修学院離宮 の商品レビュー
先日、京都の修学院離宮に見学に行く機会があり、その時に本棚から引っ張り出してきた本である。 新潮社のとんぼの本シリーズの一つという事で、写真を中心に、いくらかの解説がつく。 本書も修学院離宮を題材に、大橋治三氏の写真と美術史家の田中日佐夫氏の解説で構成されている。 面白い...
先日、京都の修学院離宮に見学に行く機会があり、その時に本棚から引っ張り出してきた本である。 新潮社のとんぼの本シリーズの一つという事で、写真を中心に、いくらかの解説がつく。 本書も修学院離宮を題材に、大橋治三氏の写真と美術史家の田中日佐夫氏の解説で構成されている。 面白いことに、本書は、修学院離宮内の庭園や風景の写真が多数掲載されているのだが、実際の離宮見学では、どっちかというと建物についての説明が多く、意外と庭園をじっくりと見る時間が少なかったように思う。(多少案内してくれる職員の方に寄っても違いがあるかもしれない。)そういうことでは割と本書を見て、こうだったんだあと改めて感じ入ったりする。 それから、この本が出版されたのが1984年ということで、40年ほど前の修学院離宮の姿であり、現在の修学院離宮と比べると野趣な趣があり、今の方がかなり整えられているような感じがした。 ところで修学院離宮であるが、17世紀の中頃、後水の尾上皇により造営された離宮である。上御茶屋、中御茶屋、下御茶屋の3つの庭園から成り立っており、背後の山、借景となる山林、それに三つの庭園を連結する松並木と両側に広がる田畑から成り立っている。 その雄大な景色は見るものを圧倒させるものがあるし、また、耕作されている田畑までもが庭園の一部とする発想が凄いし、これがまた素晴らしい。 美しいものを追求した結果、実は美しいものは、日常の景色の中にあるということなのだろうか、その一方で上御茶屋の浴龍池のように人口の池を作り、人口の美の極致を見せつけている。スゴイよなあ。 田中日佐夫氏の解説でも、後水尾上皇が修学院離宮を作ろうとした経過が記されている。 この天皇は、これまでの天皇と違い、(実権があったがどうかは別として)はっきりと政治の世界から遠ざけられた最初の天皇である。天皇のすべきことは学問であるとされた。 そのことに対しての後水尾上皇の反発が、こういったこれまでの綿々と続いてきた王朝文化の粋を集めたものを作らしめたのかもしれない。 修学院離宮は、確かに写真を見ても美しい。しかし、実際にこの眼で見るとさらに美しい。機会があれば、是非とも訪れてみる価値はあると思う。
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