときには、本の中にも書かれていたように、学ぶきっかけとして、単元の最初に用いたり、まとめとして単元の最後に用いる方法が適しており、質問作りだけで授業が成立するわけではなく、生徒に学ばせる仕掛けだということを忘れないことが重要かなと思いました。 数学の先生が取り組んだという事例をもう少し詳細に取り上げてもらえたら、試してみられるのにな、というところでした。実践例を探してみようかなと思います。
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