断片的なものの社会学 の商品レビュー
大学で習った社会学とは違って、断片的で、ありのままで、でも語りの奥にその人の生活は続いていることが感じられた。中学も卒業せず風俗のキャッチをはじめ、最高級のクラブのホステスになって一流大学をでた人やブ人の話が面白かった。開店資金を出してもらったり、あるいはもっとストレートに愛人に...
大学で習った社会学とは違って、断片的で、ありのままで、でも語りの奥にその人の生活は続いていることが感じられた。中学も卒業せず風俗のキャッチをはじめ、最高級のクラブのホステスになって一流大学をでた人やブ人の話が面白かった。開店資金を出してもらったり、あるいはもっとストレートに愛人になる道を選ぶ人が多いが、一流大学をでた人やブラックカードを持つ人の相手をするうちに自分もそっち側の人間になろうと、思ったらしい。 確かに女子学生は綺麗なウエディングドレスを着てみんなにおめでとうと言ってもらえる結婚というものに憧れがある人が多いみたいだし、結婚式は幸せなものだというイメージがあるし、結婚式では一日でも早く元気な赤ちゃんをと、セットで言われる。 でもそれが、同時にそうでないひと=幸せではないという構造を作り出してしまっている一種の暴力であるということに感心した。 私がいままで思っていたモヤモヤが晴れた感じがした。もう妻がいて夫がいて健康な子どもがいることが絶対的な幸せだと位置付けるのをやめたらどうかと思う。 学生を釜ヶ崎に連れて行った話が面白かった。女子学生は怖いという印象を持ってしまったし、路上のおじさんは見せ物にされていると怒った。マジョリティは国家に守られているため問題は個人のものと考える。 でもマジョリティマイノリティ関係なくお互い欠けているもの同士出会いを喜ぶべきである。 アメリカでロックスターになるために大学をドロップアウトした学生の話が面白かった。 文化が盛んな社会はいい社会であるが、人生を捨ててなにかに賭けるものが多ければ多いほど、天才が生まれる確率が高くなる。 龍谷で教えられていたこともあったんだ。今は京大にいらっしゃるよう。
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久々にこんなに面白い本を読んだ。 社会学者として、インタビューしてきた無数の人々の語りを「分析すること」の暴力性に言及した上で、「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」事象について、散文的、あるいは映画的に描写している。安易な物語を回避して、偶然の中に意味を捉えず、そのも...
久々にこんなに面白い本を読んだ。 社会学者として、インタビューしてきた無数の人々の語りを「分析すること」の暴力性に言及した上で、「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」事象について、散文的、あるいは映画的に描写している。安易な物語を回避して、偶然の中に意味を捉えず、そのものに近づこうとする。 この本を読んで何か得られるわけではない。ただ、意味や教訓はないがかけがえもなく、無数に存在する「普通」の面白さに触れた。
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人生、幸せ、価値観、自由、人との距離感など日常を生きる中での断片的なものごとについて考える作品。 綺麗事を並べた人生観ではなく、自分の人生は自分のものでしかないし、無意味だと思っても生きるしかないんだ。どんな人でも人生は選べないし生まれればいつか死んでいく、それは当たり前の事だな...
人生、幸せ、価値観、自由、人との距離感など日常を生きる中での断片的なものごとについて考える作品。 綺麗事を並べた人生観ではなく、自分の人生は自分のものでしかないし、無意味だと思っても生きるしかないんだ。どんな人でも人生は選べないし生まれればいつか死んでいく、それは当たり前の事だなと考えたら少し息が軽くなるような感覚がした。人の数だけ人生があって、生活があって家族がいて、沢山の人の人生のお話に触れてちょっと旅をしたそんな気持ちになれて満足。 人生や価値観について悩んだ時に読みたくなる作品です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とても面白かった! 社会は人びとの断片的な生活によって構成されていて、社会全体を考察することと個人の生活にフォーカスして「語り」に耳を傾けることは直結しているのだろうなと思った。 一見無意味に思える(本質的にも無意味である)自分の人生の部品ひとつひとつを愛していければ良いし、それが自分の苦しみをとりのぞく、あるいは「まっとうに苦しむ」ことにも通じれば良いと思った。 「相手の判断に干渉しない」「相手の意思を尊重する」ことが最も相手を思いやった行動であることは不自然だ、という作者の指摘は腹落ちした。面倒臭さや他者への本来的な恐怖がそうさせるのだと思うが、もう少しオープンに他者に関われるよう、すこしの努力をしてみたい。
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とても面白く、興味深く読みました。 著者が幼い頃のエピソードで、ただそこに転がっていた石ころが『この石』になるくだり、私もよく感じていました。私が拾うまで何ものでもなかった石が、私が拾った瞬間に質感や重量や傷が現れ、認識することができる。でも私はそれを一生見つけないでいることもで...
とても面白く、興味深く読みました。 著者が幼い頃のエピソードで、ただそこに転がっていた石ころが『この石』になるくだり、私もよく感じていました。私が拾うまで何ものでもなかった石が、私が拾った瞬間に質感や重量や傷が現れ、認識することができる。でも私はそれを一生見つけないでいることもできた。その石がすごく特別になったり擬人化して大切にしたりしたわけではなく、ただその不思議さに、ぼーっと見つめていました。それこそ人に話すことでもない、曖昧なよくわからない話なので、同じことを思っていた人がいるなんて正直驚いたし嬉しかったです。 たくさんの『分析されざるものたち』が出てきます。そのどれもが何気なかったり壮絶だったりどちらにせよ理解し難く、断片的です。 著者が何度か書いている『どうしていいか分からない』という言葉にホッとしました。正直分からないです。社会は難しい。何が正解か、何が誤りか、そもそも自分とはなにか前提から間違ってないだろうか。 また気が向いた時に読み直したい本です。
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とても人間くさい 説教されているわけじゃなく、とてもすっとここに入ってきてふと涙が出てしまう時もあった いろいろな人がいるものだな、そんな突飛な人生とは無関係だろうなと思いながらも、その人から得られる教訓はとてもすっと心に入ってくるものでした
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結論から言うと、書き味を味わいたくて二度読みをしました。 読むきっかけは、ある文筆家さんがオススメしていたこと。「日常」「解釈しがたい」というワードに引っかかりました。 読んで最初は、なかなかのめり込めなくて「どうなんだろう?」と戸惑いながら、ペースもゆっくりでした。 移動...
