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岸辺のヤービ の商品レビュー

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69件のお客様レビュー

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2015/10/23

梨木香歩自身が大好きだっただろう、ヨーロッパ、とりわけイギリスの児童文学を思わせる。本の造りもそうだし、内容も始まりも、懐かしくてワクワクしたのだが。 古典的児童文学を知らない子どもが読んだら、単に不思議な生き物の物語と思うのだろうか。 汚れちまった大人としては、なぜ今これを書い...

梨木香歩自身が大好きだっただろう、ヨーロッパ、とりわけイギリスの児童文学を思わせる。本の造りもそうだし、内容も始まりも、懐かしくてワクワクしたのだが。 古典的児童文学を知らない子どもが読んだら、単に不思議な生き物の物語と思うのだろうか。 汚れちまった大人としては、なぜ今これを書いたのかと思う。単に書きたかったからかもしれないし、自分の子どもに読んでほしくなったのかもしれない。他の生き物の命をいただく意味を考えてほしかったのかもしれないし、自然の素晴らしさとともに、自然破壊の恐ろしさも伝えたかったのかもしれない。 でも、例えばそもそも似ている『たのしい川辺』や『くまのプーさん』や『床下の小人』と比べたら見劣りするし、オリジナルの生き物の創造というところではムーミンの方が魅力的な気がするし、章のタイトルに内容が小さく添えられているのはケストナーみたいだけど、ケストナーほどの洒落た感じもしない。 この一冊で完結しないのを、何度も言うことにも違和感がある。いい本なら一冊だけ読んでも面白いものだが、これはどうだろう。 私が梨木香歩に期待しすぎなのだろうか。あまり楽しめなかった。 純粋に楽しむなら、前述の古典的児童文学を読む方が余程楽しい。 この作品ほど対象読者の年齢が低い梨木作品は初めてで、彼女ほどの手練れでも、簡単には行かないのだなと思った。 ノートンやミルンの才能をあらためて感じた。

Posted byブクログ

2016/02/14

 水辺に住む「ヤービ」という不思議な生き物の生活を描いた作品。人間は彼らに「大きい人」と呼ばれている。語り手はその「大きい人」であるウタドリさん。  見返しの手書きの地図やフォント、文体などが、1960~70年代の児童書を思わせる作り。今の子どもたちがどう思うかは分からないけど...

 水辺に住む「ヤービ」という不思議な生き物の生活を描いた作品。人間は彼らに「大きい人」と呼ばれている。語り手はその「大きい人」であるウタドリさん。  見返しの手書きの地図やフォント、文体などが、1960~70年代の児童書を思わせる作り。今の子どもたちがどう思うかは分からないけど、昔懐かしい感じがする。  ファンタジーだけど、語り口が落ち着いていて 淡々と進んでいくため、何だか小説というよりは、動物記や日記を読んでいるような感覚。ヤービの世界をじっくり味わいたくて、寝る前に少しずつ読み進めた。  ヤービのことも、ウタドリさんのことも、まだまだ謎が多いけど、どうやらまだ物語は続くようなので、徐々に明らかになっていくのかもしれない。

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2015/10/14

トーベ・ヤンソンの「ムーミン」とメアリー・ノートンの「床下の小人たち」をミックスさせたような物語。梨木さんらしいなと思うのはひとつひとつの描写が実に丁寧なこと。丁寧、かつファンタジーでドリーミー。厭なことがなにひとつないこと。 作中で「生きものは、他の生きもののいのいをうばってし...

トーベ・ヤンソンの「ムーミン」とメアリー・ノートンの「床下の小人たち」をミックスさせたような物語。梨木さんらしいなと思うのはひとつひとつの描写が実に丁寧なこと。丁寧、かつファンタジーでドリーミー。厭なことがなにひとつないこと。 作中で「生きものは、他の生きもののいのいをうばってしか生きていられない、ってことなの。」とあるように、食物連鎖について深く、繊細に描かれている。ことばの選び方、運び方が綺麗。ひらく漢字の選びも。日本語って美しいなと思える素敵ファンタジー。 小沢さかえさんの絵、恥ずかしながら初めて拝見したのですが、梨木さんの描く世界観にものすごく合っていて、よかったです。

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2015/10/13

この物語の語り手は、寄宿学校の女性教師です。彼女は学校近くの三日月湖にボートを浮かべ、ひとりで読書やスケッチを楽しむような女性です。ある夏の日、湖の岸辺で彼女は不思議な生きものを見かけます。全身をふわふわの柔らかい毛におおわれた、二足歩行のハリネズミのような生きもの。それがクーイ...

この物語の語り手は、寄宿学校の女性教師です。彼女は学校近くの三日月湖にボートを浮かべ、ひとりで読書やスケッチを楽しむような女性です。ある夏の日、湖の岸辺で彼女は不思議な生きものを見かけます。全身をふわふわの柔らかい毛におおわれた、二足歩行のハリネズミのような生きもの。それがクーイ族のヤービでした。彼らとの触れ合いの中で、見たり聴いたりしたことが、彼女の口を通して語られます。 語り手である教師は、自身についてあまり多くのことを語りませんが、ひとりでボートを浮かべたり、夏休みにも関わらず寄宿学校に居残っていることなどから、心になにかを抱え込んでいるような雰囲気が、なんとなくではありますが伝わってきたりします。また、ここには食物連鎖や悪化する自然環境、生態系の変化なども描かれています。生きていくことの残酷さ、迷いなどについても触れられています。生きるためには、他者の命を頂戴しなければなりません。そのことを否定すると、世界は成り立たなくなってしまいます。人が生きていくために自然を壊して、他の生きものが生きづらくなっているのも事実です。 あるインタービューの中で著者ご自身が語られていたことですが、この物語を書きあげるのに10年の歳月を要したとのことです。児童文学とはこうあってほしいというご自身の思いと、書きたいことのズレが多少なりともあったためではないでしょうか。 児童文学ですから、生きることの喜びや、命の輝きが描かれてはいるのですが、おとなの目線で深読みすると、より多くのことを感じとることができます。おとなが納得できるリアルさがないと、児童文学は成立しないという証でしょうネ。 小沢さかえさんの挿絵も、物語のイメージにぴったりマッチして、と~ってもイイ感じでしたぁ。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

