ジゴロとジゴレット の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館員が薦めるうちに帰るまで中味がわからない大人向けの本2作目。モームは昔に「月と六ペンス」を読んだきり。海外のものは読みにくいのでどうなるかと思ったのだがするする読むことができた。「アンティーブの太った女たち」はダイエットはいつも明日からという標語?を思い出してしまった。実にユーモラス。「征服されざる者」は女性の強さに唸ってしまった。「マウントドラーゴ卿」は幻視がリアルで苦しかった。「サナトリウム」「良心の問題」「ジゴロとジゴレット」人間の心というのはかくも複雑なものなのか。どの短編も楽しめた。この薄い本の中に8編もありどの作品も秀逸。
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ユ-モア溢れるものからシリアスなものまで、濃いキャラクターの男女が次々と現れ、とても楽しめる作品群です。 人の本質を垣間見るようで、人間観察力は抜群だと思います。 特に女性の心の移り変わり、変わらぬ心を題材にした『アンティーブの三人の太った女』『ジェイン』は楽しく、また、笑わずに...
ユ-モア溢れるものからシリアスなものまで、濃いキャラクターの男女が次々と現れ、とても楽しめる作品群です。 人の本質を垣間見るようで、人間観察力は抜群だと思います。 特に女性の心の移り変わり、変わらぬ心を題材にした『アンティーブの三人の太った女』『ジェイン』は楽しく、また、笑わずにはいられません。
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キャラクター描写が本当に面白い。 所々辛辣だけれど的確でユーモアがあり、時代も国も違ってもあぁ、人間ってこういうところあるよねと妙に納得してしまう説得力がある。 お気に入りは『サナトリウム』と『ジェイン』。
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面白かった! 笑えたのは『アンティローブの三人の太った女』。みんなキャラが濃い! 『キジバトのような声』『ジェイン』を読んでいると、一人の人間も角度や切り口によって全然違う人物のように見えるんだなと感じます。みんな見たいように相手を見るし、相手との関係性で人物像も変わったりする。...
面白かった! 笑えたのは『アンティローブの三人の太った女』。みんなキャラが濃い! 『キジバトのような声』『ジェイン』を読んでいると、一人の人間も角度や切り口によって全然違う人物のように見えるんだなと感じます。みんな見たいように相手を見るし、相手との関係性で人物像も変わったりする。 『サナトリウム』はユーモアやウィットや皮肉に溢れたこの短編集の中で唯一、とても優しくハッピーなエンディング。思わず涙が出ました。 『ジゴロとジゴレット』は最後「えっ⁉︎」となる展開で、これを最後に持ってきた金原さんや編集者さんはうまいなーと思いました。取り乱して夫のシドを困惑の極みに追いやっておきながら、最後は自分1人で気持ちを立て直して前を向くステラ。そのスピードに更に困惑するシドとのコントラストが痛快でした。女は強い。 モームの小説は本当にストーリーそのものが面白いのですが、登場人物の造形描写の豊かさが実に際立っていて、読みながらキャラクターがありありとイメージできます。これは短編集なので、一冊を通してたくさんのキャラクターが出てくるし、一編一編のお話は短いから各キャラクターの登場時間(?)も短いのだけれど、それぞれに強い印象が残ります。 金原瑞人さんの翻訳もとても読みやすいです。上等な小説を豊かな翻訳で読める贅沢。日本に生まれてよかった。
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短編は,より直接的なモームのコア,オブラートに包まれていない人間の赤裸々な本質,を感じられる.まさに珠玉という言葉が当てはまる.一体どのような経験をすれば,このような人間の本質を多角的に抉るようにアウトプットできるようになるのであろうか.
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エッジの効いたエンディングがクセになるモームの短編集。誰かの何気ない一言や決断が他の人間の感情やその後を変えてゆく。あぁそうだよなぁ、ひとって誰かに影響され影響しつつ生きているよなぁ…、、、そんなことを改めて実感。特に好きなのは「サナトリウム」。ラストのセリフで思わず涙。
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なにかしら読んで浸りたくなる時ってあって、そんな時はモームを開いておきゃあ間違いないのであります。何度もリピートできる本はそうないけどモームは別腹。人生の彩が違う。一番好きなのは「ジェイン」、爆笑を誘っちゃってるジェインの残像が消えないのよね。
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20世紀イギリスの小説家サマセット・モーム(1874-1965)の短篇集。ストーリー展開(筋や、ときにはオチ)が巧みで、物語それ自体としての面白さを味わうことのできる作品が多い。やはり短篇の名手と云われているモーパッサンの作品に通じるところがある。 他者に対する嫉妬・見栄・虚栄...