結論から言うと、書き味を味わいたくて二度読みをしました。 読むきっかけは、ある文筆家さんがオススメしていたこと。「日常」「解釈しがたい」というワードに引っかかりました。 読んで最初は、なかなかのめり込めなくて「どうなんだろう?」と戸惑いながら、ペースもゆっくりでした。 移動時間や病院の待ち時間に少しずつ読んでいくと、「笑いと自由」というあたりから、「あ、これ、この感覚知ってるぞ……!」というのに出会ってからはあっという間でした。 日常のなかの、なんでもない場面のなんでもない出来事を活字化すると、その「なんでもなさ」がなんだか不思議な奥行きを持つようになって、知らない人の話なのに、すこしだけ愛着も湧いて。 一気に読めなくても、気が向いたときに読んだらいいと、これから読む人に伝えたいです。
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p6 p31 もっともかけがえのないものとは、「私たち」にとってすら、そもそもはじめから与えられていないものであり、失われることも断ち切られることもなく、知られることも、思い浮かべられることも、いかなる感情を呼び起こされることもないような何かである。 p32 徹底的に無価値なもの...
p6 p31 もっともかけがえのないものとは、「私たち」にとってすら、そもそもはじめから与えられていないものであり、失われることも断ち切られることもなく、知られることも、思い浮かべられることも、いかなる感情を呼び起こされることもないような何かである。 p32 徹底的に無価値なものが、ある悲劇によって徹底的に価値あるものに変容することがロマンなら、もっともロマンチックなのは、そうした悲劇さえ起こらないことである。 p49 p80 居場所が問題になるときは、かならずそれが失われたか、手に入れられないかのどちらかのときで、だから居場所はつねに必ず、否定的なかたちでしか存在しない。しかるべき居場所にいるときには、居場所という問題は思い浮かべられれさえしない。居場所が問題となるときは、必ず、それが「ない」ときに限られる。 p82 四角い紙の本は、それがそのまま、外の世界にむかって開いている四角い窓だ。だからみんな、本さえ読めば、実際には自分の家や街しか知らなくても、ここではないどこかに「外」というものがあって、私たちは自由に扉を開けてどこにでも行くことができるのだ、という感覚を得ることができる。そして私たちは、時がくれば本当に窓や扉を開けて、自分の好きなところに出かけていくのである。 p91 p97 ただ、私たちは、人生のなかでどうしても折り合いのつかないことを、笑ってやりすごすことができる。必ずしもひとに言わないまでも、自分の中で自分のことを笑うことで、私たちは自分というこのどうしようもないものとなんとか付き合っていける。 p106 p111 ある人が良いと思っていることが、また別のある人びとにとっては暴力として働いてしまうのはなぜかというと、それが語られる時、徹底的に個人的な、「〈私は〉これがいいと思う」という語り方ではなく、「それは良いものだ。なぜなら、それは〈一般的に〉良いとされているからだ」という語り方になっているからだ。 完全に個人的な、私だけの「良いもの」は、誰を傷つけることもない。そこにはもとから私以外の存在が一切含まれていないので、誰を排除することもない。しかし、「一般的に良いとされているもの」は、そこに含まれる人びとと、そこに含まれない人びとの区別を、自動的につくり出してしまう。 p193 p221 私たちの人生には、欠けているものがたくさんある。私たちは、たいした才能もなく、金持ちでもなく、完全な肉体でもない、このしょうもない自分というものと、死ぬまで付き合っていかなくてはならない。 私たちは、自分たちのこの境遇を、なにかの罰だと、誰かのせいだと、うっかり思ってしまうことがある。しかし言うまでもなく、自分がこの自分に生まれてしまったということは、何の罰でも、誰のせいでもない。それはただ無意味な偶然である。そして私たちは、その無意味な偶然で生まれついてしまった自分でいるままで、死んでいくほかない。 p240
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当たり前であるけれども私たちが見逃してしまっていることを丁寧にエピソードと共に拾い上げて、再確認させてくれる本だった。 途中でインタビューだけの章が挟まっていたり、色んな何でもない人の特別な物語が違和感なく切り替わっていって読みやすかった。今まで出会ったことないような壮絶な話が...
当たり前であるけれども私たちが見逃してしまっていることを丁寧にエピソードと共に拾い上げて、再確認させてくれる本だった。 途中でインタビューだけの章が挟まっていたり、色んな何でもない人の特別な物語が違和感なく切り替わっていって読みやすかった。今まで出会ったことないような壮絶な話が多く、衝撃を受けながら読み進めていった。 章の終わりに挿入された西本明生さんの断片的で偶然撮られたような写真も素敵だった。(調べてみたら「何も写っていない写真」と題して撮っていた?)
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挟まれる写真で「断片ですよ」感が際立って、良い。 想像していたより、語り>聞き取り で、著者の人間味が感じられた。 なるほどそうだなぁと思ったり、それを断言するのは同意しかねる(なぜだ)と思ったり。考える練習になった。
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