右傾化する日本政治 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
最近読んだ新書の中では一番面白かった。 本書全体の内容は序章にコンパクトにまとめられているので、序章だけでも読むといい。 「右傾化する」といっても、ずっと常に「右」へとシフトしていったわけではないとする。 「右」に揺れれば「左」への揺り戻しが起こる。その後再び「右」へと転じる。近年の日本政治はまるで振り子のようだと筆者は例える。 しかし同時に、振り子自体が徐々に「右」へとシフトしているという。 したがって、「左」への振り戻しの後の「右傾化」は、以前よりさらに「右」へと移動する。 これは言い得て妙だと思った(4ページの図1および6ページの表1は実に分かりやすい)。 近年、ネット上のみならず言論界においても、論敵・政敵に「左翼」だとか「ネトウヨ」だとかいったレッテルを貼ることが多く、政治概念での「右」「左」の概念が相当に曖昧になっている。大抵の場合、こうした表現はあてにならないどころか、ただの悪口にすらなってしまうこともある。 なので、『右傾化する日本政治』という題を見たとき、これもまた同様のレッテルの類なのではないかと思った。 しかし、本書の冒頭で何をもって「右」とするかを定義し、この定義に従い「右傾化」が生じていると論じており、理解しやすかった。 さらに「右」にも様々な立場があるとして「旧右派連合」「新右派連合」という概念を用いているのは、本書ならではと言えるだろう。 これらの概念を旧来の「保守本流」「保守傍流」と重ねつつ、中曽根政権から第二次安倍政権に至るまで徐々に「新右派連合」が勢力を伸ばしている様子を図式的にまとめているのは、非常に分かりやすかった。 また、現在の日本政治を主導している「新右派連合」の政治家らが何を目指そうとしているのかもよく分かった。 また、本書では「リベラリズム」「自由主義」「新自由主義」を明確に区分し、概念の混同を回避しようとしている。 これも「右」「左」同様、明確に図式化して描かれている。 そして、民主党内にも様々な立場があり、自民党の現在の主流と同じく「新右派連合」を形成している集団があることを指摘しているのは面白い。 民主党の各グループがどのような系譜を辿って民主党に至ったのかを見るのは、日本政治全体を理解する上でも重要と感じた。 さらに自民党と読売新聞などのメディアが裏でどのようにつながっているか、自民党がNHKや朝日新聞に対してどのような攻撃を仕掛け、朝日新聞の購読者数減少に成功したのか、などにも触れられている。 昭和から平成にかけての日本政治の見取り図を端的に描いた作品と言える。 あまりにも明確に描かれているため、議論がやや単純化されすぎていたり反証になりうる事例が出されていない、などの欠点があるのも確かだが、新書という形態をとる本書は日本政治の概説書としては分かりやすく、内容も十分であると思う。
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過去の歴代政権を時系列でたどりながら政治を振り返ってみるという目的でもいい本です。アプローチはリベラリズムから見ているという前提を考慮して読む必要はあります。ただ政治の現在地としてなぜここに至ってしまったのか考える上で参考になるのではないのでしょうか。特に印象的なのは左派自由主義...
過去の歴代政権を時系列でたどりながら政治を振り返ってみるという目的でもいい本です。アプローチはリベラリズムから見ているという前提を考慮して読む必要はあります。ただ政治の現在地としてなぜここに至ってしまったのか考える上で参考になるのではないのでしょうか。特に印象的なのは左派自由主義が新自由主義とは似て非なるものであり決別の意思を感じ取れるのですが今の中道左派はどう考えているのでしょうか。
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戦後から日本がどのように「右傾化」していったのかを辿る。保守について論ずる時、欧米ではグローバル化、宗教、多様性などが、論点になる印象の一方、日本では安全保障、平和主義、歴史修正主義などが議論の中心となるように感じた。
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映画主戦場にも、インタビュー出演してた中野氏による、保守55年体制から今日の安部政権までの、保守の流れ、変質と、時にリベラルによる揺り戻しに関する考察。資料や証憑に基づく、学者らしい観察と分析、鋭い洞察が見て取れます。この間の歴史的事実を知らないと、理解は難しいかも。
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「右傾化」という言葉が言われはじめて久しいが、実際に日本は「右傾化」しているのかどうか、しているのならばどのような経緯を経ているのかを、国政レベルで検討している。本書では「右派連合」の新旧を分けるものとして経済/新自由主義との距離があげられている。ナショナリズムの称揚と新自由主義...
