芥川賞の謎を解く の商品レビュー
本書にもあるように日頃小説読まないのですが、芥川賞は結構読んできたのは、それがやはり文壇を支えてきたからだと思います。その芥川賞の選考委員に注目し、選評、新聞報道、関係者への取材から、選考の裏側を描いています。
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芥川賞受賞作品の選評を読めば、その時代の空気感を掴むことができる。長年、芥川賞の選考会を取材し続けた著者がレポートする、芥川賞の舞台裏。
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文学賞界隈の論考は、それだけである程度、自分的には楽しめることが約束されている分野。これも例外ではなかった。川端とか三島とか、自殺直前に参加した選考委員会の様子なんて、かなり興味深かったし。トヨザキ社長の調子に慣れた身にとって、本作者の芥川賞に対する絶対的信頼は新鮮に感じられて、...
文学賞界隈の論考は、それだけである程度、自分的には楽しめることが約束されている分野。これも例外ではなかった。川端とか三島とか、自殺直前に参加した選考委員会の様子なんて、かなり興味深かったし。トヨザキ社長の調子に慣れた身にとって、本作者の芥川賞に対する絶対的信頼は新鮮に感じられて、石原に対する好意的解釈とかも、かなり面白かった。同賞に対する見方が、自分の中でも少し好意的になりました。
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後藤明生「千円札小説論:あらゆる作家は小説を読み、小説を書く、どちらを欠いても文学は成り立たない」 文芸春秋創刊者、菊池寛の発案。昭和10年芥川賞、石川達三の蒼ぼう。直木賞、川口松太郎。太宰と川端康成の確執。芥川賞事件。第一回から運の良し悪しで受賞が決まった。「ナンセンスの情熱み...
後藤明生「千円札小説論:あらゆる作家は小説を読み、小説を書く、どちらを欠いても文学は成り立たない」 文芸春秋創刊者、菊池寛の発案。昭和10年芥川賞、石川達三の蒼ぼう。直木賞、川口松太郎。太宰と川端康成の確執。芥川賞事件。第一回から運の良し悪しで受賞が決まった。「ナンセンスの情熱みたいなものに取りつかれて書いた。小説のねらいなんて自分でもわからないんだよ。でもそれが小説を書く楽しみなんだよ。安倍公房、芥川賞受賞の談」第三の新人安岡章太郎、吉行淳之介」、小島信夫ら。小さな世界に居場所を探す作風(文壇的小説)そのあと五味、清張現る。坂口安吾は松本清張の作品から推理小説も書ける作家と看破した。 芥川賞とは「顰蹙(ひんしゅく)文学」と看破。顰蹙をかうことを恐れぬ選ばれる側の作家と、選ぶ既存作家の自由闊達な表現の結果生み出される新しい表現の選出だと。
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日本文学の主流についておおよその印象を持つことが出来る。芥川賞がどのような歩みを経てきたかについて物心ついて以降の印象しかない。昔といえば、村上、石原の作品のセンセーショナルさくらいで、なんにんかの文豪が獲り損ねてるとか。そういう程度で。そういったことも踏まえつつ、評価軸の変化や...
日本文学の主流についておおよその印象を持つことが出来る。芥川賞がどのような歩みを経てきたかについて物心ついて以降の印象しかない。昔といえば、村上、石原の作品のセンセーショナルさくらいで、なんにんかの文豪が獲り損ねてるとか。そういう程度で。そういったことも踏まえつつ、評価軸の変化や文学観の変化、選考の感じをざっとなぞらえている。遠い昔にも面白そうな小説を書いている人がいて知られてないだけなのかと思うと新人に一体どれだけの余白があるのかと思うけれど川端康成や石原慎太郎が期待したものが現れるといいなと読んでいて思った。
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芥川賞というあまりにも有名なために、本当はそれが何なのか知らなかったことが分かりました。どのように創設されたのか、その歴史がどのようなものだったのか。それに関わった人たちの姿を、主として選評を読むことで知ろうという試みが大成功だったと思います。退屈さなど一切なく、面白く読ませてい...
芥川賞というあまりにも有名なために、本当はそれが何なのか知らなかったことが分かりました。どのように創設されたのか、その歴史がどのようなものだったのか。それに関わった人たちの姿を、主として選評を読むことで知ろうという試みが大成功だったと思います。退屈さなど一切なく、面白く読ませていただきました。著名な方々が一度は選考の対象になっていることから、一度は通る選考ではあるのですが、受賞することは重要ではなく、むしろそこから(選考されてから)始まる登竜門だということ、全編通じてその理念といったものを感じることができました。過去の受賞作や選考風景について書かれていますので、その対象作品を読みたいという気持ちに、芥川賞受賞作を読みたいという気持ちになりました。
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非常に読みやすく、面白過ぎた。 そもそも選評自体面白いってのもあるけど、芥川賞というものが選考委員の文学感の対立のある中で新しい文学を探ってきたことがよくわかった。
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芥川賞の謎を解くと言うよりも、芥川賞の裏側と言ったほうが良いかな。 なぜ私の世代では現代の受賞作があまり評価出来ない理由がわかったような気がする。時代に合った作品に我々の世代は追い付けないと言うことか。 私が芥川賞の中で好きな作品は、『僕ってなに』だったな。学生運動の終焉の中でほ...
