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昭和天皇の戦後日本 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2021/09/25

昭和天皇がリアリストであり、皇統を護る事を憲法よりも上に置いて行動したという分析は、天皇を聖人君子や「良い人」と丸めてしまう論調よりも、余程現実的であり、昭和天皇も自身に与えられた使命を全うしようと生きた一人の人間という事で納得できる良書である。 東京裁判では東條英機にすべてしょ...

昭和天皇がリアリストであり、皇統を護る事を憲法よりも上に置いて行動したという分析は、天皇を聖人君子や「良い人」と丸めてしまう論調よりも、余程現実的であり、昭和天皇も自身に与えられた使命を全うしようと生きた一人の人間という事で納得できる良書である。 東京裁判では東條英機にすべてしょっかぶせる、安保条約では共産革命阻止のために米軍が内乱に介入できるようにする、沖縄は戦中は捨て石(最後の戦況確認手段)であり、戦後は米軍に占領を続けてもらう事で守ろうとした。 しかし、第二章は、アンチ安倍政権のバイアスが掛かっているいる事が冒頭から見え見えで本書を台無しにしていると思う。 本当の「人間昭和天皇」の実像を明らかにした上は、読者一人一人にこれからの日本を考えさせるべきであり、この本の趣旨からして著者の考えを押し付けるべきではない。

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2016/07/24

敗戦直後の近隣国の憎悪と共産化の波の中で、国家分裂や報復の危機が迫っています。アメリカが権原のない天皇の意見を聞いたのは、(占領政策と軍事戦略上の)国益と合致したからでしょう。本文の書き方ですが、発言を引用する場合、何時・誰が・どこでされたものかはくどい程注記が欲しい。推論が結論...

敗戦直後の近隣国の憎悪と共産化の波の中で、国家分裂や報復の危機が迫っています。アメリカが権原のない天皇の意見を聞いたのは、(占領政策と軍事戦略上の)国益と合致したからでしょう。本文の書き方ですが、発言を引用する場合、何時・誰が・どこでされたものかはくどい程注記が欲しい。推論が結論の形になり、繰り返される個所も気になりました。右傾化が危惧される中で本作が活発な論議を呼んで欲しい。多様な意見が共存する社会こそ安心できる世の中です。

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2015/12/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

内外の共産主義から天皇制を守るために米軍駐留が絶対条件であったので、昭和天皇は沖縄を犠牲にしたと言えるのでしょう。そして日米地位協定、すなわち行政協定は議会を回避でき、事務当局レベルで処理することによって、全土基地化と自由使用を可能にしています。だから、日本は独立国家とは言えないでしょう。安倍政権は日米地位協定の撤廃や抜本的な改正をすることなく”戦後レジーム”からの脱却を声高らかに唱えていますが、全くもってお笑い草としか言いようがありません。茶番の最たるものです。なんなんだろうこの国は。

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2015/11/29

「安保条約の成立―吉田外交と天皇外交」の推測部分が、「昭和天皇実録」で裏付けられた。 第Ⅲ部、「憲法・安保体制のゆくえ」も読みごたえがある。 「自主憲法」と植民地的な日米地協定が併存する”歪なナショナリズム”は、どこかる来るのか?(P259) 日米関係を「騎士と馬の関係」として捉...

「安保条約の成立―吉田外交と天皇外交」の推測部分が、「昭和天皇実録」で裏付けられた。 第Ⅲ部、「憲法・安保体制のゆくえ」も読みごたえがある。 「自主憲法」と植民地的な日米地協定が併存する”歪なナショナリズム”は、どこかる来るのか?(P259) 日米関係を「騎士と馬の関係」として捉え、「立派な馬」になりきらんとすることに「自主性」を見出そうととする、ナショナリズムが長年かけて醸成されてきたのだろう、とされているが、それだけであろうか? この本を読んだ後に残った疑問。 読売新聞の渡邊恒雄会長が、A級戦犯が合祀された靖国参拝に厳しく批判しているという話は初めて知った。

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2015/08/14

豊下さんの本ということで、中身も見ずに買った。豊下さんには戦後日本の管理体制や安保条約の本の他に、象徴天皇の政治性を問題にした『昭和天皇・マッカーサー会見』(岩波書店)があるが、ぼくは後者に特に感激していたからだ。よく知られていることだが、昭和天皇は在位の過程で二度イニシアティブ...

豊下さんの本ということで、中身も見ずに買った。豊下さんには戦後日本の管理体制や安保条約の本の他に、象徴天皇の政治性を問題にした『昭和天皇・マッカーサー会見』(岩波書店)があるが、ぼくは後者に特に感激していたからだ。よく知られていることだが、昭和天皇は在位の過程で二度イニシアティブを取ったことがある。その一つは、226事件、もう一つは終戦の決定である。そして、戦後、天皇は象徴になったとされるが、政治に対する関心は戦後も変わることなく続いていた。戦後の日本は二つの政治中心を持っていたのである。豊下さんはこうした研究の蓄積の上に、今回公にされた天皇実録を読み込み、天皇がいかに政治的な判断をその都度していたかを確認する。本書で豊下さんは、戦後昭和天皇は二つの大きな局面にぶつかるも、それを乗り越えていったと言う。一つは東京裁判での天皇の訴追問題や新しい憲法下での天皇の位置の問題であり、もう一つは冷戦の中での共産主義勢力によって天皇制が否定されるのではないかという問題である。現今、憲法は押しつけだとの批判があるが、天皇は訴追免除とともに、新憲法に対してもマッカーサーに感謝していた。つまり、あの短期間につくられた憲法がなければ、天皇はある意味どうなっていたかわからなかったのである。と同時に、冷戦が深まる中では、天皇はマッカーサーを飛び越え、アメリカ本国と直接交渉をしていた。それは共産主義勢力によって天皇制が倒壊させられるのではないかという恐怖からであった。本書は最後に、現在の明仁天皇・皇后の行動が、まさに戦争の悲惨さを風化させず、憲法の精神を守ろうとしていることを論じる。それは、憲法の精神を踏みにじろうとする政治勢力に対する沈黙の抗議でもある。

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