「右傾化」という言葉が言われはじめて久しいが、実際に日本は「右傾化」しているのかどうか、しているのならばどのような経緯を経ているのかを、国政レベルで検討している。本書では「右派連合」の新旧を分けるものとして経済/新自由主義との距離があげられている。ナショナリズムの称揚と新自由主義が結びついていく点に関しても、政策決定や政党政治の力学から分析されていて興味深い。
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派閥の領袖や大物議員など永田町に君臨するボスを頂点に、ヒラ議員、県議会、町議員へと親分子分関係の連鎖として階層的に構成される恩顧主義の政治では、上位者から庇護をうけるためには、その軍門に下り忠誠をつくさないといけない。これが田中派の鉄の結束だった。 安倍政権にとって最大の標的は...
派閥の領袖や大物議員など永田町に君臨するボスを頂点に、ヒラ議員、県議会、町議員へと親分子分関係の連鎖として階層的に構成される恩顧主義の政治では、上位者から庇護をうけるためには、その軍門に下り忠誠をつくさないといけない。これが田中派の鉄の結束だった。 安倍政権にとって最大の標的はかねてからNHKt朝日新聞。
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日本の政治の歴史を政治的立ち位置を切り口にしてたどる。かつて主流を占めた開発主義と恩顧主義の旧右派が、世界的な流れを受けた新自由主義と、アジア・歴史問題への対応をめぐって台頭した国家主義に代わっていく経緯がわかりやすい。 西洋の近代化の歴史では、絶対王政や封建主義から個人を解放...
日本の政治の歴史を政治的立ち位置を切り口にしてたどる。かつて主流を占めた開発主義と恩顧主義の旧右派が、世界的な流れを受けた新自由主義と、アジア・歴史問題への対応をめぐって台頭した国家主義に代わっていく経緯がわかりやすい。 西洋の近代化の歴史では、絶対王政や封建主義から個人を解放しようとする中産階級(ブルジョワジー)が自由主義を担った。このうち、アダム・スミスは政府の介入を拒絶する自由放任の経済的自由主義を唱えたが、19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて貧困や暴力がはびこることになったため、福祉や教育などの社会政策面の政府介入が、個人を真の意味で自由にするものとして進められ、戦後のケインズの影響下で全盛期を迎えた(リベラリズム)。これに批判して政府介入から解放することを主張したハイエクらが、新自由主義と呼ばれる。 戦後、保守合同によって誕生した自民党の内部では、岸ら旧民主党系が革新勢力との対立を先鋭化させて保守支配の危機を招いたために傍流に甘んずることになり、外交安保政策は低姿勢に徹して経済成長を最も重視する吉田ドクトリンに回帰した旧自由党系が、池田内閣から田中・大平政権にかけて本流の地位を占めた。その実態は、官僚派の政治家や経済官庁による開発主義と、党人派の恩顧主義だった。農林族、建設族、商工族などの族議員が、業界団体の組織票と政治献金を背景に政策決定に深く関与し、既得権益を形成して擁護することにより、経済的弱者を保護する側面があったが、弱者の固定化と強者への従属を強化することになった。こうした派閥や族議員によるバラマキ政治や金権政治が批判されたことが、傍流の福田や三木が挑んでいく大義を与えることになった。 平等・個人の自由・反戦平和・植民地主義の反省と謝罪を左、不平等や階層間格差の是認・国家による秩序管理・軍事力による抑止・歴史修正主義を右と位置付ければ、中曽根政権以来、日本の政治が右傾化している。グローバルな新右派転換は、小選挙区制を用いる英米によって牽引されてきた。 新右派の両翼をなす新自由主義はグローバル化を推進し、国家主義はナショナリズムを喚起するが、どちらもそれぞれが自己利益や自己保全を追求することによって結果が決まるべきであるというリアリズムを基盤とし、利己的な行動に倫理的なお墨付きを与えることから、とりわけ強者によって解放的な側面を持つ。