芥川賞の謎を解くと言うよりも、芥川賞の裏側と言ったほうが良いかな。 なぜ私の世代では現代の受賞作があまり評価出来ない理由がわかったような気がする。時代に合った作品に我々の世代は追い付けないと言うことか。 私が芥川賞の中で好きな作品は、『僕ってなに』だったな。学生運動の終焉の中でほろ苦さを感じさせるものだった。この後に書いた『龍を見たか?』で芥川賞を批判したような内容でビックリ。私達の青春時代の出来事で懐かしいな。
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芥川賞は人を狂わせる。 その最たる例が、太宰治でしょう。 選考委員の佐藤春夫に芥川賞を懇願する書簡を送ったのは有名な話。 文面は、まさに恥も外聞もないといった体です。 さらには自分を落とした選考委員を逆恨みし、「刺す!」とまで言い放ったのですから、その才能とは異なる意味で「太宰、...
芥川賞は人を狂わせる。 その最たる例が、太宰治でしょう。 選考委員の佐藤春夫に芥川賞を懇願する書簡を送ったのは有名な話。 文面は、まさに恥も外聞もないといった体です。 さらには自分を落とした選考委員を逆恨みし、「刺す!」とまで言い放ったのですから、その才能とは異なる意味で「太宰、恐るべし!」です。 結局、芥川賞とは縁のなかった太宰ですが、吹っ切れてからの活躍は目覚ましく、後世に残る傑作を次々とものします。 「太宰が、もし芥川賞をとっていたら、どうなっていたのであろう。天才幻想に憑りつかれ、明るさとユーモアのある中期以降の太宰はなかったかもしれない」 との著者の見立てに、私も同意します。 芥川賞を逸し、その後、大作家としての地位を確立したのは村上春樹もそうでしょう。 その村上春樹は近著「職業としての小説家」で、芥川賞を得られなかったことについて損も得も特段なかった、としたうえで、こう書いています。 「ただひとつ、自分の名前の横に『芥川賞作家』という『肩書き』がつかないことについては、いささかありがたく思っているところがあるかもしれません」 たしかに、「芥川賞作家・村上春樹」というのは大いに違和感があります。 それだけスケールが段違いに大きい作家ということが云えるかもしれません。 本書は、読売新聞文化部記者として長年、芥川賞の選考会を取材した著者が、選評も読み解きながらその舞台裏に迫った労作です。 かく云う私もこの芥川賞(直木賞も)の選評を読むのが趣味で、ネットで読めるものはかなり読みました。 読んでいていつも思うのは、選評は「読み物」だということです。 たとえば、「三島の再来」と評された平野啓一郎の「日蝕」の選評。 「平野啓一郎氏の『日蝕』には、天井の高い建造物に踏み入ったかのような印象を受けた。作品の構えの大きさと思考の奥行きとが生んだ印象であったろう」(黒井千次) 「投げあげた試みがさほどの揺らぎもなく、伸びやかな抛物線を描くのを、唖然として眺めた」(古井由吉) うまいなぁ、と舌を巻くほかありません。 もっとも、ここでも、あの石原慎太郎は「この現代に、小説を読むのにいちいち漢和辞典を引いて読まなくてはならぬというのは文学の鑑賞と本質隔たった事態といわざるを得まい」と憎まれ口を叩いて顰蹙を買っています(笑)。 芥川賞に興味のある方はどうぞ。
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芥川賞などにさほど興味はない。あんなの新人賞だ。とはいえ新人こそが文学を救うかもしれない。だから芥川賞には興味津々だ。あれ、俺何言ってるんだ。 そんな芥川賞の取材を続けた記者による、芥川賞の読み解き方。前書きからいきなり文壇でお腹いっぱいになりそう。エキサイティングだよ! ...
芥川賞などにさほど興味はない。あんなの新人賞だ。とはいえ新人こそが文学を救うかもしれない。だから芥川賞には興味津々だ。あれ、俺何言ってるんだ。 そんな芥川賞の取材を続けた記者による、芥川賞の読み解き方。前書きからいきなり文壇でお腹いっぱいになりそう。エキサイティングだよ! まずは太宰治。熱烈な芥川ファンでもある。昭和の芥川たらん、と。しかし太宰は「逆行」で第一回芥川賞に落選する。芥川賞は無名の作家へ。太宰は有名だからダメ、と自分で納得したようでいて、しかしこれで収まらず、そして選評を書いた川端康成に激怒する。そして第二回選考に際しては、カネがないと死ぬ、みたいな無様な陳情をしながらも落選、というか候補にも選ばれず、第三回では長さ4メートルにわたる書簡を川端に臆面もなく送ったという。ところがこれまで候補になった作家は除外、となりまたもアウト。 おかげで、芥川賞は落ちた作家も話題になる、という栄誉を得た。 芥川賞は該当作なしの時代を経て、自らに批判的だった村上龍や落選常連の島田雅彦を選考委員に加えていく。 僕が芥川賞に現実的な興味を持っていくのはこの辺りからだ。 「顰蹙文学」 これが芥川賞に課せられた印象だ。だからこそここまで命脈を保ってきたのだろう。 その選評が、そして選評を軸にこんな本まで出せる。もう作品はどうでもいい、といったら言いすぎかもしれないが、芥川賞はそういうもんなのだ。行司たる選考委員と力士たる候補者たちの、その組み合わせによる相撲。行司こそが新しい文学ではないか、と。島田雅彦ファンとしては愉しい評論ではある。行司という新しい文学。顰蹙文学のプロセスにある、新しい文学。芥川賞を誰がとろうがどうでもいい。こちらで行われている相撲こそが愉快だ。レビューはだいぶ端折った。でもすごい、すごく面白い本!
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