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2015/10/05
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梨木さんの新シリーズ。 となれば読まぬわけにはいかんでしょう!! 表紙の画といいイラストといい素敵ですっ! 画の雰囲気もですが、パパヤービママヤービという名前など キャラクターたちもどこかムーミンを思わせる。 うわ、これ好きだわ、ツボだわっ、とメッチャ思ったのは どんぐりのカップが出てきたシーン。 ミルクキャンディを溶かしてできた飲み物をどんくりのカップにいれて、しかもふた付き!!なんてかわいらしいの~~!! ラストのイラストにて「私」が女性であることに今更ながらに思い至る。いや、なんか口調からして男性かとばかり・・・。でもあのお団子ヘアはやっぱ女性だよなあ。 となると、どうしても梨木さんとダブりますなあ。 カヤック(?)だっけか、確かあーゆーのお好きでやってらしたはずですし。 でてくる鳥や植物の描写はいかにも梨木さん。 ムーミンの雰囲気もありつつ、小さないきものと人との交流、という点でコロボックルの要素もあり、 子ども心にはたまらない作品なのでは。 いや、今でも十分たまりませんが。 ファンタジーではありますが、明らかに人間のせいであろう 気候・環境の変化が、ちいさないきものたちへも 影響を与えつつあり、現代社会の問題点を考えされられつつ、生まれる前に親たちを観察して、生まれるかどうか決める、というヤービたちの生態に興味津々。よし、と思わなかった場合どうするのかが気になるところ。 「私」が選ぶ生徒がどんな子なのか、今後、彼らとヤービたちとがどう関わっていくのか、 楽しみ楽しみ。

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2015/10/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ある晴れた夏の日、わたしが岸辺で出会ったのはふわふわの毛に包まれた、二本足で歩くハリネズミのような不思議な生き物の『ヤービ』だった。児童書なのだが、大人も楽しめるファンタジー。ヤービの可愛さの虜になってしまう。それくらい可愛い。挿し絵の可愛さと物語の可愛さにキュンとなる。読んでいると子供に戻れそうな不思議な感覚に陥る。童心に返ってみたい方におすすめの作品。

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2015/10/02

梨木さんの童話と聞いて楽しみにしていました(*^^*) なんというか、上質な童話を読んでるようでした。挿し絵も素敵で☆ ムーミン谷の話を読んでるみたいな感じでした。あったかい家族にちょっと哲学な感じも☆日本というより外国みたいな。 中学生くらいからなら、楽しめるかな?

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2015/09/23

メアリー・ノートン、いぬいとみこ、佐藤さとるらが綴ってきた「大きい人たちのとなりにいる小さい人たち」のファンタジー世界に新しい仲間が登場。その造形や暮らしぶりなどには先達の作品へのオマージュも感じられて、おかげですいっと物語の世界へもなじむことができた(もちろんコロボックルや借り...

メアリー・ノートン、いぬいとみこ、佐藤さとるらが綴ってきた「大きい人たちのとなりにいる小さい人たち」のファンタジー世界に新しい仲間が登場。その造形や暮らしぶりなどには先達の作品へのオマージュも感じられて、おかげですいっと物語の世界へもなじむことができた(もちろんコロボックルや借り暮らしさんたちをしらなくてもじゅうぶん楽しめると思う。ムーミン的かと予想していたけれど、それとは少し違うかな)。 マッドガイド・ウォーターという小さな湖の一帯を舞台に、主人公の男の子、ハリネズミのようなヤービと湖の近くの寄宿学校につとめる人間のウタドリさん(本の語り手)との出会い、そしてそのであいからもたらされたエピソードでヤービをかこむ家族や交友関係、物語世界の背景がていねいに語られている。現代の生態系や環境変化への危機感をもりこみつつも、いのちの力にあふれた冒険好きで好奇心いっぱいの男の子ヤービを中心に少年少女らしい心の動きも描き出されていて、続きのお話がいまから待たれてならない。 見返しの地図や小沢さかえさんの挿絵も絶品。

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2015/09/13

とてもとても楽しみにしていた梨木さんの新しい物語! 小さいころに安心して読んでいたような懐かしさを感じてみたり、大人になってしまったから見えてくる、生物多様性、地球温暖化とか何だか使い古されつくしてきたような言葉が気になってみたり。とはいえ、やはりすべてのものがどう生きていくかと...

とてもとても楽しみにしていた梨木さんの新しい物語! 小さいころに安心して読んでいたような懐かしさを感じてみたり、大人になってしまったから見えてくる、生物多様性、地球温暖化とか何だか使い古されつくしてきたような言葉が気になってみたり。とはいえ、やはりすべてのものがどう生きていくかということが大きな大きなこの物語の神髄にあるのでしょう。 挿絵で描かれるヤービと梨木さんがイメージするヤービがぴったりなような気がして、これまた読むのが楽しい。 何か壮大な物語が始まろうとしている予感がする…梨木さんがこれまで考えてこられただろうことがすべて詰め込まれて。うれしいことに続編が続いていくようなので、小さなヤービとウタドリさんとの交流がどう続いていくのかが楽しみ!

Posted byブクログ