新自由主義の最大の受益者であるグローバル企業のエリートと、国家主義によって権力を強固なものにする世襲政治家や高級官僚は、日米関係を強化することによって、両国のパワーエリート間で一致した階級利益を追求した。新自由主義が欲望や情念を煽って消費文化を礼賛し、国家主義が行き過ぎた自由や個人主義をいさめ、他国との緊張関係を利用してナショナリズムをたきつけ、階級格差から注意をそらすというマッチポンプ的な共犯関係によって補完性を示す。 小沢の「日本改造計画」(93年)は、政治経済の新自由主義を強く唱えるもので、北岡伸一、竹中平蔵、飯尾潤などの学者が執筆し、以降の新右派転換プロセスを規定していった。93年に自民党が下野し、河野談話が発表されると、自民党は歴史・検討委員会を設置して歴史修正主義の学者グループと連携した。95年に村山談話が発表、アジア女性基金が設立され、96年に中学歴史教科書に慰安婦が記述されると、97年には「新しい歴史教科書をつくる会」が発足、文化人や財界人のグループと宗教系国家主義団体が統一して「日本会議」となった。 小泉首相は、党派閥の領袖への相談もなく、各派の次世代クラスを直接登用して求心力を強めたが、その多くは国家主義的傾向の強い政治家だった。橋本が総理時代に成し遂げた首相官邸の強化のおかげで、小泉は道路などの公共事業や郵政三事業の改革を進めたが、これらは橋本派の牙城であり、権力闘争の側面もあった。小さな政府路線を貫いて毎年3〜4%の公共事業費を削減し、補助金と地方交付税の削減が税源移譲を大きく上回った三位一体改革によって、中央と地方との格差を広げる結果となった。福祉分野では、医療費の患者負担を引き上げ、後期高齢者医療制度を創設した。製造業の派遣労働を解禁した結果は、非正規雇用の割合が1985年の16%から2005年には33%に上昇した。 民主党政権の成立によって下野した自民党は、穏健でリベラルな宏池会と経世会の系譜は見る影もなく弱体化し、新右派連合が主流となった。中川や平沼が設立した「真・保守政策研究会」は、安倍が会長となって「創生「日本」」になった。 著者は、リベラル左派の再興のための基礎条件として、小選挙区制の廃止、新自由主義との決別、同一性ではなく相互の他者性を受け入れた連帯をあげている。
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☆第一次政権をあれだけの失態で閉じた安倍が、驚くべき復権を遂げた拝啓は2つの要因がある。 ・野党化した自民党が、さらに右傾化していた ・有権者の政権選択が可能となる競争システムが、民主党政権の挫折とともに崩壊したこと ☆リベラル左派連合再興のための基礎条件 ・小選挙区制の廃止とし...
☆第一次政権をあれだけの失態で閉じた安倍が、驚くべき復権を遂げた拝啓は2つの要因がある。 ・野党化した自民党が、さらに右傾化していた ・有権者の政権選択が可能となる競争システムが、民主党政権の挫折とともに崩壊したこと ☆リベラル左派連合再興のための基礎条件 ・小選挙区制の廃止として選挙制度改革 ・リベラル勢力が新自由主義と決別すること。 ・左派運動の在り方の転換
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「自由主義的な国際協調主義の高まりで膜を開けた新右派展開の動きが、いかにして偏狭な歴史修正主義を振りかざす寡頭支配へと帰着してしまったか、本書はその政治プロセスを解き明かすことを目指してきた」P173
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ポイントを抑えた的確な現状認識にはうなるほかないが、読み進むたび随所でため息をつかざるを得なくもなる。最後に記された処方箋も正直なところ実現できなさそうなのが切ない。
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