劉邦(下) の商品レビュー
司馬遼太郎の項羽と劉邦とはまた違った面白さでした。 わりとあっさりした印象の作品です。 統一後のドロドロした権力闘争を誰か書かないかな。 あまりに幻滅なので、読む人は少ないかもしれないけど。
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いよいよ下巻の戦いは、項羽軍と劉邦軍の戦いに集約されてくる。 中巻で、章邯の圧倒的な大軍に少数で挑んだ項羽の、まさかの勝利が電撃的に伝えられる。奇跡的と思える勝利だが、項羽自身はこの勝利に自信があったのだろう。 項羽軍の印象は、彼自身もその武将達も一騎当千の強者ぞろいという感じだ。相手が大軍であろうと、必ず一点を突き崩して、全体を壊滅に持ち込むというそういう印象だ。 彼の軍の機動力は、常に「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」の精神に裏付けられている。負けることへの恐怖心が、闘争心を掻き立てているかのようだ。そしてまた彼らの勝利は、敗者の惨殺を意味する。まさに戦闘マシーンと化している。 一方の劉邦の戦いには、喜怒哀楽がある。敗北には、全員の悲しみ、苦しみがあり、勝利には全員の喜びが伴う。彼らの勝利は、敗者をも味方とする。全く、項羽と対象的だ。 しかしながら、戦闘能力では圧倒的に項羽が勝る。大敗して悲惨な姿で劉邦が敗走するシーンが何度も登場する。 ついに広武山で、西の劉邦軍、東の項羽軍が対峙する。 疲弊している項羽軍に、劉邦のほうから講和を持ち出す。項羽はその講和を受け入れる。(・・・アレ?こんな結末だっただろうか?と一瞬)。 劉邦は、張良や陳平の言を取り入れ、講和の約束を破り、項羽を追撃する。これまで一度も包囲されたことのなかった項羽が、劉邦の漢軍、韓信の斉軍、彭越の魏軍、周殷軍、黥布軍に包囲される。敵陣から楚の歌が聞こえる。 項羽は詠んだ。 「漢兵すでに地を略し 四方楚歌の声 大王意気尽く 賤妾なんぞ生を聊わん」 戦いを制し、劉邦は詠んだ。 「大風起こりて 雲飛揚す 威海内に加わりて 故郷に帰る 安にか猛士を得て 四方を守らしめん」 皇帝になった劉邦が、その7年後に故郷の沛県に帰った時に詠んだという。崩御の6ヵ月前のことだそうだ。 宮城谷氏は、無味乾燥とも感じられる司馬遷の「史記」などを、こうして読者のために感情を移入して楽しめる小説に変えてくれたようだ。面白かったです。感謝。
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歴史に名高い劉邦が挙兵してから天下を治めるまでの話。 名前は知っていたけどちゃんと知らなかったので良い機会だった。 小さな集団だった劉邦軍が劉邦の人徳でどんどん大きくなっていく。筋だけは決めてあとは部下に任せるスタイルが結果的に部下を育てることになり、それぞれが強くなったことが天...
歴史に名高い劉邦が挙兵してから天下を治めるまでの話。 名前は知っていたけどちゃんと知らなかったので良い機会だった。 小さな集団だった劉邦軍が劉邦の人徳でどんどん大きくなっていく。筋だけは決めてあとは部下に任せるスタイルが結果的に部下を育てることになり、それぞれが強くなったことが天下をとるのに大きな要素を占めている。 と言うか、これまた劉邦の人徳か、優秀な部下が多い。 劉邦の人を見る目が抜きん出ていたともあるが、優秀な人たちが集まる親分というのは今も昔もあんまり変わらないんだなと思った。
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久しぶりに宮城谷さんの小説を読みました。いつ読んでも、何を読んでも面白い! 後書きで宮城谷さんが書いていたこと、項羽には親近感があったけど劉邦は鋤になれなかった、というのはまさに私もそれで、どちらかというと項羽の方が好きでした。 今もそれは変わらないのですが、この小説を読んだら...
