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芸能的思考 の商品レビュー

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2025/10/17

民俗学者である著者が、大衆芸能やストリップ・ショーなど幅広いかたちの芸能をとりあげつつ、現代における芸能について語った文章をまとめた本です。 折口信夫は、祭祀から芸能が発生したと主張するなかで、「招かれざる客」の果たす役割を重視しました。「もどき」や「副(複)演出」などの意味は...

民俗学者である著者が、大衆芸能やストリップ・ショーなど幅広いかたちの芸能をとりあげつつ、現代における芸能について語った文章をまとめた本です。 折口信夫は、祭祀から芸能が発生したと主張するなかで、「招かれざる客」の果たす役割を重視しました。「もどき」や「副(複)演出」などの意味は、「まつりの傍観者」が居合わせることで生じると考えられます。著者はここに、「見る/見られる」という、芸能に固有の関係が成立していることを指摘しています。 本書の後半では、大阪の新世界で「おっちゃんたちのアイドル」として活躍した演歌歌手についてのエッセイ、さらに現代の芸能のありかたを具体的に示す事例として、ストリップ・ショーがとりあげられます。元来著者は、芸能の生まれる空間のなかでの布置構造を解明する演劇論の構築を志していましたが、現代の貨幣経済のもとで芸能の意味が変化していることに目を向け、これらの現代的な芸能に入り込んでいくことになります。 これらのテーマにかんする文章は、エッセイに近いスタイルで書かれているのが特徴です。このことについて著者は、ストリッパーの裸体と技術が切り開く世界を「かたい」体系としてえがき出そうとする態度に疑問をもつようになり、彼女たちとのとりとめもない話を通じて見えてくる「やわらかい」世界観を理解することをめざすようになったと語っています。彼女たちの演技は、貨幣経済の支配する現代社会のなかで生きていくための「仕事」として身につけられたものであり、そうした現代の芸能の位相をありのままにとらえるためにはこうした態度が適切だという判断なのでしょうが、ジャーナリスティックな文体をえらんだことは、著者自身がそうした現代社会の位相にからみとられることにもなります。この点に、方法論的なむずかしさがひそんでいるようにも感じました。

Posted byブクログ