20世紀イギリスの小説家サマセット・モーム(1874-1965)の短篇集。ストーリー展開(筋や、ときにはオチ)が巧みで、物語それ自体としての面白さを味わうことのできる作品が多い。やはり短篇の名手と云われているモーパッサンの作品に通じるところがある。 他者に対する嫉妬・見栄・虚栄心・自己優越感情、そしてそれらを自分自身に対して意識的無意識的にごまかそうとする自己欺瞞。一見文学の主題にはそぐわないかのような、日常的で卑俗なつまらない感情の運動、そして卑近過ぎるがゆえに却って意識化されることなく素通りしてしまいがちな心の些末な動き。そういった微細な襞々に分け入っていく心理分析が巧い。モームは、普通の人生のありきたりな悲喜交々を、面白くまた意外性のある物語にして掬い取る。 「アンティーブの三人の太った女」は、三人の女たちの実に俗っぽい心理描写がとにかく愉快な傑作。まるでコントを観ているよう。この一作に出会えたことだけでも、この短篇集を手にとった甲斐があった。その他「ジェイン」「良心の問題」「ジゴロとジゴレット」「サナトリウム」など、物語がテンポよく展開しており、読んでいて楽しかった。「征服されざる者」で、ドイツ兵士とフランス女の感情が全く交わりようのない別次元の平行線のように描かれているのが凄まじかった。 「ヘンリー・チェスターが、あきらめてこの災厄に耐えようと考えられないのはしかたがない。みんながみんな、芸術や思想に慰めをみいだすことができるわけではないのだから。現代の悲劇は、そういう一般の人々が、希望を与えてくれる神への信仰を失い、この世で手に入れられなかった幸福をもたらしてくれる復活を信じられなくなったことにある。そして信仰に代わるものをみつけることもできないでいる」(「サナトリウム」)
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おもしろい~!救いがあったり、人情味に溢れていたり理解できなかったり、その後を想像して身震いしたり。終わり方は様々だけど、全編を通じて滲み出る機微とアイロニーが大好き。笑いも涙もあるわけじゃないけど読後には満腹感。
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「モーム傑作選」というサブタイトルが付けられているとおり、元は別々に発表された多くの短篇の中から様々な味わいのものを選りすぐって訳した本です。 「アンティーブの三人の太った女」に苦笑いし、「マウントドラーゴ卿」の不思議な夢の話に引き込まれ、「ジゴロとジゴレット」にはらはらし...
「モーム傑作選」というサブタイトルが付けられているとおり、元は別々に発表された多くの短篇の中から様々な味わいのものを選りすぐって訳した本です。 「アンティーブの三人の太った女」に苦笑いし、「マウントドラーゴ卿」の不思議な夢の話に引き込まれ、「ジゴロとジゴレット」にはらはらし…… 結末が意外だったり、ショッキングだったり、あっけなかったり、皮肉たっぷりだったり、でもどの作品も「なるほど、こういうことってあるよなあ」って妙に納得させられてしまうのはいつもどおり。 モームの作品が読者の腑に落ちるのは、彼が鋭い観察眼で人間の本質を探り当て、それをみごとに暴いて見せるからですよね。だから、残酷に感じられることも多いです。 金原瑞人さん(「蛇にピアス」で芥川賞を受賞された金原ひとみさんの実父だそうです)の翻訳も素晴らしい。「月と六ペンス」の訳も素晴らしかったですが、分かりやすい現代的な訳だと思います。 最後に、別の本のおすすめです。この「ジゴロとジゴレット」はいろんなタイプの話を味わえて面白いのですが、同じ短篇集でも、元々一冊の本として出版された「一葉の震え」(小牟田康彦訳、https://booklog.jp/item/1/4773379677)はこれでもかと畳みかけるような迫力がありますよ。でも人間の本質を言い当てているところは同じです。「ジゴロとジゴレット」が気に入った方にはぜひこちらもご一読をおすすめします。
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