100分de名著 日本の面影 小泉八雲(2015年7月) の商品レビュー
【概略】 アイルランド人の父とギリシャ人の母との間に生まれたラフカディオハーンは、日本にて帰化、小泉八雲と名乗り、日本の様々な伝承から珠玉の物語を世界に紹介した。本書では小泉八雲の「日本の面影」を軸に、小泉八雲が日本についてどう感じたか?を紐解く。 2024年01月03日 読...
【概略】 アイルランド人の父とギリシャ人の母との間に生まれたラフカディオハーンは、日本にて帰化、小泉八雲と名乗り、日本の様々な伝承から珠玉の物語を世界に紹介した。本書では小泉八雲の「日本の面影」を軸に、小泉八雲が日本についてどう感じたか?を紐解く。 2024年01月03日 読了 【書評】 今年の上半期は小泉八雲三昧になる必要があって。それで手に取ってみた。 欠けていることが、足されることになったような、それが小泉八雲の根底に流れている、そんな風に感じたなぁ。左眼から光を奪われ、右眼も近視、目から入る情報が削られた分、音・・・これは実際の聴力という意味なだけでなく、空気や心情を感じるという意味の音・・・にギフトが送られたという。そんなことを感じたね。数多の日本の民話を取り入れるのも、妻である節子に語らせたそうな。しかもただ書かれたものを読み上げる形ではなく、節子の言葉になるまで求めてから、それを取り入れたそうな。ここは現代のパブリックスピーキングにも通じるよね。ただただ原稿を読み上げるのではなく、ちゃんと読むことの重要性。 もう一つ興味深いのが、小泉八雲が、日本というものを地位のある立場にいる日本人ではなく市井の人々に見出しているということ。そして、(これは当時の世情を鑑みたら致し方ないのだけど)いわゆる西洋かぶれ化している日本人の変化に価値を見出していないこと。外側から見た(来た)立場だから、元々いる(ある)ことにありがたみを感じてない日本人とは違った着眼点ではあるのだけれど、小泉八雲の場合はなんというか、もっともっと見えないところに目を向けているような、そんな感じがしたね。 自分の中での小泉八雲の旅は始まったばかり。だから言語化もこれからなのだけど、ちょっと楽しみになってきたよ。
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明治時代に来日したラフカディオハーンこと小泉八雲。 島根県の松江市への移動は、横浜から人力車だったということにも驚きつつ、その行程でも日本の美しさを語っており、日本人は当たり前で気づかなかったことの良さを外からの目線で気づけさせてくれる。 盆踊りの描写が美しい。
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小泉八雲という外国人から見た日本。日本文化についてもさることながら異文化を見る視点,そしてそれを物語に結びつけるところが参考になる。その延長線というかミニ版というか,「その土地を去ることで初めて、その場所を生涯のインスピレーションの磁場にすることができたのです」(p102)という...
小泉八雲という外国人から見た日本。日本文化についてもさることながら異文化を見る視点,そしてそれを物語に結びつけるところが参考になる。その延長線というかミニ版というか,「その土地を去ることで初めて、その場所を生涯のインスピレーションの磁場にすることができたのです」(p102)というのはアイデンティティと言えるようなただ一つの故郷を持っていない僕にとってはじわりと腑に落ちる。
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(2015.09.21読了)(2015.06.26購入) Eテレの放送テキストです。 小泉八雲さんの『日本の面影』の紹介です。日本についての紀行文ということです。 「デジタル大辞泉の解説」によると以下のように紹介されています。 こいずみ‐やくも【小泉八雲】 [1850~1904...
(2015.09.21読了)(2015.06.26購入) Eテレの放送テキストです。 小泉八雲さんの『日本の面影』の紹介です。日本についての紀行文ということです。 「デジタル大辞泉の解説」によると以下のように紹介されています。 こいずみ‐やくも【小泉八雲】 [1850~1904]英文学者・作家。ギリシャに生まれる。本名、ラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。明治23年(1890)来日。小泉節子と結婚、のち、日本に帰化。松江中学校・東大などで英語・英文学を教えるかたわら日本文化を研究、海外に紹介した。著「知られざる日本の面影」「心」「怪談」など。 小泉八雲と言えば、「耳なし芳一」などの「怪談」が有名なのですが、知っているけど読んだことがない、というよくある範疇に属する作家です。 日本文化を理解するのに役立つ「日本の面影」も知らなかったし、読んだこともありません。 この本では、小泉八雲さんの略歴を紹介するとともに、『日本の面影』の内容を紹介するとともに、「怪談」につながるエピソードをいくつか紹介しています。 「八雲は、ギリシャに生まれてアイルランドに育ち、イギリス、アメリカ、仏領のマルティニーク島での生活を経て日本にやってきました。」(5頁)という経歴の持ち主で、他の西洋人とは、少し違う感覚で、日本を感じ理解を深めたようです。妻の節子さんの存在も大きかったようです。 【目次】 【はじめに】異文化に対するやわらかな眼差し 第1回 原点を訪ねる旅 第2回 古きよき日本を求めて 第3回 異文化の声に耳をすます 第4回 心の扉を開く ●紀行文学(23頁) 自分の紀行文学は、学問的・分析的なものではなく、目に触れた人々や自然や物への照応・共感の産物である、と八雲は考えていたのです。 ●臨場感(31頁) とにかく日本を旅し、心身ともに日本に没入し、全身全霊で日本と日本人とに共鳴・共感しようとしました。事実、彼の『日本の面影』は、読者が八雲と一緒に生活しているような臨場感に溢れています。 ●感情(37頁) 感情とは、どこかの場所や時を特定するものではなく、この宇宙の太陽の下で、生きとし生けるものの万物の喜びや悲しみに共振するものではないだろうか。 ●アプローチの方法(59頁) 日本へのアプローチの方法とは何か。まず、二点ほど考えられます。一つは、物売りの声や町の音に対して耳をすませ、全身で日本文化を丸ごと受けとめようとしたことです。もう一つは、一見不可解な事柄でも、日本人の立場に立ってその意味や歴史的な由来について理解しようと努めたことです。 ●四柏手(63頁) 彼らは顔を太陽に向け、柏手を四度打ってから拝んでいる。 (四柏手は、出雲大社の柏手の打ち方で、普通は二拍手のところが多い。) ●微笑(71頁) 八雲は、日本人の微笑とは、自己を抑制し、己に打ち克った者にこそ幸せは訪れるという日本人の道徳観を象徴していると結論づけています。 ●オープン・マインド(103頁) 八雲には三つのオープン・マインドがあったと思います。一つ目は、「自分の五感を解き放つ」というオープン・マインド。二つ目は、「他者に対して暖かな眼差しを持つ」というオープン・マインド。そして三つ目が、「他者への共感・共鳴」というオープン・マインドです。 ☆関連図書(既読) 「日本奥地紀行」イザベラ・バード著・高梨健吉訳、平凡社ライブラリー、2000.02.15 「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」宮本常一著、平凡社ライブラリー、2002.12.09 「逝きし世の面影」渡辺京二著、平凡社ライブラリー、2005.09.09 (2015年9月22日・記) 内容紹介(amazon) 消えゆく日本を愛する アイルランドの父とギリシャ人の母の間に生まれたラフカディオ・ハーン。アメリカで通信記者として活躍していた彼はなぜ、日本に帰化して小泉八雲となったのか。『怪談』と並び称される八雲の代表作『日本の面影』に描かれた明治の日本のありかたから、近代日本の歩みの意味を考える。
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【連載】"――#また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった……" ④池田雅之『小泉八雲「日本の面影」』(NHKテレビテキスト「100分de名著」) http://www.amazon.co.jp/dp/4142230522 19世紀後期に西洋に開国された...
【連載】"――#また19世紀後期にまつわる本を買ってしまった……" ④池田雅之『小泉八雲「日本の面影」』(NHKテレビテキスト「100分de名著」) http://www.amazon.co.jp/dp/4142230522 19世紀後期に西洋に開国された未知の国、日本。その国を訪れ、江戸から北へ向かい"東洋のアルカディア"米沢に出会ったのがイザベラ・バード。江戸から西へ向かい"神々の国の首都"出雲で暮らしたのがラフカディオ・ハーン、後の小泉八雲である。 八雲曰く、"真の日本の面影は、民の暮らしの中にこそ感じられる"(意訳)。イザベラ・バードの紀行とも、後世の柳田國男の「常民」論とも重なる。西洋を追い求める東京とは対極の出雲でこそ得られた感慨であり、異文化へ敬愛をもって浸った八雲だからこそ達した理解だ。 このテキストでは八雲のルーツに焦点を当てている。父はケルト文化の地アイルランドの生まれ、母は多神神話の地ギリシャの生まれ。そこに始まる八雲の人生の波乱が、日本の面影を篤く感受する伏線になったのだと。 筆者曰く、八雲が特に感じ取ったのは「Ghostly」なものだと。神、霊、聖域、信仰、伝承…。そのようなものが暮らしに混じり合っている有様が、日本の「奥」にはある。このことを発掘し、語ってくれたのが八雲なのだ。
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小泉八雲はギリシャ系イギリス人で、元の名をラフカディオ・ハーンといった。後に日本に帰化して小泉八雲と名乗っている。この『日本の面影』の原題は「Glimpses of Unfamiliar Japan in Two Volumes」という2巻本になっている。 これまで八雲は全...
小泉八雲はギリシャ系イギリス人で、元の名をラフカディオ・ハーンといった。後に日本に帰化して小泉八雲と名乗っている。この『日本の面影』の原題は「Glimpses of Unfamiliar Japan in Two Volumes」という2巻本になっている。 これまで八雲は全く読んでいなかった。今回の放送を機に、有名な『怪談・奇談』から読んでみた。放送でも触れられた「耳なし芳一のはなし」「雪おんな」「ろくろ首」など、改めてストーリーの内容を知ることができた。 八雲という人は日本人以上に日本を理解しようとしたように思える。祖国で実母と別れ、巡り歩いた諸国でもあまりうまくいかないこともあった。それが日本へ来て巡り会ったものが、次々と彼の感受性を刺激した。彼の生い立ちが日本を受け入れる素地を作り上げていたのだろう。 これを機会にもう少し彼の作品を読んでみようと思う。自分の日本人としてのアイデンティティを確認したいと思う。 《蛇足》 これも最近知ったことには、八雲の次男の妻は八戸の出身だという。別にどうでもよいことだが、八雲と八戸との繋がりがあることを知って、少し嬉しい気持ちになった。 (自らの理解を深めるため、多くの引用をしてみました。)
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