久しぶりに宮城谷さんの小説を読みました。いつ読んでも、何を読んでも面白い! 後書きで宮城谷さんが書いていたこと、項羽には親近感があったけど劉邦は鋤になれなかった、というのはまさに私もそれで、どちらかというと項羽の方が好きでした。 今もそれは変わらないのですが、この小説を読んだら劉邦への見方も少し変わりました。劉邦が天下を取れて、項羽が取れなかったというのはやはり項羽に足りないものがあった、ということなのだろうと改めて考えました。
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謎のチート能力を得た人間味の無い劉邦(劉邦の一番の売りをあえて売らない姿勢はこれはこれで珍しいが…)、史書に記述がありつつスポットの当たらない人を添え物のように出しただけで、主要人物は有名エピソードをなぞっただけの楚漢戦争。 宮城谷氏の作品にしては驚くほど人物に魅力が無い。そ...
謎のチート能力を得た人間味の無い劉邦(劉邦の一番の売りをあえて売らない姿勢はこれはこれで珍しいが…)、史書に記述がありつつスポットの当たらない人を添え物のように出しただけで、主要人物は有名エピソードをなぞっただけの楚漢戦争。 宮城谷氏の作品にしては驚くほど人物に魅力が無い。その上いつものように最後は詰め込み駆け足で終わる悪癖、こんなものどう評価しろと。
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上中下巻の感想をまとめて。 話が大雑把に感じた。一国をゆるがすような大計略、しかも悪い噂を流すような単純なものがあっけなく成功したり。ふりのない結論が唐突に出てきたり。 また、登場人物も多過ぎて一人一人に割く描写が少なくわけが分からない。 なぜ項羽が負けて、劉邦が勝ったのかと...
上中下巻の感想をまとめて。 話が大雑把に感じた。一国をゆるがすような大計略、しかも悪い噂を流すような単純なものがあっけなく成功したり。ふりのない結論が唐突に出てきたり。 また、登場人物も多過ぎて一人一人に割く描写が少なくわけが分からない。 なぜ項羽が負けて、劉邦が勝ったのかという全体を通しての伏線と回収はあるのだけど、一つ一つの小さなエピソードにもそういう配慮が欲しかった。
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将棋や囲碁じゃないけど、終局が迫りある程度残された手順が見えてきているので、ワクワク感は少しトーンダウン。戦況報告と事務連絡が多くなってて、魅力的な重臣とのやりとりが少なくてちょっとものたりない。
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韓信、彭越、黥布・・・、新しく配下・同盟関係に入った武将たちだが、劉邦との距離感ばかりが目立つ表現。かといって盧綰、樊噲、夏侯嬰らも今一つ影が薄い。従って、クライマックスの1つ「鴻門の会」の場の印象も薄い。ライバル項羽も中巻と違って遠のき、人間臭さが見えない。垓下の戦いで虞美人が...
韓信、彭越、黥布・・・、新しく配下・同盟関係に入った武将たちだが、劉邦との距離感ばかりが目立つ表現。かといって盧綰、樊噲、夏侯嬰らも今一つ影が薄い。従って、クライマックスの1つ「鴻門の会」の場の印象も薄い。ライバル項羽も中巻と違って遠のき、人間臭さが見えない。垓下の戦いで虞美人が命を落とす場面を唯一の例外で、女性もほとんど登場しない。華がなく、史記・漢書の内容をなぞっただけの淡々な記述に終始し、この著者にしては物足りなかった。
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七十余戦負けたことがなかった項羽が、初めて敗れた時が命を落とすことになったのに比べ、劉邦は幾度となく楚軍に敗れながらも最後は天下を取る。運と人間力の違いをまざまざと感じる物語である。
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項羽と劉邦の物語で一番の盛り上がる楚漢戦争があまりにもあっさりしていて、ある意味、宮城谷さんらしい終わり方だ。主人公以外の登場人物の描き方が面白いのがこの著者の得意技なはずだけど、一番魅力的な夏侯嬰や張良の存在感の薄いこと。知り得る限りの事実を網羅しました、とばかりの物語で、かつ...
項羽と劉邦の物語で一番の盛り上がる楚漢戦争があまりにもあっさりしていて、ある意味、宮城谷さんらしい終わり方だ。主人公以外の登場人物の描き方が面白いのがこの著者の得意技なはずだけど、一番魅力的な夏侯嬰や張良の存在感の薄いこと。知り得る限りの事実を網羅しました、とばかりの物語で、かつてあった血沸き肉踊る活劇を書き上げるにはもう歳を取り過ぎてしまったのか?
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